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来ていただいてありがとうございます!

※本日6/6 二つ目の投稿です。ご注意ください



「まあ、お姉様ようこそおいで下さいましたわ!お久しぶりですわね!」


え?誰?



「ええと、お姉()って……?」

一応確認してみる。この子カレンよね?お姉様って……。

「まあ、嫌ですわ。エリーお姉様ったら」

あ、やっぱり私だったかー。



王都にあるサンセレス家のお屋敷にカレンを訪ねた私はがっくりと肩を落とした。目の前にいるのは確かに私の妹のカレンなんだけど、パワーアップしてるわ。やたら装飾の多い煌びやかなドレスを着ていて、豪華な宝飾品で飾り立ててる。元々美人なのにお化粧が濃すぎて派手すぎる印象だ。一人豪華な椅子に座ったカレンの周りには数人の貴族の男性達が立っていた。どの人もタイプは違うけれどとても端正な顔立ちで、年齢は十代後半から二十代後半くらいでまちまち。


カレンはこんなに厚化粧しなくても十分綺麗なのに……。でも、本人が喜んでて周りの人も何も言わないなら、私のセンスの問題なのかもしれないわ。私はそっとため息をついた。それにしてもこの応接室、やたら金色の家具が多くて落ち着かない。お茶の入ったカップも金色の縁取り。


「カレン、久しぶりね。元気そうで良かったわ。母さんはどうしてるかしら」

確かカレンと一緒に王都へ来たって父さんからは聞いてたけど、全然姿が見えない。

「嫌だわ、お姉様ったら。お母()はとっくにお家にお帰りになったわ」

カレンが手に持った扇をパチンと閉じると、一人を残して周りの男の人達が応接室を出て行った。あれ?残った人ってもしかして……。


「初めまして、エリー様?私はサンセレス家が長女アラーナ・サンセレスですわ。以後お見知りおきを」

やっぱり!ルーナさんに似てるなって思ったんだよね。短いサラサラの黒髪、淡い夕日色の瞳のとても綺麗な人。そして女の人だった!超美形姉妹だ。

「もう!お姉様ったら。私達はそれぞれ別の家の養女になったのよ?貴族になったの!もう少し言葉遣いやマナーに気を付けてくださらないかしら?私の品位が疑われては困るの!」

カレンが文句を言ってきた。



「お姉様はまだフィルフィリート様だけなの?申し込み少ないのかしら?私の方は大変なの!今婚約者候補を五人まで絞ったところなのよ!でも私が養女になったのは六大貴族の筆頭家なのだから、私の方が立場が上よね」

え?カレン何言ってるの?

「カレン、フィルフィリート様は私の雇用主よ。失礼なことを言わないで」

「はいはい。分かったわよ」

今、私と一緒にサンセレス家を訪ねているのはルーナ様とフィル様だ。ウォルク様は街の様子を見てくるといって、シオン様は王都の屋敷で調べることがあると別行動。ノアはカレンと顔見知りなので面倒なことになるからって来なかった。私はとりあえず神様からの言葉を伝えた。

「それでね、カレンにも神殿に花光玉を奉納するのを手伝って欲しいのよ。神様をお手伝いして、病の広がりを抑えるために……」


「でも私は何も言われてないわ。お姉様が頼まれたのでしょう?ならお姉様がやればいいじゃない」

「え?でも、カレンも御加護を受けた神代なんでしょう?」

「そうよ。でもお姉様とは違う神様から選ばれてるみたいだし。それに私とっても忙しいの!将来の為の勉強やマナーを身に付けたり、毎日お客様が私に会いたいっていらっしゃるのよ?あと、花光玉をお城に献上するのもあったわ!」

今、花光玉の事を付け足しみたいに言わなかった?

