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31 王都の闇

来ていただいてありがとうございます!


「ついて来てるみたい……。もう!何なのよ」

私は王都の片隅で呟いて走り出した。







「ここ花の塔には月に一度食料品や必需品を運んでくる馬車が王都からやって来るのです」

あの後ミラレスさんが説明してくれた。

「それに乗って行けば、とりあえず王都へは行けるでしょう」

「でも、ノアは?ノアと話をしないといけないんです。ノアがどうしてこんなことをしたのか説明してもらわないと……」

そう、それを聞いて問題を解決しないとまた繰り返しになっちゃうと思うんだ。私の言葉にミラレスさんは少し困ったような顔をした。何か言いたげだったけど、少し考えた後、軽く息をついた。


「ノアレーン様はおそらく、しばらくの間ここへはいらっしゃらないと思います」

「そ、そんな、どうしてですか?」

「もうすぐ、国王ご夫妻のご成婚と在位十周年の記念の式典があるのです」

あ、そういえば、神官様がそんなことを言っていたような……。カーラ様のお母様も、式典の邪魔をしようとする人達がいるって仰ってた気がする。

「黒の一族と金の一族が王都の警備に当たってるんでしたっけ」

「はい。ノアレーン様は以前は一族のお役目を果たすことを嫌がっておいででした。ですがこれからはしばらくの間忙しくなるからと、お嬢様、いえ、エリー様のお世話をわたくしに託されました。不便が無いようにと」

「そんな!それじゃ話もできないわ……」

私は絶望的な気持ちになった。


「ですから、エリー様は一旦リーフリルバーン家へお帰り下さい。先ほど申し上げましたように荷物を運んでくる馬車に王都まで運んでもらえばいいでしょう。王都まではわたくしも参ります。その先はまた別の馬車を手配いたしましょう。魔法の馬車ではありませんので少し時間がかかってしまいますが、ノアレーン様のお戻りを待つよりは確実でしょうから。いかがでしょうか?」

「……ノア、すごく怒りそう……」

でもこのままは嫌だった。もしノアが気が付いて追いかけてきても、その時はきっと話ができると思った。だから、

「はい。お願いします!ミラレスさん!」

私は決心した。勝手にいなくなって、何日も帰らずにいたらもう許してもらえないかもしれない。解雇されてしまうかもしれないけど、やっぱり一度戻ってきちんとフィル様に謝りたい。


こうして私とミラレスさんは翌日荷運び用の馬車に乗せてもらって三日程かけて王都へ辿り着いたのだった。なんでもちょっと安価な魔道具を使って速度を速めているらしく、魔法の馬車ほどではないけれど普通の馬車では五日かかるところを三日で王都に着くんだって。でもその代わりに馬車は乗り心地が最悪で、ミラレスさんも私もお尻や体が酷く痛くなってしまった。辛かった……。


「では、わたくしはここまでですね」

ミラレスさんはスッと黒い色付きの眼鏡を外した。なんか、王都では面が割れてるからって言ってた。知り合いに見られるとやっぱりまずいのかな。申し訳ないことをしちゃった。

「これに乗ればリーフリルバーン家に一番近い街まで行けます」

ミラレスさんは馬車を見上げた。

「ありがとうございます。ミラレスさん。お金は必ずお返しに行きます」

そう、代金はミラレスさんが全て支払ってくれたのだ。

「いいえ、必要ありません。ノアレーン様のなさりようは酷いですから」

ノア、結局追いかけて来なかった。ノアは何がしたかったんだろう。一応ノアに宛てて手紙を書いて来たけど、読んでくれてるかな?


「エリー様どうぞお気をつけて」

私が乗り込むと馬車はゆっくりと走り出した。私は窓からミラレスさんに手を振り返した。

「ありがとうございます!また会いに行きます」

ミラレスさんはああ言ってくれたけど、お金は必ず返しに行こうと思った。

「ふう……」

まだ体痛いなあ。私はお金や食べ物や作った花光玉をいれた小さな鞄を膝に乗せた。これも全部ミラレスさんが用意してくれたものだ。ここからリーフリルバーン家の近くの街まで三日。この馬車も安価な魔法道具を使ってるけど、きちんと人が乗るための馬車なので、乗り心地はとても良いので助かった。

「もうすぐ帰れる……」

そう思ってホッとしていると目の前に違和感があった。


「……ねえ、持ってる?」

影のようなものが私に話しかけてきた。誰?馬車に乗ったのは私一人なのに。小さな男の子のような声と形。そんな闇が話しかけてきた。馬車の前の座席に座ってる。

「持ってるんでしょう?お姉ちゃん」

これは誰?ううん、何?突然馬がいななき、馬車が急停止した。


「こら!落ち着け!」

御者さんが馬に怒鳴ってる。影が私に手を伸ばしてきた。



これに捕まっては駄目だ!!


私は鞄を持って馬車から飛び出して走り出した。





ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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