私はルナ※
長い金髪の髪を無造作にポニーテールにした白人の女がピンクのネオン看板を掲げる怪しげなバーから出てきた。
カツン、カツンとピンヒールで地面のコンクリートを踏む音が響く。
汚い街のネオン街にあるバーから少し出た裏路地でタバコに火をつけた。
ここはアメリカの市街地。
治安が悪く様々な人種が違法に働く店が多い。
地べたに寝転ぶ薬中や客引きの売春婦はもう見慣れた。マリファナの甘い香りが売春婦の香水の香りと混ざり鼻につんとつき不快だ。
未成年の私が大金を手に入れるには、ここで違法に働くしか無かったし、私は他に生き方を知らなかった。
「ルナ、客だよ」
「…分かった。もう一本だけ吸わせて」
「あまり待たせるんじゃないよ」
私を拾ってくれたラテン系の女店主はそう言った。
ここはマシな方だ。
それまで個人で客を取って居たんだから。
今は客と寝ても寝なくても自由だ。
全てに絶望した日、私は拾われた。
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その日は雨が降っていた。
泣き腫らした顔を、怒りと悲しみを、雨が流してくれて居るのかと思った。
女店主「おい、ボロボロじゃねえか」
そこに倒れている少女を女店主は見下ろす。
身なりはボロいが長く薄い金髪の髪は、この街の淀んだ空気に月の光がさしているようだ。その少女の瞳はヴァイオレットの宝石のようで。すらりと長い手脚に目立った傷はなく、綺麗にしてやれば良い看板娘になると思った。
女店主「どうしたんだよ」
ルナ「騙された…私が死ねば良かったんだ」
女店主「はぁ。何があったか知らねえけど、大人の世界は騙し合いさ」
ルナ「……」
ルナは何も言えなかった。大金を得るために今まで沢山の男を欺き騙してきたから。普段の彼女は賢く冷静だ。今回は自分欺かれただけと理解したのに、それでも訳あって絶望したのだ。
女店主「この店はな、シャバに居場所がねえ奴、とにかく金が欲しい奴が集まるんだ。お嬢ちゃん未成年だろ?なんでここにこうしているか知らねえが、いつまでもここで倒れてるわけにはいかねえだろ」
ルナ「私に帰る場所はもう無い」
女店主「じゃ、決まりだな。安心しろ、ここで住み込みで働いて貰うがお嬢ちゃんが嫌な事は一切しなくていい。取り敢えず中入ってシャワー浴びな」
ルナは女店主の強くガッチリとした手をとった。
挿絵はAI作成しています。