マスター※
イラストはマスターです
マスター「ルナ、ここに来て1年になるね。本当、変わったよね」
グラスを拭きながら淡々と喋る
ルナ「何がですか?」
マスター「あの時拾った捨て猫が、こんな風に化けるなんてさ。あっという間にポールダンスもショーも賭博も覚えただろ。それにスペイン語、話せるの?」
ルナ「スペイン語は得意ですよ。前の仕事で客の相手してた時に覚えました」
マスター「今はアンタ目当ての客が多い。会話も出来るって上客から噂を聞きつけてね。アンタ賢いだろ。私の目は誤魔化せないよ」
ルナ「私、大学に行きたいんです。高校もまだ卒業できて無いけど」
マスター「ルナ、今何歳だっけ?」
ルナ「17です」
マスター「高校行ってたのか?」
ルナ「行ってますよ今でも。特待生です」
マスター「エエエ!仕事は夜からだしいつ寝てるんだよ。しかも高校生だったなんて。親はどうしてるんだ?」
ルナ「死にました。14の時から孤児院から脱走して客の元を転々として暮らしてました」
マスター「ルナ…アンタなかなかのガッツの持ち主だな。応援するよ。困ったら何でも私に言いな」
ルナ「マスターはどうしてここに?」
マスター「詳しくは言えねえけど戦争孤児で色々な事に巻き込まれて来た。国に過去は置いてきた。ここで居場所を作りたかったのさ。それに私には唯一残った家族、弟がいるしね」
ルナ「弟…」
マスター「たまに手伝いに来てたラティーノが居ただろう。アイツだ」
ああ。ルナは思い出す。マスターと仲良さそうにスペイン語で喋ってる男性。少し顎髭を生やした、背が高い甘いマスクのイケメンだ。
マスター「ルナのことめちゃクソ可愛いってさ」
がははとマスターは笑う。
ルナ「ぷはは」
マスターの豪快な笑いに釣られて、笑ってしまった。
戦争孤児って私より壮絶じゃん。
それをこんな風に笑い飛ばせて、皆の居場所を作ろうだなんて凄いよ。
一年前のマスターとの会話を思い出す。
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ルナ「マスターは殺したいほど憎い人は居ますか?」
マスター「居るさ。そして沢山殺してきたさ」
ルナ「本当に殺したの?」
マスター「本当だったらどうする」
マスター「どうにでも出来るさ」
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あの時の目は本気だった。
マスター、貴女は何でもやって来たんだね。
そしてここにいる。
マスターここに居る女の子の過去の罪を、否定も肯定もしない。自分自身に対しても過去は過去と割り切る。
私も貴女みたいになれますか。




