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まにあうひと  作者: 山門
僕は彼女と居た
6/6

Ep1

久しぶりに筆が乗りました。

誰も興味ないと思うけど、僕の話をしよう。


僕は東京から九州に引っ越して来た。


理由は、母が、僕が死ぬ前に色んな体験をさせたいと望んだから。




そう。僕は死ぬ。

10歳になったら、神様に魂を捧げないといけない。









日本って、怨念を祀って神様にしてる国なんだけど、なんでそんなことするのか知ってる?

祖先への慰霊?まさか。相手は怨霊で自分に害をなす。

崇め奉り、あなたを尊重していますというていで、その怨嗟を、力を利用しているだけだ。

現在は誰もが存在しないと思っている、目に見えない力。

幽霊を見たり、浄化したり、使役したり。

そんなのが当たり前の世界で、僕は魂を怨霊に食べられるために生まれた。



赤子ではダメ。世界を知らない、未練のない魂はダメらしい。世界を見て、希望があって。そして自分の未来に絶望する必要がある。その思いの落差こそが、魂に深みを出す。

魂は輪廻転生するけど、食べられた魂はずっとそこでとどまり、凝り、糧となる。

そして人の力では手に負えない怨念をなだめ、慰めるために短い生を生きていく。




それが僕の人生。








でも正直、僕の魂は美味しくないだろうなって思うよ。

だって正直どうでもいい。

何も感じないよ。

生きていたって死んでいたって、退屈でつまらない。何も面白くない。


こんな世界に果たして未練を作れるのか。




母は、僕を理解していた。そしてこのままでは儀式が失敗することも理解していた。


ああ、なんと言うことだ。

母はお腹を痛めて産んだ僕が選ばれたことで悲しみ、それでも一族の娘らしく気丈に耐え、それなのに。

死ぬことが決まっていて、絶望している自分の子に、未練を作るために希望を持てと、絶望を深めさせる様にと働きかけている。


情のある女性だ。おそらく僕が死んだら絶望するのは彼女だ。



愛する我が子を、自分の手で絶望させて見殺しにさせることになるのだから。







僕には、母を憐れむだけの余裕があった。


まだ、この時は。















都会からの転校生は珍しく、僕はすごく浮いた。正直周囲が幼すぎて、僕は早々に母や一族の願いが叶えられないだろうと思っていた。

未練なんて、こんなつまらない世界に持つわけがない。






「初めまして。今日からお世話になります。よろしくお願いします」


挨拶をして、校内の紹介のため一度職員室で担任の先生と話していた時だった。






「こんにちわ先生!さっき校門でさつきさんが親戚の人に連れて行かれてたよ。今日は休むんじゃないかな」


ぶ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、お。



明るく、闊達とした様子の少女がドアを開けて入って来た。

僕は息を呑み、思わずのけぞる。





それだけの量の怨霊が、彼女の背中に積み上がっていた。












担任は親戚と一緒なら大丈夫かな、と言う雰囲気で気軽に彼女へ声をかける。

でも僕はわかっていた。

親戚なんかじゃないし、彼女は背中の1人に誘導されて、動いていた。


「でも帰ったらさつきちゃん病院行ったほうがいいよ!手がすごく痛そうだったよ!いっぱい血が出てた」


大人たちの血相が変わった。


彼女はキョトンとするばかり。

言葉の意味はわかるが、事態への理解ができていない様だった。


さっき挨拶した教室にいた子供の1人だといまさらに気づく。







それが、僕と彼女との出会い。

まさかこんなにおかしな人間が存在するなんて。



これだけの怨霊を背負うには、精神力も胆力も気力も必要だ。見たところ、霊力など特別な素質がある様にも見えない。

それでも体調不良や精神的に異常をきたしていないのは、おそらく、彼女は。




見事なほど、鈍感なのだった。








全てにおいて。





蛇足だが、さつきちゃんは帰ってきたが、一部に機能不全が残ってしまったらしい。

だがそれでも命は助かった。


彼女が賢くて上手に物事を運んでいたら、もしかしたらもっと元気な姿で戻ったかもしれないが、僕はそれは本末転倒だろうなと思う。


だってあの子だから。


鈍感で、疎くて。賢くないからこそ、彼女たちは、彼らは。


怨嗟の先の本当の望みを彼女に伝えられている。


見てくださってありがとうございます。

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