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06 勉強

来ていただいて感謝しております!



「じゃーん!今日の一冊は『リュミエール王国地理大全』!!」

今日は午後からこれを読んで勉強しようと思うんだ。

「がんばってね、エリー。今日はフィルフィリート様もエドさんもいないから、僕が分からないところを教えるよ」

私の隣にはニッコニコのノアが座ってる。あれ?何で?


「ノアは庭師の仕事は良いの?」

「庭師は他にもいるよ。今日は休みの当番だ」

「へえ、お休みなんてあるんだぁ」

「普通はね。農家はほとんど休みなしの事も多いかもしれないけど、大体の仕事はきちんと休みの日があるんだよ」

「そういうものなんだねぇ」

うちの休みは荒れた天気の日ぐらい?あ、でも家の仕事はあるし、花光玉も作ってるし。お休みってないかも?


実は昨日からフィルフィリート様とエドさんは王都へ行ってる。花光玉の研究が一段落したので、病の治療に役立ててもらうためにお城へ報告するんだって。一段落といっても春に咲く花でどの花が一番力の強い花光玉が出来るか試しただけだから、新しく夏の花が咲いたらまた研究を再開するらしい。


私はその合間に勉強をすることにして、少しずつお屋敷の本を読ませてもらうことにした。このお屋敷には壁一面が本棚になってる部屋があってすごく驚いた。あんなにたくさんの本は神殿にも無かったから。


「その深緑色のワンピース似合うね。リボンも」

ノアが頬杖をついて本を開く私を見てる。ここへ来てから随分おしゃべりしてくれるようになった。前も私と二人だけの時は普通におしゃべりしてたけど、このお屋敷では誰かがいてもふつうに話してくれる。ノアのこの変化はなんでなんだろう?不思議には思うけど、悪い方へ変わったわけじゃないからいいのかな。


「マーサさんが結んでくれたの」

そういえばお屋敷にはマーサさんっていう親切な女の人がいて、色々と私のお世話をしてくれる。今日はその人がハーフアップって髪型にしてリボンも結んでくれた。作業には向かないけど可愛い髪形で気に入ってる。

「いつも思ってた。エリーもカレンみたいにリボンとかすればいいのにって」

「うーん、畑仕事で落として汚したら嫌だし」

カレンみたいにすぐに新しいものをおねだりとかってできなかった。花光玉が売れるようになるまでは暮らしはそこまで楽じゃ無かったから。食べるのには困らなかったけどね。それでも美味しいご飯が食べられれば幸せだったよ。



「えっと、『リュミエール王国南方は農耕地帯。肥沃な土地に恵まれている。西にクリアル山をいただき、クリアル山から流れ出る清水は川となり大地を潤す。南と東は海に面しており、漁業も盛ん。』……やっぱり美味しいご飯は大事だよねー。ご飯が美味しいから病気も流行らないのかな?あ、家の方の土地は痩せた土地が多いのか……。それでも野菜とかいっぱいとれてたよね」

「…………いたし」

ノアがぽそりと呟く声は私には聞き取れなかった。

「え?何か言った?」

「ううん。何でもない」


「そう?えっと、『王国の北、東、西側はそれぞれ隣国と国境を接しており、戦で敵に攻め込まれることも多かった。その為、特に北方は代々魔法使い達を多く輩出してきたスミスヴェストル家を筆頭とした黒の一族が治めており、魔法道具の研究も盛んである。また、この魔法道具は商人の集まりであるサンセレス家を中心とする陽の一族によって諸外国と取引きされ、王国の重要な収入源になっている。


陽の一族は国の西方に領地を持つが、世界を飛び回る一族なので、王都にこじんまりとした邸宅を持って拠点とする者も多い。』……か。そっか、確か私が生まれる前にも戦があったんだよね?」

「…………」

「ノア?」

「ああ、ごめんちょっとボーッとしちゃった。王国を戦って守っているのは、金の一族もだね」

「うん。『北東を治めているのは戦士、騎士を数多く輩出する金の一族。ロウルレオニス家が有名。男女ともに体が屈強な者達が多い』……え?男女ともに?」

「うん。戦士の一族だから。みんな体を鍛えてる」

「ノアは本当に物知りね。まるで見てきたみたい」

「…………まさか」

そうだよね。そんなわけないよね。小さい頃からずっと一緒で畑仕事を手伝ってくれてたもの。


「えっと、『東には銀の一族と紫の一族。魔法使いの一族と頭脳明晰な天才が多い一族。王国の文官はこのどちらかの一族であることが多い』あれ?銀の一族も魔法使いなの?」

「そっちは攻撃魔法じゃなくて、治癒、浄化、神の信託系の魔法、いわゆる白魔法の一族だね。」

「へー、そうなんだ。魔法にも色々あるんだね。えっとアルジェンアルスター家とウィステリアワイズ家っと。綴り合ってるかな?」

ノアが私の手元を覗き込んでる。

「うん。大丈夫だよ。エリーは字が上手だね」

「えへへ、ありがと。フィル様にも褒めてもらったんだ」

「……ふーん、フィル様ねぇ」


私は今まで出てきた一族とその代表(?)の家の名前を紙に書きつけていた。自分の国のことなのに知らないことばかり。少しずつ覚えていこうって思ってた。それに色々知るのって楽しい!

「あ、紫の一族の土地も海があるんだね!いいなあ、海!見たいなあ……。水がたくさんなんでしょう?川とはまた違うって、行商のおじさんが言ってた!」



「なら、見に行けばいい。そうだ。明日は海に行くぞ!海でピクニックだ!」



「へ?」

突然降ってきた声に驚いてドアの方を見たらフィル様とエドさんが立っていた。

言葉の明るさとは裏腹に、お屋敷に帰って来たフィル様のお顔はなんだかやさぐれていた。怒ってるのに無理やり笑ってる感じ。エドさんも疲れてるみたい。お城で何かあったのかな?










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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