表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/61

39. 芽生え

 その日の夜、眠り続けているノアを撫でながらシャーロットは唇を噛み締めた。

 段々眠る時間が長くなっているとは思っていたが、夜になっても目を覚まさないなんて。

 ノアに何かあったんじゃないか。そう思うと居ても立ってもいられなくなる。

 

(魔導塔に戻ろうかしら……)


 きっと、数日くらい自分が抜けても大丈夫だろう。

 シャーロットは、一抱えほどもあるカエルの形をした置物――多分これも魔道具――をいじっているメロディに声をかけた。

 

「あの、私ちょっと塔に戻ろうかなと思うんですが……」

「ノア様なら今、塔には居ないよ~?」


 メロディはカエルの口に手を突っ込みながら、シャーロットの方を見ずに答える。

 シャーロットは驚きで思わずノアを撫でる手を止めた。

 

(ノアが塔に居ないって、どういうこと? なにかあったの? それに、メロディさんはなんで私がノアに会おうと思ったのがわかったの?)


 一体、何をどこまで知っているのだろうか。

 メロディは言葉に詰まったシャーロットをよそに再び口を開いた。

 

「ん~、まあノア様のことだから大丈夫だよ。あの人とんでもなく強いし……」

「……頭ではわかってるんですけど。でも、心配なんです……」


 メロディはシャーロットに視線を向けた。

 思いの外強い眼差しを向けられ、シャーロットは思わず身じろぐ。

 

「まあ、無いと思うけど。もしノア様に何かあったら、メロがシャルちゃんを匿ってあげるよ? メロ、見た目よりはお姉さんだから、シャルちゃん一人見つからないように匿うくらいは出来るよ。それでも心配?」


 何もかもをわかっているかのようなメロディの言葉に、シャーロットは瞠目した。そして言われた内容を反芻する。

 確かに、シャーロットがノアに求めるものは身の安全だ。いざとなったら逃げようとも思っている。

 わざわざ目立つノアの側に居なくとも、他にシャーロットをラヴィニアから守ってくれる人間がいれば問題ない――のかもしれない。


「それでも、心配です。やっぱり、ノアが傷つくのは嫌だわ……。それに、強いからって誰にも心配してもらえないのって、なんだか寂しい気がします……」


 ノアに何かがあるのを想像しただけで胸がつきんと痛むのを感じる。

 なんだかんだ優しい魔王様の、あの呆れた様な声が聞けなくなるのは嫌だった。


(知っている人が傷つくのは、誰だって嫌よね)


 そう考えるシャーロットは、己の心の片隅に芽生えつつあるものにはまだ無自覚だった。



 ふっと表情を和らげ、メロディはにこりとシャーロットに微笑みかける。

 

「そっかそっか。うん、そうだね、シャルちゃんの言う通りかも~。でも、本当に大丈夫だよ?」


 そういうとメロディはカエルの口から手を引き抜いた。

 手には丸められた羊皮紙が握られており、それをシャーロットに手渡す。

 広げると、中に文字が書いてあった。シャーロットはそれを読み上げる。

 

「えっと……『赤月祭の日の朝、港で』?」

「おお~、シャルちゃん、字が読めるんだね~」


 ぱちぱちと気の抜けた拍手をするメロディ。

 読めない可能性があると思ったのに何故そのまま手渡したのだろう。

 シャーロットは疑問に思ったが、聞いても碌な返事が返って来なさそうなのでそれは置いておくことにした。

 

「これは……ノアからですか?」

「そうだよ~。結界が出来ると普通の魔力は遮断されちゃうから、通信用に作った魔道具なの、このカエルちゃん。可愛いでしょ~?」


 メロディはカエルを抱えてシャーロットに見せつけた。

 大きくつぶらな瞳がシャーロットを見つめる。

 確かになんともいえないゆるい可愛さはあった。

 

「あのそんなことより、結界って……?」

「そんなことってなに~!? もう、シャルちゃんにはこの可愛さがわかんないの~!?」

「あ、いや、わかります。わかりますが……」

「適当に流そうとしてるでしょ~!? あ、もしかしてカエル嫌い? じゃあこの『魔力吸引ゾウさん』は~?」


 完全にメロディのペースに巻き込まれてしまった。

 その後、メロディが満足するまでお手製の様々な魔道具を見せつけらたシャーロットは、魔物を討伐しに行った日よりもよほど疲労感を覚えて眠りにつくことになった。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 そしてその次の日、シャーロットはアルストル騎士団長ランドルフに呼び出され、一人騎士団の本部にある団長室を訪れていた。

 相変わらず剣より本の方が似合いそうな青年だ。

 騎士団長に対して少々失礼なことを考えているシャーロットに向かって、ランドルフは口を開いた。

 

「ニコラスから報告を聞きましてね。あなたの魔法は強力だが、あまりコントロールが出来ていない様子で集団戦闘向きではないと」


 的確な評価だ。やや気まずくなったシャーロットは笑って誤魔化そうとした。

 あはは……と笑ったシャーロットにランドルフは微笑み返す。

 

「そこで、あなたと他の騎士は別行動してもらうことにしました。とはいえ、一人だと流石に危ないので、私が同行します」

「え? 団長さんがですか?」

「私なら、あなたの魔法に巻き込まれないよう注意しながら戦えますから。――丁度、オーガが発生したとの情報が入りました。行きましょうか、シャーロットさん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