84 聖なる花光玉
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パッと周囲が明るくなった。
「何だ?一体何が起こってるんだ?魔法道具があるのか?」
突然、周囲の闇に沢山の光景が映った。ノアが戸惑ってる。勿論私もだ。
「これは……王都、なのか?亅
ほとんどが黒い影に人々が襲われている様子で、人々の中には見知った顔もある。グラース様も食い入るように見ている。
「ウォルク様!あっちにはシオン様とあれはクレス様?」
ウォルク様は剣で闇を切り払っている。シオン様とクレス様はクレス様が応戦しながらシオン様がなにかするのを守ってるみたい。あれ?シオン様の手に持ってる物って見覚えがあるわ。
「ルーナも戦ってるのか?何だ?あの文字。見たことないな。影相手に渡り合ってる……!」
ルーナ様強い!影に触れられそうになっても弾き返してる。防御の結界を張りながら戦ってるみたい。
「もしかしてあれは……フィルフィリート……か?大きくなったな」
グラース様が見つめている先にはフィル様が白い剣を振るう姿が映ってる。
「フィル?!」
「フィル様!!」
感慨深げなグラース様だけど事態は深刻だった。フィル様は多くの影に囲まれて孤軍奮闘、というか、追い詰められてる。
「どうしてあそこだけ影が多いの?」
「フィルフィリートがいる場所は王都の南側みたいだ。他の場所より影の出現数が多いようだね」
グラース様はフィル様を映した光景をじっと見つめている。
「どうして分かるの?」
グラース様にノアが尋ねた。
「建物や街並みはあまり変わって無いからね。ほら、フィルフィリートの背後に南の神殿も見える……ああ!そろそろまずいな……」
「南の神殿……そうか!南と西はまだエリーが行ってない!だからか?しかし西はどうして……」
ノアが考え込んでる。
「フィル様っ!!」
フィル様が危ない。影に押さえ込まれてしまった。
「どうしますか?このままではあの男は命を落としますよ?」
私の中から声がした。
「!」
「裏切られたとはいえ、あの男を殺したい訳では無いでしょう?助けてあげてもいいのですよ?」
優しげな悪魔の声。
「あの扉を開けてください」
悪魔が示した先には闇の扉が再び出現していた。
「エリーの中から声が……くそっ!エリーから出ていけ!」
ノアが魔法を発動しようとして手を止める。私を押さえようとして弾き飛ばされてしまった。
「ノア!ごめんっ」
「そうそう。やめておいた方がいい。このお嬢さんが怪我をしてしまいますよ?」
悪魔は楽しそうに笑う。
「このペンダントをお返しします。さあ!」
グラース様が私に白雪華晶のペンダントを返そうとしてくる。けどそうしたら悪魔はグラース様を操ろうとするだろう。
「ダメ、です。グラ……ス様」
胸が苦しい。体が勝手に動く。私の手が扉の方へ伸びていく。ダメだ!!私の体なんだから私の言うことを聞いて!
「抵抗しますか。見捨てるんですねぇ。あのフィルフィリートは貴女を裏切って他の女性と良い仲になっていたのですから仕方ないですね。じゃあ、あの男にはさっさと死んでもらって、次はそうですね。シオンかな?」
ズキンと胸が痛む。けど違う。フィル様は裏切ったりしてない。だって怖がって返事をしなかったのは私だもの。フィル様が誰を好きになっても悪い事なんかないわ。悪いのは私。私の心の弱さ。レオナルド様とは違うのに。だから死なせたりなんてしない。誰も!
「何だって?!フィルフィリートはそんな不埒な真似を?緑の一族の風上にも置けないっ」
悪魔の言葉に激高するグラース様。私の腕を掴んで頭を下げた。
「エリー嬢、大変申し訳ないっ!!」
あれ?何だかグラース様って何かを目で訴えてるみたい。……そうか!私は再び手を伸ばした。
「そう、それでいいですよ。貴女は優しいから彼を見捨てられないでしょう。……?」
悪魔の言葉は無視して、私の手はグラース様の胸のペンダントを掴んだ。瞬時に私の中から何かが抜けていく。黒いものが周囲の闇に溶け込んでいった。
できるだろうか?でもやらなくちゃ!遠くから花光玉を作ること。そして今回はフィル様の元へ送ること。フィル様を想って白雪華晶を握りしめ、花達に呼びかける。
「お願いみんな力を貸して!!」
王都に咲くたくさんの花達。式典のために植えられた花々。それら全てに呼びかけた。花々から無数の光が浮かび上がる。それと同時に王都のあちらこちらから花吹雪が大量に舞い上がる。シオン様の「今だ!」って声が聞こえたような気がする。あ、シオン様が持ってたのは、クロティルドの時に作ってた魔法道具だわ。花吹雪が自動で降り注ぐ魔法道具。改良されてるみたい。いつまでも花が出てくるわ。
「シオン様、凄い!ありがとうございます。フィル様、今助けます!」
私は力を込めた。
花を抱いた光の玉が王都へ降り注ぐ。
「これまでか……」
追い詰められて壁を背にしたフィルフィリートの前にひときわ大きな花光玉が降りてきた。
「これは……エリー!!無事だったんだな……良かった」
安堵の表情を浮かべたフィルフィリートは花光玉を手に取った。彼を取り囲んでいた闇が霧散する。
王都の中心と東西南北それぞれの花光玉が呼応し、光のドームが形成された。王都の人々にはまるで空が光になったように思えた。眩しくて美しい、色とりどりの光。
遠くクリアル山の神殿では座して時を待っていたアルジェ神官がその目を開いた。
「時が来たようですね」
彼の目と意識は王都へ向けられる。そして神の力をおろし、エリーの作った花光玉に寄り添うように力を合わせた。ただそのように力の向きを意識し続ける。アルジェ神官の額に玉の汗が浮かぶ。
聖なる花光玉が不浄なる闇をことごとく消し去っていく。
更にウォルク、ルーナ、フィルフィリート、シオン、クレス、そして戦える全ての人々が残った影を殲滅していった。
そして悪夢のような一日が光と共に終わりを告げ、王都にいつも通りの静かな夜が訪れたのだった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!
光と花のスノードームみたいな感じです。




