11月6日 その後
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。
11月6日の続きの話です。
ここはとある草津の旅館。
「寝酒にと思って自分用のお土産に買った日本酒を飲んでみたが…全然眠くならないな…これ以上飲んだら明日に残って本末転倒だし…」
「でもこれ飲みやすいっすね。もう一口もらってもいいっすか?」
「いいけど、ほどほどにしとけよ。お酒弱いんだから」
「わかってますって!うん、やっぱり美味しいっすね〜 ちなみにまだ緊張してます?」
「ふっ、まあな」
「カッコつけるとこじゃないでしょ…でも、ふーん、そうっすか」(つつつ)
「…あの、なんで近づいてくるの?」
「もう少し刺激を強くしたら慣れるのが早くならないかなーと思いまして」(ピトッ)
「…ほんとに勘弁して…心臓止まりそうだから…」
「ちぇー あ、そうだ。クタクタになるまで運動したら眠れるんじゃないっすか?」
「運動か…かといってこんな時間にできることあるか?」
「…2人きりで旅館に泊まって、やる運動なんてひとつに決まってるじゃないっすか…」
「それは…そうか…」
「シッ!」
「くっ!」
「サー!」
「つ、つえぇ…1点も取れねえ…」(ゼェゼェ)
「どうしたんすか!これで3セット終了っすよ!」
「はぁはぁ…田中くん、卓球も上手いんだな…」
「ふふん!『クレイジーカットマン』とはぼくのことっすよ!」
「…なんかいいのか悪いのかわかりにくい二つ名だな…」
「さあさあ!まだまだ夜はこれからっすよ!今夜は寝かせませんからね!」
「勘弁してくれ…部屋に戻ろう…もうヘトヘトだよ…」
「…眠れそうっすか?それならいいんすけど」
「ああ、ありがとう。汗流して寝るよ。大浴場に行ってくる」
「内風呂もついてますし、そっちもありっすよ!なんなら一緒に入ります?なーんてね!」
「…」(ピシッ)
「た、高橋さん?高橋さーん!」
「はっ!す、すまん、気を失ってたわ…あまりの衝撃に5秒ぐらい心臓が止まったよ…」
「すみません…軽い冗談のつもりだったんすけど…」
「と、とりあえず大浴場行ってくる…」
「は、はい、ごゆっくり」
「ふう」
「あ、おかえりなさい。…眠れそうです?」
「任せろ、吐きそうだ」
「また振り出しっすか…そういえばさっきの店長のトラベルセットの奥の方にこんなの入ってたんすけど」
「なんだ?『眠れるお呪い 錠剤タイプ』?」
「ただのラムネに店長がおまじないをかけて、睡眠薬みたいにしたものらしいっす。なんでも一粒で6時間効果があるらしいですよ」
「…胡散臭さより恐ろしさの方が強い商品だな…でも試してみるか」
「どうぞどうぞ!少しでも眠れるといいっすけどね」
「そうだな」(パクッ)
「どうっすか?効いてきました?なんてそんな早く効くわけ…」
(バタン)「…zzz」
「えぇ…嘘でしょ…」