番外:異世界の客は定住者となる。
(´・ω・)メジェッタの方じゃよ<客
いやランちゃんさんも定住に近いっちゃ近いが。
「どうも、お邪魔致します。
ワタクシ、メジェッタからコチラに派遣されることになりました、コティと申します」
大きな、半透明の若葉色の身体が、ぷるんと揺れると、普通に地上の東方連邦の人達と全く同じ言葉を発音する。
上から眺めていた時には愉快系だと思ってたけど、こうやって間近で見ると割と愛嬌あるな、この種族?
「ごめんねえ、こんな場所にまで、しかも極秘条件で呼びつけちゃって」
からっとした口調で、砂姫屋教授がそう返事をしている。
「いえいえ、かつて別の世界で我々を保護してくださっていた女神様の係累、否、おおもとたる御方にお会いできて、ワタクシも望外の喜びでございますよ」
ぷるぷる、と、軽く体を震わせながら、メジェッタのコティさんはそう述べる。
結局、メジェッタの中から一人、期間不定で月に派遣してもらう事になった。
人選は丁度伝手があったので、東方連邦の方にこっそりお願いした。
流石に我々が直接現地に接触に行くのはナシかなあってなりまして。
彼等は、元々の、いちばん最初にいた世界から、移住、というより交流先を求めて旅立った人達、だったらしい。
らしい、なのは、この世界に来た時に、住んでいた宇宙船――ひとつ前にあたしがいた世界における、小の月――が、完全に壊れてしまい、歴史的なデータが相当喪われてしまったからだという。
この世界のヒト種に比べれば、驚異的に長寿命な彼等ではあるのだけど、流石に一つ前の世界で十数世代、この世界の南大陸に来てからも四世代くらい、完全交代したのだそうで。
宇宙船が壊れた結果、機械文明からは完全に縁遠くなり、現在では、既存人類の全く居ない、自然溢れる南大陸で、簡単な栽培と狩猟で生計を立てる、素朴な原住民ライクな暮らしぶりになっているという。
ただ、現在の彼らの居住地は、丁度難破船などの漂着物が良く流れ着く場所であったり、更に近くの海底に、喪月戦争前の都市の遺跡が沈んでいたりで、この世界の文明の事や、言語に関してはきちんと理解しているのだという。
その上で、なくても特に困らないしね、と、機械文明をさらっと捨ててる辺り、随分色んな意味で完成度の高い種族だなあと思う。
「ははーん、丁度最初の月が墜ちた後の混乱期が終わってから、こっちに来たのね。
運がいい事だわ」
種族の来歴の話を聞き終わった砂姫屋教授がうんうんと頷いている。
確か、あたしの魂って奴も、それと一緒にこっちに来た、だったっけ。
つまり、あたし、客観的に見ると、あっちの世界にいたのって、月が墜ちた大騒動の時代を知らない状態で保護されていたような感じか。
そこから、何故速攻で転生しなかったのかは、判らない。
休息していた、らしいのだけど……
「その当時、魂だけで一緒に居てくださった巫女様?という方が、このくらいの時期に降りればよい、と教えてくださったのだと伝わっておりますよ」
へ?あたし、仕事もしてたの?
砂姫屋教授がこちらを見るので、首を振る。
知らないっす。覚えてないっす。
「いや多分あたしの分体の方だとは思うんだけどねえ、そういう示唆ができるのは」
そして砂姫屋教授の結論は、まあ無難な辺りだった。
「壊れた船というのを、一度拝見できないでしょうかね」
機械に興味津々なのは、セルファさんだ。
「もう記念碑的なモニュメントしか残っていないんですよ。
今の村の形になるまでに何度も試行錯誤して、その際に開拓用の素材として使っちゃったそうなので」
もともと、あたしの最初の知識にあるような宇宙船、って奴とは違って、自然の岩盤を利用して、内部に都市をつくる、そう、今のこの月のような構造の物体だったらしいのよね、メジェッタの宇宙船。
で、この世界に不時着の形でおっこちた時に外殻部が破損し、内部にも大きな被害が出たのを機に、宇宙船を解体し、初期の開拓資材として消費したと。
モニュメントは、外殻の残骸に宇宙船の構造を簡略化した記号を刻んだ石碑だそうだ。
彼ら、宇宙船建造時代ですら、文字を持ってなかったそうで、説明文はない、そうだよ。
「もともと、世界を渡る前に動力が殆ど死んじゃってて、電気を龍の人に借りてる有様だったらしいんで、多分船の寿命だったんじゃないですかね?
不時着して壊れたと申しましても、人的被害はなかったそうですし」
先祖代々の口伝にそうありまして、とコティさんは述べる。
「……ああ、サラマか。
うちの身内だった疾雷龍という奴が、これらの祖と懇意にしていたな。
確か雷の力を貸していた、という話も聞いておるよ」
静かに、但し興味津々の顔で話を聞いていたランちゃんがそこで口を挟む。
「……異世界からの、言い方が悪いけど、いわば異物と意気投合して懇意に、って。
君んとこの真龍って割とお気楽?」
「個体によるね」
姫ちゃんがなんか酷い事を言ってるけど、ランちゃんはさらりと流す。
でも、微かに残る記憶に、なんだかんだで人間嫌いの真龍、いない気がする。
いや、確か炎の龍の人には会ったことないから、その方はわかんないな?
