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僕の決意

 師匠がいなくなって二年が経った。


 あの後王都では死告獣が現れ、何か災害が起きて甚大な被害が出たと風の噂で聞いた。


 王都へ行けば詳しい事が分かると思うけど、知りたくないから僕は行かない。


 知るのが怖い。


 師匠は強いからきっと逃げ切れていると思う。

 ただ、とっても怠け者だから何処か眠り心地のいい場所を見つけてだらけているだけで、もうすぐしたらいつものように「よお」って全く悪びれる事なくひょっこり帰ってきそうで……だから僕はここで待ち続けている。


 だって僕は師匠から留守番を頼まれているから。

 ここを空けるわけにはいかない。


 今日こそ帰ってくる、明日帰ってこなくてもいつか必ず帰ってくる。

 だから僕はここにいないと。


******


 ある日、いつものように起きると師匠の部屋から音がした。


 もしかして師匠!? 帰ってきたんだ!!


 でもドアを開けても誰もいない。


 空耳だったのかと落ち込んでいると本棚の上に何かいるのに気づいて、見上げるとそこには小さな黒い猫が毛繕いをしていた。


 猫はこちらに気づくと毛繕いを止めてベッドの上に飛び降りると遅かったな、とでも言いたげに「にゃあ」と鳴いた。


******


 黒猫には「アンディ」という名前をつけた。

 アンディは師匠の部屋を自分の寝床にして毎日自由に過ごしている。


 ……なんだかアンディを見ていたら師匠の事をどんどん思い出してきて、このまま留守番と言ってただ日を過ごしているだけじゃいけないと思ってきた。


 師匠と最後に話したあの日、僕は師匠に「死告獣の誤解を解く」と言った。


 でも、あの日から僕は二年間何もせずここにずっといる。


 このままでいい筈がない。

 動き出さないと。



「アンディ」


 名前を呼んだだけでアンディは全てを理解したのか、ニャアと一声鳴いて床に置いてあるカバンの側に座った。

 いつかやらなきゃと思いつつ、いつ動き出せばいいか分からず置いたままにしていたけど、アンディが来てくれたおかげで決心がついた。


「王都に行こう、アンディ。師匠を……二年前の事を調べて、それで……それで……旅に出よう」


 一人でも多くの人に死告獣の正しい生態を教えて、そしてまだ何処かにいるであろう死告獣の生き残りを探すんだ。


 カバンの中には師匠が形見と言っていたあの本を入れた。

 アンディも一緒について来てくれるらしく隣に並んでくれている。


「師匠…………行ってきます」


 一度深呼吸をしてから外に出る為のドアを震える手で開けた。


 今度こそ僕は自分から行動を起こすんだ。

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