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16 シオン様がやって来た

来ていただいてありがとうございます!



「やあっ!フィル夏休みの間はよろしく頼むっ!しかしここは暑いな」


リーフリルバーン家のお屋敷の前に止められた立派な馬車。黒かと思ったら濃い紫の馬車に薄紫色の馬が四頭。紫の一族って感じ。そこから薄紫の髪の男の子が降りてきた。本当にシオン様がリーフリルバーン家のお屋敷にいる。そしてテンションが高い。

「横に広いなこの屋敷は。空が高い。空気が澄んでる。良い所だな」

眩しそうにお屋敷と空を見上げるシオン様。

「ありがとうございます。シオン様」

「シオン、だ」

「ありがとう、シオン。今、当主が不在で申し訳ない。戻ったらご挨拶させていただくよ」

「構わない。色々分かったこともある。話したいことがたくさんだ!」

シオン様とてもニコニコしてご機嫌みたい。

「さあ、どうぞ中へ」

握手を交わした後、フィル様がシオン様を屋敷の中へ案内した。



そういえばご当主様のお仕事ってしなくて大丈夫なのかな?不思議に思ったから聞いてみたら、

「当主が動かなくても一族全員、天才で優秀だから問題無いな」

だって。そ、そういうものなんだね。クレス様は今回はウィステリアワイズ家でお仕事中。クレス様は今回のことでシオン様に気に入られて側近として働くことになったそうだ。後からシオン様を迎えに来るんだって。

「後からカーラも来るぞ!」

「え?そうなんですか?」

フィル様を見上げる。

「そのようだね」

フィル様はエドさんに頷くとエドさんは心得たというように会釈してその場を去って行った。



昼食の後、私はいつも通り作業をしていたんだけど、エドさんがやって来てノアと一緒にお茶に呼ばれた。仕事を終えたノアは今日もいつものように私の仕事部屋に入って来て隣で私の作業を見てた。ノアの態度はいつもと変わらない感じに見える。小さい頃から喧嘩みたいになっても、いつも自然に仲直りになって普通に戻ってた。だからそれは良いんだけど、エドさんがノアを見て少し顔をしかめた。

「ノア君、エリーさんと少し距離が近いのでは?」

エドさんも心配してくれてるみたい。私も昨日のノアには驚いた。でもいつも一緒にいたからノアを男の子として意識したことなかった。昨夜フィル様に言われて、周りの人は変に思うのかなって考え始めた。

「大丈夫です。僕達は兄妹みたいなものですから」

ノアはそう言って笑うと私の肩を抱いてエドさんの傍を通り過ぎた。姉弟……。なんだやっぱりね!ノアも同じだったんだ。そうだよね。私達家族みたいなものだよね。




「調べていたら面白いことが分かったんだ」

そう言ってシオン様がとても古そうな本を広げた。どうやら一緒にお茶を飲むためだけに呼ばれたわけではなかったみたい。

「昔の伝承で生きた花から直接力を取り込んでたという記述が見つかった。ほら、ここにエリーの道具と同じ文字がある。挿絵にもあるが、花畑で花光玉のようなものを作り出す様子が記述されている。エリー、是非試してみてくれ!」

シオン様の指さすページには女の人が花に囲まれて丸い光を持っている絵が描かれている。お祖母ちゃんからもらった道具の模様だと思ってたものは古代文字だったんだ。


「え?咲いてる花から直接力を取り込むんですか?道具を使わずに?」

正直言うと無理なんじゃって思った。でも期待に満ちたシオン様の目に押されるように言ってしまった。

「分かりました。やってみます」

「あくまで試しだから、気負わなくても大丈夫だよ」

フィル様に言ってもらえて少し安心できた。

「…………」

ノアは何だかちょっと不機嫌そう。私の対面の席で黙ってお茶を飲んでる。




お茶の後、私達は外に出た。まだお日様は沈むには少し高い位置にあって、空気には熱が残ってる。私はシオン様に言われた通りにやってみた。おばあちゃんから教わったのはお花と石に力を貸して下さいってお願いして力をこめる方法だから、できるかもしれない。道具を使わないのも、生きてる花で作るのもやったことないけど。ものは試しだものね。


今日は空が青い。遠くにクリアル山がとてもよく見える。スッと心が軽くなったような気がした。花壇の中心でさざれ石を持ってお願いしながら力をこめた。周りの花々から光が集まってくる。両手の手のひらの上に温かい感触。収束する光。あ、できそう……。遠くで誰かの声が聞こえる。歌うみたいな声……。ノアかな?フィル様?エドさん?シオン様?


「あ、できた……え?わっ、こんなの初めて見た……」

私の手の上には今までに見たことが無いくらいの光をはらむ虹色の花光玉が生まれていた。

「そっか、いっぱい色があるから虹色なのかな?」

今花壇で咲いてるのは色とりどりの日向い草と真っ青なコルリ草。出来上がった花光玉を空に透かして見る。

「……綺麗……」

すごい!こうやって作るんだ。昔はこうしてたんだ。っていうか、どうしてこっちでやらないんだろう?あ、花が咲いてない時は困るから?冬とか。そんなことを考えながら、虹色の花光玉をフィル様に渡した。


「できました!こんな風にも作れるんですね。っていうかこちらが本当の作り方なんですね。花畑があればわざわざ花を摘んで乾燥させる必要が無かったんですね!」

あれ?私、興奮しすぎ?一人ではしゃいじゃって恥ずかしい。だってノアもフィル様もエドさんもシオン様も黙って花光玉を凝視してる。


「これは……」

「凄いな……」

「確かに……」

「…………」


「エリー、これをしばらく預かっても?調べてみたいんだけど」

シオン様がためらいながらたずねてきた。

「あ、はい。フィル様が良いのでしたら。私はフィル様に雇われているのでその花光玉はフィル様のですし」

「エリー、もうこれはたぶんそういう問題じゃなくなったよ」

「?」

「……やっぱりエリーはすごいね……。ずっと、ずっと前から知ってたけどさ」

ノアが眩しそうに私を見て、顔を背けた。

「……ノア?」

眩しい日差しの中、ノアは足元の影をずっと見つめていた。





ここまでお読みいただいてありがとうございます!



一進一退……?

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