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03 リーフリルバーン家からの依頼

来ていただいてありがとうございます!



夕方、畑仕事から帰ったら、家から言い争う声が聞こえる?喧嘩なんて珍しいわね。うちは仲良し家族なのに。居間に入ると父さんの背中があった。こちらを向いている母さんは今にも泣きそうな顔。


「そんな……カレンを?」

「そうなんだ……。リーフリルバーン家のお屋敷に召し上げたいんだそうだ。何でもご病気の老齢のご当主様の身の回りのお世話をってことなんだけど……」

父さんが手にした手紙を見て言った。

「嫌よっ!実質は妾か後添いだってお客さん達言ってたもの!そんなの行きたくない!」

カレンが目に涙を浮かべていやいやと首を振ってる。


「そんなことは無いと思うよ。お世話係と書いてあるし。それに貴族様に逆らうことは出来ない……。それに手紙には花光玉を作る仕事もやって欲しいらしいし。どうやらご当主様は悪魔憑きの病らしいね。お気の毒な事なんだが……」

父さんも困り果てて腕を組んで考え込んでる。

「お姉ちゃんだってまだお嫁に行ってないのに。そうよ!お姉ちゃんが行けばいのよ!家事は出来るし、花光玉も作れるし!」

さも名案だというように顔を輝かせるカレン。

「そうね。その方がいいかもしれないわ!」

母さんも嬉しそうに応じる。何?この嫌な流れ……。

「はあ?!ちょっと待ってよ母さん!何を言ってるの?相手はカレンを指名してるんでしょ?私が行ったって、どうせ追い返されるわよ!」

私は慌てて反論する。このままじゃまずいわ。


「いや、案外いい考えかもしれない」

「父さん?!」

あり得ないんだけど。父さんまで何を言い出すの?

「ほら、エリーを見て噂ほどじゃないって分かれば、帰してくれるかもしれない。それにエリーならしっかりしてるし、なんなら上手いことを言って断れるだろう」

酷い……そりゃ私はカレンより美人じゃないし、そうなるかもしれないけど、もし嘘をついてそれがバレたら私だってどんな目に合わされることか。貴族なんて見たこともないけど、きっと私達庶民なんて家畜同然にしか思ってないだろうし。私は絶望的な気持ちになった。そんな私に家族は追い打ちをかけてくる。


「ほら、それに店にはカレンが必要だし、農作業なら誰でも代わりがきくし」

母さんのこの言葉にプチンと何かが切れた。ああ、私ってその程度だったんだわ。両親にとってもカレンにとっても。家族にとっては要らない子だったんだ。

「分かったわ。私が行くわ」

もう、どうなってもいい。

「お姉ちゃん!ありがとう!」

「そうか、頼んだぞ、エリー!」

「やっぱりエリーは頼りになるわね」

こういう時だけは私の話をちゃんと聞いてくれるのね。私は夕食もとらずに部屋に閉じこもった。






翌朝、私はまだ暗いうちに神殿に向かうために家を出た。不安とショックでほとんど眠れなかった……。リーフリルバーン家からの手紙は神殿の神官様から父さんに渡されたものだ。実は父さんも母さんもあまり正確に文字が読めない。私は不安もあって、神官様に詳しい話を聞きたいと思ったのだ。


「エリー?!どうしたの?こんなに早くに。今から畑へ行こうと思ってたのに」

あまりにも早く来すぎてしまって、神殿の居住エリアの建物の前でうろうろしてたらノアが出て来てくれた。

「ノア……」

ノアの顔を見たら我慢してた涙が溢れて来てしまった。

「ど、ど、どうしたのエリー?」

動揺するノアのことを気遣うことも出来ずにノアにしがみついてしばらく泣き続けてしまった。ノアは私が落ち着くのを静かに待ってくれた。


「そうだったんだ……そんなことが」

泣きながらの説明でもノアは分かってくれた。神殿の入り口に二人で並んで座って、神官様の朝のお勤めが終わるのを待った。

「酷いね、おじさん達」

「……もう私が行くしかないから、神官様にお話を聞こうと思って……。本当に妾とかなのかな……」

「それは無いと思うよ。たぶん。リーフリルバーン家は代々愛妻家な方々が多いから」

「そうなの?どうして……、そっか、ノアは歴史とか好きだもんね。物知りですごいね。ノアが言うなら大丈夫かな……」

私は少し安心した。


「ここはリュミエール王国でも南に位置してる農耕が盛んな地域だ。温暖な気候で作物が良く採れて、温厚な人が多い。南と西には海、東側は山があって、隣国とも接していない。先の戦争の時も被害が殆どなかった。


緑の一族と呼ばれる貴族が治めていて、その筆頭がリーフリルバーン家だ。この王国では貴族はあまり序列が無い。六大貴族と呼ばれる者達がそれぞれの方角に領地を構えて中央の王都を守ってる。王族というものはいなくて王はそれぞれの筆頭の家から持ち回りで選ばれる。……現在の王は金の一族の出身だ」


ノアの声を聞いてると落ち着く……。小さい頃から友達で、いつも嫌なことがあると静かに話を聞いてくれて、味方になってくれて、励ましてくれたっけ。ノアの声が最後の方で少し小さくなったのがちょっと不思議だった。まあ、ノアはいつも口数が少なくてこんなにしゃべってくれるのも珍しいんだけどね。話しながらノアはずっと手をつないでてくれた。小さい頃はよくこうしてたっけ。それにしても、一緒に習ったはずなのに私の頭には全然残ってなかった自分の国についての知識。私は別の意味でも泣きたくなってきた。



神官様は朝早くに私がいるのにとても驚いていた。事情を話すと、ノアと同じような事を言ってくれた。

「リーフリルバーン家には私から手紙を書きましょう。エリーも正直にお話してください。優しい方々ですから大丈夫ですよ」

銀の髪をさらりと揺らして優しく笑ってくれた。





三日後、リーフリルバーン家から迎えの馬車がやって来た。私は小さな鞄だけを持って、その馬車に乗った。両親は見送りに出て来たけどカレンは家から出てこなかった。パーソンさんのおじさんとおばさんには前の日までに事情を話してお別れをしてある。二人ともすごく悲しんでくれた。私は畑の花達のことをよろしくお願いしますって頼んでおいた。


「エリー、大丈夫。一人じゃないから」

同じく見送りに来てくれたノアが笑って手を振ってる。

「ノア?それってどういう……」

私が質問する前に

「出発します」

と、馬車が動いて走り出してしまった。






家族への不信感や不安な気持ちを抱えたまま、私をのせた馬車は住み慣れた土地をどんどん離れて行ったのだった。






ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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