「しーちゃんが首傾げてるから、多分ダウト?」
「全員に会ってるわけじゃないから、そうとも言い切れない。記憶、あんまりないし」
教授の言葉には、一応否定で返す。
あーでも、ボドゲ管理してた空色のお兄さんとか、ボードゲーマーは好きだったけど、それ以外の人類はどうでもいいって感じだった覚え、あるな。
「其方が前の世で逢った中だと、レストとムルラッハは余り人を好かぬ性であったな」
「あぁ。そう言われてみたらそうかも?
後者はなんか笑いのツボにハメた覚えしかないけど」
……言ってから思ったけど、なんでそんなしょうもない事は覚えてるのか。
「爺を茄子呼ばわりした話か。あとで聞いたが、我が目で見て見たかったものだ」
はいそれです。
ホントに、なんで記憶しているの、そこなんだ。
なお確認してみたら、劫炎龍という龍号の、火属性の強い龍の人は、人類には特に興味もなく、好きでも嫌いでもない、という、完全無関心タイプだったそうな。
「ロミネは創世神めがやらかしてからは、力を弱めてしまった太陽のを手伝ったりしていて、多忙であったしな」
あ、太陽方面、そんな感じだったんだ。
「えーっと……氷の人とランちゃんは完全に人類好きな方だったと思う、あと水の人と岩の人」
名前まではあんまり覚えてないけども。
「うむ、ピティ辺りは好みが激しかったが、其方が挙げた連中は……
いや待て、なぜルドゥとアローを知っている?」
「場所も理由も忘れたけど、どこかでその二人とは纏めて会ってるっぽい」
ランディさん抜きで他の真龍に会ったのって、いつだろう。
うん、記憶にないな!多分あっちの神様系絡みのなんかだ!
「我も、回収した全員の全ての記憶を参照できるわけではないからなあ」
些末事まで、全部覚えているなど無駄だしな、と、ランちゃんは冷たい事を言う。
いや、冷たいわけじゃないな。
個人の思い出は、個人のもののままにしてくれているんだ、多分。
そのほかにも、コティさんには数日かけて、色々聞き取り調査の形でお話を聞いたけど、最終的に、まあ今の東方連邦との関係を維持できるなら、問題ないんじゃない?という主神様ジャッジに落ち着いた。
つまり、現状維持です。
「でもメジェッタ族が堂々と東方諸国を闊歩している現状だと、異形に反感を持ちやすい西方地域との関係性は更に薄まりそうですね」
セルファさんが、教授の判定には頷きつつも、そんな意見を述べる。
「西方?あの連中は当分どうにもなんないでしょ。
あの英雄気取りのアンポンタンのダメージがまだがっつり残ってるし」
南部諸邦は多分問題ないだろうけどねえ、と教授が溜息を吐く。
「西方って、なんであんなに排他的になってるんだろ」
お兄ちゃんが首を傾げている。うむ、可愛い。
「駄神連中の影響が、何故かあの辺だけずっと残っているんですよね……
時々調査はしているんですが、これといった成果は特にないですし」
セルファさんも、そこは気にしているようで、調査自体はしているのだと述べる。
「……ああ、あいつらの誰かの子孫、いるわね。交雑を許可した覚えはないけど」
濃いめのとこだけ滅ぼすかぁ?と口にしつつも、まるでやる気のなさげな教授。
「王族の一部とかでしたっけ?いや、自称英雄がそこらへんの家系は大体潰していたような」
「自称英雄、か。傑物であったのかね?」
恐らく、自称、の部分に何かを刺激されたようで、ランちゃんが首を傾げる。
「一応、頭一つ抜ける形で優秀ではあったわね。
増長した挙句、身の丈に合わない戦を起こしてぼろっかすに敗北して失脚したけど」
「あの時のハル君無双はなかなか見ものだったわね」
「ハルム、カッコよかったよねえ!」
そして教授は辛辣な回答をし、姫ちゃんが当時の海戦でのハルムレクさん無双を思い起こし、お兄ちゃんが乗っかる。
うん、いつも通りだね。
結局、西方に関しては、もうちょっと調査をする、とだけ決まった。
いちいち干渉するのも、面白くないとは教授の弁だ。
ランちゃんは当面は月暮らしだ。
取りあえず部屋を割り当てて、使い方は一通り教えた。
メジェッタのコティさんは、一旦南大陸のおうちに帰ってもらった。
後日、セルファさんが不時着現場を調べに行くとは言っていた。
でも、そうね。
いずれ皆でピクニックに行ったりするかもしれないね。
葡萄が美味しいらしいから。
どうもランディさん、と言ってるとこだけ昔の白いのを思い出しているらしいよ<しーちゃん
メジェッタは精神感応で情報交換する種族がちょっと退化した奴<文字がない
なので、記録媒体が壊れるとにっちもさっちもいかないという弱点があったのだ。
今回の番外編は一旦ここまでです。また気が向いたら何か書くかも?




