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04 本当の力

来ていただいてありがとうございます!


「お、大きい!」

私は馬車を降りて、目の前のお屋敷を見上げてた。

「これが貴族のお屋敷……。いくつお部屋があるの?」

午前中に出発して馬車に揺られること一日。もう太陽は沈んでしまっていた。まだ明るさが残る中に佇むリーフリルバーン家のお屋敷は二階建てで、今まで見たことのないくらいの大きなお屋敷だった。ぽけーっと口を開けて眺めていたらお屋敷の前に立っていた男の人に不審そうな顔をされてしまった。お屋敷を警護してる人?大きな剣を腰に差してる。


ギギギッと音がしてこんなに大きなドア必要?ってくらい大きなドアが開いた。

「お待ちしておりました。エリー様」

現れたのは薄いエメラルドの髪のお兄さんで、上等なかっちりとした服を身に付けていた。

「あ、えと、こんばんは。エリーと申します。初めまして」

私は慌てて頭を下げた。

「私は当家で執事を務めております。エドと申します。お疲れでしょう。さあ、どうぞ中へ。エリー様」

「エリー……さま……」

そんな風に丁寧に呼ばれたことない……。それにしつじってなに?


エドさんに案内されて納得した。

「うん。これは大きなドア、っていうか入口が必要だわ……」

「え?何か仰いましたか?」

「あ、いえ、なんでもないです!」

私は慌てて両手を振った。こんな大きな家具やら額縁入りの絵やら花瓶を運び入れるのに小さいドアじゃ無理だわー。私はそんなことを考えながらエドさんの後をついて行った。それにしても私、場違い感がすごい……。自分が持ってる一番いい服を着てきたんだけど、すれ違ったお屋敷で働いている人達の服の生地はものすごく上等なものだって一目でわかったから。たぶんカレンの持ってる一番上等な服よりずっと高価な生地使ってると思う……。どうしよう、今からでも帰らせてもらえないかな……。そんな風に怖気づいているとエドさんが一つのドアの前に立ち止まってノックをした。うわあ、もう引き返せない……。

「フィルフィリート様、失礼します」

「入れ」


鮮やかな金色の髪なんだけど、緑色にも見える髪をした綺麗な人が大きな机の前に立っていた。瞳の色は青にも見える深い緑色。この人がご当主様?あれ?老齢のご当主様じゃなかったっけ?私より少し年上って感じ?少なくともエドさんよりは年下に見える。

「よく来てくれた。エリー?私は当主代理を務めているフィルフィリートだ。これからよろしく頼む」

「は、初めまして!エリーです。よろしくお願いしまふっ!」

しまったぁーかんだー……。恥ずかしくて下げた頭が上げられないよう……。

「ぷっ…………」

あれ?笑いをかみ殺してる?

「失礼ですよ、フィル様?」

「こほ……。いやすまない。そんなに緊張しなくていいから」

エドさんに窘められて、フィルフィリート様は真面目な顔に戻った。


「神官殿からの手紙で事情は理解している」

フィルフィリート様は大きな机の椅子に座り、私も机の前の椅子に座らせてもらった。エドさんはフィルフィリート様の背後に立った。

「ああ、もう暗くなってしまいましたね」

エドさんがそう言って左手を振ると部屋の壁の照明に明かりが灯った。魔法道具だ!初めて見た。綺麗な蜜色の明かり。私が見惚れているとまた笑ったような吐息が聞こえた。

「魔法道具は珍しいか?」

フィルフィリート様がさっきより柔らかい表情で私を見ていた。

「はい。うちでは使ってなかったので」

魔法道具は便利だけど、とても高価なんだよね。


「さて、早速なんだが、君の力が見たい。花光玉を作ってもらえるか?」

フィルフィリート様が試すように目を細めた。来たわ。カレンとは違う人が来ちゃったんだから、当たり前の反応だよね。私は足元に置いた鞄の中から銀の盆と銀のボウルを取り出した。一応布袋に花とさざれ石も入れてきた。持って来たのは星降り花という青い花と透明な砂のような石。ここで思うような品を作れなかったら私は家に帰されるのだろう。緊張したけど、上手く作れなくても罰を与えるような人達じゃ無さそうだったから不安はかなり無くなっていた。いつものようにボウルの中に花とさざれ石を入れて落ち着いて魔力を込めた。


「…………え?!」

ちょっと待って、いつもより反応が強いみたい?ボウルの中からまぶしい光が溢れて来る。見たことのない金色の光……。

「これはっ……!」

フィルフィリート様が驚愕の表情で立ち上がった。光が収まると、ボウルの中には青く澄んだ花光玉が生まれていた。いつもと違ってほのかな光を放つだけでなく、キラキラした光の粒が揺蕩っている。フィルフィリート様が近づいて来た。

「見せてもらっても?」

「あ、はい!どうぞ」

私は花光玉を手渡した。エドさんもフィルフィリート様の手元を覗き込んでいる。

「これは凄いですね」

「ああ」


「あの……」

「十分だ……いや、期待以上だ!君を雇うことにする!これからよろしく頼む。リルエリー・フルラ・アストランディア」

「え?!」

何で私のフルネームを知ってるの?神官様しか知らないはずなのに。


私達は名前を持って生まれてくる。両親がつけてくれる名前とは別の名前を。偶然にも私の場合は両親がつけてくれた名前が本当の名前の中にも混ざってた。子どもは六歳の時に神殿で神官様の祝福を受ける。その時に思い出させてもらう。その時は神官様と意識を共有するらしくて、神官様と本人だけがその名前を知ることが出来るって聞いてたんだけど……。私は訳が分からなかった。あ、神官様が教えたのかな?


「エリーさん、これを頂いてもよろしいですか?」

焦れたようにエドさんがたずねてきた。

「あ、はい!どうぞ!」

「助かります。ではフィルフィリート様」

「ああ、頼む」

フィルフィリーと様から花光珠を受け取ったエドさんは急いでお部屋を出て行った。振り返るとフィルフィリート様が何故か不敵な笑みを浮かべて私を見ていた。




バタバタと動き出した何か。でも私にはその時何が起こってるのか全く分かっていなかった。






ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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