「ちょっと!カレン!私達は……」


「僭越ながら申し上げますわ、よろしいでしょうか」

カレンの傍らに立っていたアラーナ様が口を開いた。

「先程もカレン様が仰ったようにカレン様には神の声は下りておりません。そしてカレン様がご多忙なのは本当の事ですわ。申し訳ございませんが真偽の程も我々には判断しかねますし、こちらとそちらは別の陣営ということでご理解いただけませんでしょうか?」

「あの、でも、悪魔がこの王都に潜んでいるかもしれなくて、危険な状態なんです!何とかしないと……」

「ええ、そのようにお聞きしておりますし、我々もカレン様の警護には万全の態勢をとっておりますわ。ただ、本当に悪魔なんているのでしょうか?」

「え?」

「カレン様のおかげで王都の病の状況はやや沈静化の方向へ向かっておりますわ。そのように騒ぎ立てて、点数を稼ごうとなさらなくてもよろしいのではないでしょうか」

「点数を稼ぐ?」

「嫌ねえ。お姉様って頭そんなに悪かったの?これなら王妃の座は私のものね」

「は?」

本格的にカレンが何言ってるのか分かんない……。今そんな話だったっけ?


「いい加減になさって!アラーナ姉様!!それ以上エリー様を侮辱することは私が許さないわ!」

「カレン嬢もです。神の加護は悪魔と病に対抗するためのものだ。今は皆で協力して事に当たる時のはず。王位に関しては悪魔と病の脅威を退けてからの事だ」

ルーナ様とフィル様が声を上げた。


「はあ、大体、城に悪魔が現れたというのもどこまで本当の事やら。私達はその姿の欠片すら見てはいないのですわ」

「そんな……。私達は実際に悪魔と対峙しています!」

「…………」

え?信じてもらえないの?でも六大貴族会議で決められたことは、皆で悪魔と戦っていこうってことだったよね?カレンは協力してくれないんだ……。そういえば、道々で花光玉を奉納してきた神殿でも視線はあたたかいものでは無かった。態度こそ丁寧だったけど。悪魔の存在自体が半信半疑ってこと?



「もういい。帰ろうエリー」

「そうですわね。これ以上の話は無駄ですわ、エリー様」

「……はい。それでは失礼します」

私達は応接室を出ようとした。


「ルーナ、残念ね。貴女はどうやら貧乏くじだったわね」

「……残念なのはお姉様の頭の方よ」

ひええっ、火花が散ったように見えたよ。この姉妹は仲が悪いのかな?

「お姉様ももうちょっと頑張った方がよろしくてよ?」

カレンが勝ち誇ったように笑った。うちも大概だわ……。疲れた。



「エリー様っ!」

屋敷を出たところでルーナ様がくるりと振り返り、私の肩を掴んだ。

「ケーキを食べに参りましょう!!」

「え?」

ルーナ様に連れて行かれたカフェで、ルーナ様は大量のケーキを注文した。ずらりとテーブルに並べられたケーキは色とりどりでとても美味しそうだった。王都のカフェはおしゃれだなぁなんてケーキをゆっくり食べてたら、シオン様も真っ青な速さでルーナ様がケーキを次々と平らげていった。私とフィル様は呆気に取られてそれを見ていた。


「腹が立った時は甘いものですわ!」

「そうなんですか?」

「…………さあ」

フィル様に尋ねるとフィル様は困ったように両掌を上に向けて私に微笑んだ。


「それ、美味しい?」

フィル様がお茶を飲みながら私を見てる。私が食べてるのはシトリンという酸っぱい果実の入ったケーキで、爽やかな風味がとても美味しいものだった。

「フィル様の分も注文しましょうか?」

「ううん。私には一つじゃ多いかな。それ、一口もらえる?」

「え?」

フィル様は私の手を掴み、そのままフォークに刺したケーキを口に入れた。

「あ」

「うん、本当だ、美味しいね」

え、これ、この後どうしよう。でも残すなんてできない……。勿体ないし。



結局最後まきちんとケーキを食べましたとも!

……恥ずかしかった。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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