12月26日 ボクシングデー
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。
本編12月25日の続きです。
ここはとある郊外のマンションの一室。
「ケーキ美味しかったっすね〜」
「ああ。毎年クリスマス期間のバイト用に特製のケーキを作ってくれるんだよ。非売品なんだ」
「いいお店っすね!販売されてたケーキも美味しかったっす!」
「そういや昼間に買いに来てたな。…えっ、てことは今日ここに来る前にケーキ食べてきたの?」
「もちろんっすよ!それはクリスマスケーキ、さっき食べたのは太一くんの誕生日ケーキっすから別物っす」
「…まあいいか。でも今日はわざわざ来てくれてありがとうね。それに後片付けまでしてもらって」
「いえいえ!お祝いはぼくがしたかったことですし、逆にアポなしで押しかけちゃってすみません」
「それは全然大丈夫。ほんと楽しかった。…つーか、もう日付変わってるのか…家まで送っていくよ」
「大丈夫っすよ!今日実は父の車を借りてきたんで!高橋さんは早く寝てください。顔真っ白っすよ」
「そうなんだ。すまん、正直助かるよ。さすがにもう眠気が限界っぽい…」
「無茶しすぎっすよ…ゆっくり休んでくださいね」
「ありがとう…それじゃあ気をつけて」
「あー…あっ!おでんの残りはまだあったかいんでコンロに置いてます。冷めたら冷蔵庫に入れてくださいね。明日、明後日くらいまでなら食べられると思います」
「おう、了解。すまないね、何から何まで。それじゃあね」
「えっと…そう!漫画片付けてくれてありがとうございます!すごく整理されてて読みやすいですし!」※12月13日参照
「ああ、別にいいよ。大掃除のついでだし。もう少しキャパを確保してるけど…増やすのはほどほどにしてくれよ」
「うっ…気をつけます…」
「それじゃあまた明日の夜勤で。というかもう今日か」
「え、ええ…えっと…その…」
「…どうした?なかなか帰ろうとしないけど…何かあるのか…?」
「そ、そのですね…た、高橋さん!…きょ、今日はなんの日っすか?」
「…それ今じゃなきゃダメか?さすがに眠いんだが…」
「そ、そうっすよね…あはは…そ、それじゃおじゃましました…」
「…?…まあいいぞ。記念日の話するのは好きだし」
「す、すみません。お疲れなのに無理言ってしまって…」
「いいさ、別に。さて、今日は12月26日か…ボクシングデーだな」
「ボクシングデー?クリスマスの次の日にボクシングするんすか?」
「格闘技のボクシングのことじゃないんだ。イギリスとかの文化なんだけど、クリスマスにカードやプレゼントを届けてくれた郵便配達人とか休みなく働いてくれた使用人たちにお休みとプレゼントを贈るって日だそうだ」
「なるほど。でもボクシングとなんの関係が?」
「教会が貧しい人々に箱に入れたプレゼントを贈る日でもあったらしくて、箱、つまりボックスからとってボクシングデーと呼ばれるらしい」
「ふむふむ。…でも郵便の人とか使用人の人以外にもクリスマスに働いてる人たちっているじゃないっすか。ちょっと不公平じゃないっすか?」
「まああっちの文化だからな。イギリスとかではクリスマスは休むのが当然!って感じだろうし、ほかの国より休んでる人が多いんじゃないかな?その中でできた風習なんだろ」
「なるほど…でも日本でもクリスマスに働いていた人はプレゼントをもらえるって風習ができてもいいと思いませんか?高橋さんだって対象っすよ」
「まああると嬉しい人も増えるだろうな。俺の場合はプレゼントをくれる人がいないけどさ…」
「そ、そこでですね!これを高橋さんに差し上げましょう!ぼ、ぼくからの、その、プレゼントっす!」
「…えっ?な、なんで…?ボクシングデーのこと知ってたの?」
「あ、いえ、知らなかったっす。その…実はクリスマスプレゼントとして用意したんすけど…ほ、ほら!いつもお世話になってるんで!…でも実際に渡そうとしたら…その、タイミングを掴めなくてですね…」
「なかなか帰らなかったのはこれを渡そうとしてくれてたのか…開けてもいいか?」
「え、ええ!どうぞ!」
「これは…手袋か!すっごい嬉しい…ありがとう!大切にするよ!」
「…えへへ。喜んでもらえて何よりっす!じゃあぼくはこれで!おやすみなさいっす!」
「ああ。田中くん、本当にありがとう!気をつけて帰ってね」
「はい!」
はー、緊張した…でも渡せてよかったー
高橋さん、めっちゃ嬉しそうだったな…
あんな顔、初めてみたかも…
…えへへ
でもなんでこんなに緊張したんだろ…?
…?