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妄想の帝国

妄想の帝国 その63 究極防衛装置△ナイン〇

作者: 天城冴
掲載日:2022/03/09

隣国への無謀な侵攻をきっかけにロシアは経済他大打撃をうけ、国民はプータン大統領他時の政権を倒して、新たな政府を樹立。その新政府派遣団がニホン国に来て…

20〷年、ロシアのウクライナ侵攻の泥沼化により、ロシアの財政は悪化。国内外の非難や経済の大打撃によりプータン大統領や側近たちは政権を追われ、新政権が樹立。そして、新たなる体制づくりのため、新ロシア暫定政府派遣団が、ここニホン国を訪れていた。


「よ、ようこそ、おいでくださいました。あの~、今回の訪ニホンの目的は、そのう」

新ロシア暫定政府派遣団を出迎えたのはジコウ党キジダベガース総理。なにやら緊張して、口がうまく回らないらしい。それもそのはず、このような外交的大任は初めてなのである。ニホン国では長すぎる与党ジコウ党の実質的独裁体制に世襲議員がはびこりまくり、ロクな実績もなくても、議員になれ、うまくいけば大臣になれてしまうのである。

 そんな実際は素人のほうがマシなニホン国政府に飼い主ともよばれるアメリカと敵対していたロシアの政府派遣団が重要な使命を帯びてきたというのだ。しかもその内容はいまだ不明。ニホン国の情報網で調べてはいたのだが、調査にあたったものたちがなぜか口を閉ざし、調査不能といってきたため、ニホン国ではこの訪問に戦々恐々の状態であった。

 そんなニホン国の事情を知ってか、しらずか、派遣団団長イワンスキーは、満面の笑みをたたえ

「おお、キジダベガース総理、ニホンにぜひ学びたいことがありまして。ニホンには国民を守るための絶対的いや究極の防衛装置があるときき、わが新ロシアにも取り入れたいと考えております」

イワンスキー団長の言葉の意図がさっぱりわからずキジダベガース総理は

「へ?我が国は、そのう、まだ憲法改正前で、まあ、その米軍の、戦闘機とか、巡洋艦とか、その、まだまだ、やはり核…、いや」

しどろもどろに答えるが、イワンスキー団長は

「何を仰る。最強の防御システム、あの△ナイン〇が、あるではありませんか」

「△ナイン〇?(よく聞き取れなかったが、ロシア語は難しい)」

「そうです。あのシステムは実に素晴らしい。確かに、一見、何の力も意味もなさないように見えて、実は重大な防御力となる、ある意味攻撃力でもある」

「?(そんなすごいシステム、わがニホン国にあったけ?)」

狐につままれたような顔をするキジダベガース総理をよそにイワンスキー団長は滔々と続ける。

「あのシステムがあるからこそ、ニホン国は戦禍に巻き込まなかったのです。まあ、何やら戦争好きな、あの憎むべきプータンのようなトップがニホン国にもまったく、いなかったわけではなく、危機に陥りそうになったこともあったようですが、国民、野党が△ナイン〇を盾に頑張り、戦争に参加しなかった」

「?(参戦しないシステム、なんだろう、まさか、ひょ、ひょっとして調査不能としたのは)」

「古くからの諺に“馬鹿な味方は敵より悪い”といいますが、△ナイン〇は馬鹿な味方、いやそれ以上に悪質な狂った権力者や愚かなトップを抑え込むシステムなのです。以前はわがロシアでも、いやアメリカなどといった戦いを好む連中が多いところでは、その力を見くびり、軽視してきた。真に世界の平和を望み、各国の繁栄を願う人々がその素晴らしさにノーベル賞にと推薦したのを嘲笑した、いや、お恥ずかしい限りです」

「!(ノーベル賞推薦って、そ、それは、いや、そんな、まさかあ)」

「△ナイン〇があったなら、あのプータン大統領の暴走をとめ、隣国に対して双方に無益な戦争を仕掛けることもなかった。我が国の若者や隣国の人々が犠牲になることも、デフォルトで経済に壊滅的な被害を受けることもなかったのです。ニホン国の人々のツィートでそれに気が付いた我が国の国民は△ナイン〇と同様のシステムがあれば、愚かな戦争を二度と起こさないことができると知ったのです!」

目を輝かせていうイワンスキー団長。一方キジダベガース総理は恐る恐る口にした。

「そ、それは、まさかケンポー第キュウ条のことで…」

「そう、それです!ニホン語ではそのようにいうのですね。キュウ条、その素晴らしきシステムをぜひわがロシアに。80年以上参戦しないでいられ、傲慢な権力者を締め付けるそれがあればある意味無敵です」

ギャーと内心叫びたくなるのを抑えたキジダベガース総理。

「(ああ、調査不能というはずだ。こんな理由だとは思いつかない。思いついても信じがたい)で、でも他国からの侵略が、その」

「今日では、侵略にも正当な理由が必要です。先の隣国への侵略戦争は隣国が我が国を敵対的な軍事同盟に加盟することの阻止が大儀でした。逆に考えれば、軍事になど関わらないと宣言していれば、侵略する口実も他国に与えられないのです」

「はあ、し、しかし、実際にミサイルとか」

「それに△ナイン〇、いやキュウ条は自衛権を認めているとのこと。ニホン国にも自衛のための部隊はあるではありませんか」

「あー、それは、そのう」

「ニホン国では一時軍備増強したそうですが、それが経済成長の妨げの一因であるとの分析もあります。まあ、あの他国に戦を仕掛けるのが大好きなアメリカがどうこう言ったためでしょうが。あの血の気の多い連中にちょっかいをだされながら、戦禍に巻き込まれることがなかったのは素晴らしい」

「あー、そのう、実はキュウ条は改正…」

「おお、改正してアメリカの無理なごり押しをのむようなトップを強制的に排除できるようにするのですか!素晴らしい!キュウ条を軽視するような輩が好き勝手できないように強化すべきです!いや、世界中がこのシステムを採用すればよいのです!さすればバカバカしい軍備増強がなくなり各国が大規模気候変動や食糧問題などの真に解決すべき問題に富と科学を集中できます!」

「あわわわ」

目を白黒させるキジダベガース総理。そんなキジダベガース総理の様子に全く気が付かず

「さあ、キジダベガース総理、ぜひキュウ条について詳しく教えてください。キュウ条に関してあらゆることを学び我が国にも取り入れたいのです。さすれば、我が国はきっとあのアメリカをも凌ぐ国になることでしょう」

目を輝かせて語るイワンスキー団長だった。


世界に、とくに東欧あたりに一日も早く平和が訪れますように

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