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67 申し訳ございません 

来ていただいてありがとうございます!

  


「大変申し訳ございませんでしたぁっっ!!」

神官長様と神官様達がずらりと並んで地に伏してる。あ、正確には神殿の床の上なんだけど。何だろ、これ。



「あらまあ……見事な土下座ですこと……」

ルーナ様が冷たく見下ろしている。どげざって何?

「と、とりあえず、服が汚れてしまいますので、どうぞ立ってください神官長様、皆様」

汚れた服を洗うの大変だものね。この神殿のぴかぴかなツヤツヤな石の床なら土や砂よりは汚れないかもだけど。

「神代様には大変失礼なことを申し上げました。誠に誠に申し訳ございません。伏してお詫び申し上げます」

あ、更に低くなっちゃった。ちょっと面倒になってきたよ。

「あのっ、私は本当に気にしてないので。山の一族出身なのは本当ですし」

あれ?今背中の方でなんか光った?雷かな?さっき来た時は晴れてたけど。後ろを見てみたけど何もない。もう一度神官長様達の方に向き直ると、神官長様が泡を吹いて真っ青になって倒れてた。

「え?どうなさったんですか?」

「神がお怒りにっ!!」

神官長様を支えてる神官様の一人が訳の分からないことを言い始めたりして、中々事情を聴くことが出来なかった。



「これ、奉納してきます」

まだ光を失わない三彩花の花光玉(大きいサイズ)をお供物を捧げる所へ置いて来ようと神殿の奥の方へ歩き始めた。

「待って、エリー。一人で行動しないで。私も行くよ」

フィル様が一緒について来てくれた。ウォルク様やシオン様は神官様達になんとか話を聞こうとしてくれてる。

「フィル様、あの黒いものを倒してくれてありがとうございました。さっきのフィル様かっこ良かったです!」

「エリーを守れて良かった」

「本当にフィルフィリート様があんなにお強いとは存じ上げませんでしたわ」

いつの間にかルーナ様がついて来ててフィル様の隣に並んだ。

「それに、あの真っ白な剣!見たことがない剣ですわね」

ルーナ様はフィル様の神剣に興味があるみたい。ううん、フィル様にかな?それからも剣術の事なんかをフィル様に聞いてて二人とも楽しそうだった。


「ルーナ・サンセレスか、彼女も帯剣してるし、魔法剣士ってとこかな?」

「ノア」

いつの間にか隣にノアがいた。小声で囁いてくる。

「ちょっと目的が分からないしあんまり気を許さない方がいいかもね」

「護衛って言ってたよ。さっきも守ってくれたし良い人じゃない」

「エリーは相変わらずだね」

「相変わらずって、何?成長してないって事?」

「まあ、エリーはそのままでいいよ。可愛いしね」

「とってつけたみたいに褒めても何も出ませんよーだ」

子どもの時みたいにいーって顔したらノアがふき出してた。



お供物を捧げる台に花光玉を置こうとしたら、神官長様が慌ててやって来て神様の像の足元にある台座に置くように頼まれた。なんか他の神官様達もびくびくしてて変な感じ。山猿とか言われるのも嫌だけど、やたら怖がられるのもなんだかなぁ。


台座に花光玉を置いて祭壇でお祈りをした。正式なお祈りの仕方は胸の前で複雑に指を組むやり方なんだけど、簡単に手を交差させるやり方もある。私は簡単な方でお祈りをした。

(さっきはお力をお貸しくださってありがとうございました)


『こちらこそ、闇を祓ってくれてありがとう』


「え?」

声聞こえた!いつもの山の神様じゃない声。花光玉を作った時に聞こえた声だ。


『この場もここの人々も闇に囚われ、我が力が届かなくなっていた。だがもう大丈夫だろう。本当にありがとう』


声と同時に花光玉がまばゆい光を放って神殿の隅々まで照らし出した。光が収まる前に少しの間だけ神殿の中がさっき見た晴れた日の海の色に染まった。

「綺麗。海の中ってこんな感じなのかな?」

そして光が消えた時にはもう神様の気配も消えてしまってた。

「神様の好きだった人ってどんな人だったんだろう?ちょっと聞いてみたかったな」

お祈りを終えて振り向くと、また神官長様はじめ神官様達が「どげざ」をしててちょっと困った。なんかぶつぶつ祈りを捧げてる神官様もいるんだけど。何で?そしてどうしたらいいのこれ?



「エリー様は道具や材料を使わずとも花光玉を作れるのですね。しかもあのように力が強いものを……。カレン様はそんなに数も作ることはできませんし、ましてやあんなに美しい花光玉を作ることはできません」

ルーナ様が花光玉をじっと見ていた。

「たくさん作ってるうちにスキルアップしたのかもしれません。カレンも神様のご加護があるんですもの。そのうちできるようになりますよ、きっと」

そうだ。一回カレンと話さなきゃ。カレンにも神殿巡りを手伝ってもらいたいし。私はルーナさんに一度カレンと会いたいとお願いした。

「でしたら是非とも王都の我が屋敷へおいで下さいませ」

「え?カレンはサンセレス家にお世話になってるんですか?」

「エリー様だってリーフリルバーン家にいらっしゃるのですから、おかしくは無いでしょう?」

てっきりカレンはお城か大神殿にいるんだと思ってた。

「でも何でサンセレス家なんですか?最初にカレンがいたのはシュ・ロート家なんでしょう?」

「あの家は一族の中でも末席ですから。神代様をお世話するには少々格式が足りませんわ」

ルーナ様はそう言って艶やかに微笑んだ。





私達はその後、神殿の近くにあるウィステリアワイズ家所有の屋敷で休ませてもらうことになった。

「神殿の祭事の時に滞在するためだけの屋敷なんだ。少々狭いが良かったら寛いでくれ」

シオン様の言葉に心の中で反論してしまった。これが狭いんですか?十分大きなお屋敷ですよ?


少し休んだ後で皆で応接室に集まって話し合った。


実はあの海神様の神殿の皆さんは、とても頑張って患者さん達の治療に当たってたんだって。最近患者さんの数が急激に増えてきても必死で頑張ってた。それでも手が足りなかった。皆さんの疲労がたまってきて心に余裕が無くなって、神殿内の雰囲気もギスギスし始めてしまったのだそうだ。患者さんと接するうちに知らず悪魔の種子がうつってしまって、病を発症することは無かったけれど負の感情が大きくなっていったみたい。


それから、これからどうするかも話し合った。私がカレンに会いたいと希望を出したから、今いる場所から最短距離で行けるルートでサンセレス家のお屋敷に行くことになった。その途中で寄れる神殿に立ち寄りながら。


私が覚えてるのはここまで。まだお日様が沈んでもいないのにいつの間にか眠ってしまったらしくて、目が覚めると、ウィステリアワイズ家の別宅の私にあてがわれた部屋のベッドの上だった。


「え?あれ?私、話し合いの途中で寝ちゃった?」

暗い部屋の中で目を覚ましてとても焦ってしまった。枕元にはバスケット。中にはサンドイッチが入ってた。

「うわぁ……。疲れて寝ちゃうなんて子どもみたい。恥ずかしい……って、ちょっと待って、私ってどうやってここまで来たの?」

もっと恥ずかしいことに思い至った私は危うく夜中なのに絶叫しちゃうところだった……。おさえたけど。

「誰が運んでくれたんだろう……?」

自分で歩いて来たんだったらいいなと思ったけど、全然覚えがないし……。絶対違うよね。恥ずかしさのあまりベッドの上でゴロゴロしながら、その後しばらくの間眠れなかった……。






ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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