9月23日 秋分の日 お墓参りの日 夕陽の日 ロブサルツマン・パジャマの日 網膜の日
9月23日のボツになった話です。
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。ぼたもちの方が好き。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。おはぎの方が好き。
ここはとある郊外のコンビニの前。
ウィーン ピンポーン
「お疲れさまでしたー ふぅ。さて」
カチ カチ ボッ
「スー…フー…あー、今日もいい天気だな」
「そうっすね」
「うおっ⁉︎びっくりした…田中くん、いつから居たんだ?」
「今さっき通りかかったとこっす。そしたら店から高橋さんが出てくるのが見えたんで、忍び寄ってきました」
「普通に声かけてくれよ…ああ、すまん。すぐに煙草消すわ」
「あ、いえ別に気にしなくていいっすよ?」
「バカ、非喫煙者の前で吸えるか。…よし」
「律儀っすねー 高橋さんは夜勤明けっすか?」
「ああ。田中くんは何してたんだ?こんな朝早くに。しかも汗だくで」
「朝はだいたい毎日軽くランニングをすることにしてるんすよ。いつもは5kmぐらいなんすけど、今日はせっかくの祝日なんで隣町の大きな橋のとこまで行って帰ってきました」
「…それ往復30kmぐらいないか?」
「そのくらいかもしれないっすね。いい汗かいたっす。やっぱり適度に運動すると気持ちがいいっすね!」
「君の適度は俺と定義が違うみたいだな…ちゃんと水分補給してるか?これ飲む?店長のおすすめコーナーにあったカステラサイダー」
「なんすかこれ…水分補給には向かなそうなんでやめとくっす…高橋さんは今日は何か予定があるんすか?せっかくのしんぶん日…ん?しゅんぶんの日…?」
「秋分の日な。ちょっと仮眠とって墓参りに行こうかと思ってる」
「お墓参りっすか?ああ、お彼岸ですもんね」
「それもあるしお盆のときに行きそびれたからな。強盗のせいで」
「あっ、そうでしたね…」
「あと秋分の日に合わせて今日はお墓参りの日っていう記念日でもあるから、ちょうどいいと思ってな」
「へー、そうなんすか。それはやっぱりお彼岸とかけて作られたんすかね」
「そうだな。同じような理由で夕陽の日ってのもある」
「夕陽?お彼岸と何の関係が?」
「秋分の日は『先祖を敬い、亡くなった人をしのぶ日であり、西に沈む太陽を見てその美しさや奥深さを心に留めるのにふさわしい日』って理由らしい」
「なるほど。秋分の日はいろんな記念日でもあるんすね」
「ああ。他にもこの時期から昼夜の寒暖差が激しくなることからパジャマをしっかり着て眠る習慣づけにピッタリってことで制定されたロブサルツマン・パジャマの日とか、この日を境に夜の方が長くなり網膜色素変性症って難病の人は外出しにくくなるってことでその病気の啓蒙活動を目的に制定された網膜の日ってのもあるな」
「盛りだくさんっすね…そんなに記念日が多いと高橋さんも大忙しっすね!」
「いや別に忙しくなることはないが…まあせっかくだし墓参りの帰りにパジャマを新調するかな。田中くんの今日の予定は?」
「あー、すみません。今日は友達と遊ぶ予定があるんすよね。高橋さん、今日はぼっちでしょうけど泣いちゃダメっすよ。今度ぼくが遊んであげますから!」
「ああ、よろしく頼む」
「…高橋さん、最近ぼっちいじりを受け入れすぎじゃないっすか?今のは怒るとこっすよ?」
「…はっ!ほんとだ…悪い悪い、こんどから激怒するようにするわ」
「気をつけて怒るようにするってなんか変じゃないっすかね…」
「そうかもな。まあ気にするな。ちなみに今日は何をして遊ぶ予定なんだ?」
「ボルダリングかこっくりさんの予定になってます」
「なんだその2択…温度差激しすぎるだろ…」
「なんでこの話ボツになったんすか?」
「話をだいたい作った後に秋分の日が毎年9月23日じゃなくて少しずつ変わることに気がついたんだよ」
「でも今年は23日なんでしょ?別にいいじゃないっすか?」
「一応作中の西暦はぼやかしてる設定があるからな。そこと合わなくなっちゃうからボツにしたんだよ」
「めんどくさいっすね〜 そんなこと言い出したの誰なんすか⁉︎もう!」
「君が言い出したんだろ。たしか8月5日の話で」
「…うふふ、そうでしたっけ?」
「うふふじゃねえ。あと紹介した記念日のうち網膜の日だけ9月23日で固定なんだ。それ以外は秋分の日と一緒なんだけどな。そんなこんなでボツになったってわけだ」
「なるほど、わかりました。以後気をつけてくださいよ!」
「誰のせいだ、誰の」