16. 最悪夕食会
わかりやすく敵愾心の籠った目つきで睨んでくるエスメを横目に、シャーロットはそっと嘆息した。
エスメ来訪一日目の夕食会のことである。
姫が来るのに何もしないも体裁的にまずいということで、歓迎会を兼ね簡単にノアと三人で夕食を共にすることになった。
シャーロットは心の底から遠慮したかったのだが、エスメたっての希望で同席することを余儀なくされてしまった。
来訪をノアの婚約者として共に出迎えた時からこの態度だ。
赤い髪、金色の瞳の気の強そうな美少女。
聞けば、かなり強い魔力も持っており溺愛されて育ったのだという。
エスメの話を聞いたときから嫌な予感はしていたが、実際に会ってみてそれは確信に変わった。
「あなたがノア様の婚約者ね。ふうん……。短い付き合いだと思うけど、よろしく頼むわ」
開口一番の含みのある挨拶。
(短い付き合いって、追い出してやるって意味かしら……)
シャーロットは含みを正確に受け取った。
それにしても、シャーロットのことが嫌いなら避ければいいだけなのになぜわざわざ夕食に呼び立てるのか。
しかもノアは仕事が立て込んでいて少し遅れるらしい。
シャーロットは本当に気が重かった。
「もともと、ラヴィニアさんの侍女だったんでしょう?」
「そうですね」
「あんな優しくて素敵な人の元が不満だなんて、随分変わってるわね」
「そうでしょうか」
「神殿には男があまりいないから気に入らなかったの? まあ王城からここまで随分離れているのにわざわざ来るぐらいだものね。凄い神経だわ」
「そうかもしれませんね」
「男好きしそうな顔してるものね。ノア様のことも体を使って篭絡したんでしょう。下劣な女。さすが奴隷上がりね」
悪意を隠そうともせずに攻撃してくる。
こうまっすぐに罵倒されると呆れが先に来て相手にする気も起きない。
恐らくノアに片思いしていて、シャーロットに取られたのが気に食わないのだろう。
シャーロットはうんざりし思わず軽く頭を抱えた。それを見たエスメがさらに声を尖らせる。
「何よそれ婚約腕輪? 見せつけてるの? ノア様の色を贈られたからっていい気になってるの?」
一挙手一投足気に入らないらしい。どんな攻撃箇所でも見逃さない姿勢がすごい。
シャーロットがひたすら現実逃避を続けていると、仕事が片付いたのかやっとノアが姿を見せた。
エスメが黄色い声を上げる。
「ノア様! お待ちしてたのよ。シャーロットさんと楽しくお話して待っていたの」
それはいくらなんでも嘘が過ぎる。
エスメの妄言に対し、ノアは笑みを浮かべて答えた。
「魔導塔の中の会話、僕には全部聞こえるんだよね」
エスメは媚びるような表情を浮かべたまま固まった。
しばらく無言だったが、タイミング良く食事が運ばれていると、
「まあ! 美味しそうな食事ね」
といって食事を始めた。
最悪な空気の中、夕食会がお開きになるまで、誰も口を開かなかった。




