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「河原のお化け屋敷に肝試しに行ったら、そこに住んでたじいちゃんが死んでたんだって」
河原のお化け屋敷は、結構昔から空き家で子供達の秘密基地になっていたけど、私が小学生になった頃にはお爺さんがいて入ったら怒られたり木の枝で殴られたりするらしいから近づけなくなっていた。
でも中学生とか小学生の上の学年の子たちは夜にお爺さんに気付かれないように入り込んで度胸試しのようなことをするのが流行っていた。
「そりゃああんなところに住んじゃったら色々持っていかれるよ。しょうがない」
と転校生が言った。
「持って行かれた?強盗されたの?お爺さんお金持ちだったの?」
「お金は持ってなかっただろうなあ…。ホームレスってわかる?大人でもちゃんとした仕事してなくて公園とかで寝る人。家がない人。あのお爺さんは家がなくて空き家に住んでただけ。お金なんてないから犯人は強盗じゃないよ」
「…そうなんだ」
当時はホームレスの概念がなく、よく意味がわからなかったのだがとりあえず頷いておいた。
「じゃあ誰に持っていかれちゃったの?」
「あんたが絶対、見ない人」
「ええ」
そんな意地悪をしたことはなかったので、とんだ言いがかりだった。
「喧嘩しても私無視したことないよ。無視したら悲しいじゃん」
大好きなあみちゃんと喧嘩して、無視された時のことを思い出して泣きそうだった。あれ以来あみちゃんとは2人で遊んでもらえない。悲しい。
他の友達と遊んでるのを邪魔した自分が悪いのだが。
「…はは」
転校生は嫌な笑い方をした。
「見てなくても、お願いされたらちゃんと聞いてあげてるから悲しくはないと思うよ」
「え?」
どうやら気付かないうちにお願いを聞いてあげていたらしい。
「知らなかった。そうなの?え?何してあげたの私」
「…隠されちゃったのを見つけてあげてたよ」
「あ!」
心当たりがあった。
「のんちゃんの靴?私が見つけたやつ!校庭の砂場に埋まってたよね!私探すの得意なんだ〜。犯人は知らないけど、もしかしてみてないから絶対見ない人ってこと?でも見てたら止めるよ!」
「体を踏んだりされる前にちゃんと土に埋めてくれたり」
転校生はたまに自分のしたい話しかせず、相槌も打ってくれないことがあった。しかも大抵続きは意味がわからないことが多い。
「強い人を呼んできてくれて、したいことをさせてくれるから、見てもらえなくてもみんな満足してるよ」
「あーそう?」
「そう」
意味はわからなかったが、違う話題に変えたかった私は深く考えずに相槌する。
「ところでさ、その家さ、一緒に行かない?」
すごく勇気が必要だった。
もちろん、明るい時間に行くつもりである。
終わり