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14. 嵐の予感

 ラヴィニアがルミナリアに帰ったらしい。

 工房の近くで魔道士たちが話しているのを聞いたシャーロットの機嫌はかなり良かった。

 

 (これで暫くは安全だわ)


 ラヴィニアはシャーロットを諦めてはいないだろうが、国に帰ってしまえば暫く手出しは出来ない。

 漸く一息つけそうだった。


 ここ最近、シャーロットは足繁く工房に通って魔道具を作る練習をしていた。

 魔法の練習はノアに匙を投げられてしまったし、暇を持て余していたというのもある。

 また、腕輪をつけてさえいれば身を守れるくらいの攻撃魔法は使えそうなので、そちらについては一旦満足していた。

 魔道具作成が自分に向いてないのは分かりきっていたが、あまりに出来ないのが悔しかったし、原作の「シャーロット」に少しでも近付きたいという思いもあった。

 魔力の制御に失敗し、壁や床に焦げを作ることも多くあったが、最近では付与対象を破壊する頻度は僅かに減ってきていた。

 

 対して聖力の方はと言うと、状況は芳しくなかった。

 擦り傷程度なら治せるようになってきたが、それ以上のことは出来ない。

 こちらの力の回復は奴隷紋の破壊とはあまり関係がないのかもしれない。

 ラヴィニアに聖力が流れていかないからといって、急激に聖力が回復し扱えるようになるという訳ではないようだ。

 

 聖力を使って出来ることはかなり限られている。癒やし、祝福、魔王の封印。それくらいしか浮かばない。

 現状魔王を封印する予定は特にないし、どうやったら聖力が回復するのか見当もつかないので、シャーロットは一旦気にしないことにしていた。

 

 

「そういえば明日からエスメ姫が来るんですよ。ノア様から聞きました? ウィンザーホワイトの末の姫なんですけど。あそこの王家って結構魔力持ち産まれやすいんですよねえ。それで産まれた子が魔力持ちだったら魔導塔に預ける習慣があるんですけど、エスメ姫も一時期うちに預けられてて。公務に疲れたからちょっと王城を離れて休みたいんだそうです。ほんといい迷惑ですよねえ。ノア様もなんで許可しちゃうんだか。あ、すみません本音が。聞かなかったことにしてください」



 ガラクタの詰まった箱を工房の床におろしながらカイが喋り続けている。

 シャーロットがせっせと魔道具を作る練習と称して破壊活動を行うのを見兼ね、ノアの指示であちこちからガラクタを集めては届けてくれていた。

 いつもはカイの話す内容は殆ど聞き流しているのだが、今日はやや興味のある内容だったため、そこそこちゃんと聞いていた。

 

「なんとなく……そんなことを言っていたような気がします」


 珍しく生ではない返事を返す。

 

 ルミナリアは元々、このウィンザーホワイトから分かたれた国だった。

 ウィンザーホワイトは一つの大きな島からなる国である。

 ある時、ウィンザーホワイトの王族の一人が女神ルミネに啓示を受けた。

 「島を出て海を渡った対面、大陸の端に新たな国を興せ」と。

 

 そうして出来たのがルミナリア神聖国とルミネ教会だった。

 この二国の国民なら知らないものはいない建国神話だ。

 

 元々一つの王家だったため、両国の王族は共通して金色の瞳を持っていた。

 

 明日、アルバートと同じ、金色の瞳の姫が来る。

 

(なんだかすごく嫌な予感がするのよね。すごく面倒なことになりそうな……)


 聖女としての能力なのか、はたまた長年の被虐者としての勘か。

 シャーロットの悪い予感が外れたことは、残念ながら無かった。

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