8 部活の練習
高校生になり、部活を何にしようか迷っていたが、結局軽音部に決め入部してからもう3ヶ月が経つ。仮入部の時のあの4人、私、長谷川翔、吉村光、田口康平は、もうお互いをあだ名呼び捨てで呼び合う関係になっていた。
私のあだ名は下の名前「夏樹」からとった「なっち」。アイドル時代は「なっきぃ」という名前だったが、ここで使いまわすのもどうかと思ってあえて違う名前にした。
長谷川は、下の名前「翔」を音読みした「ショウ」。吉村は、名前そのまま「ひかり」。田口は、下の名前の2文字の「コウ」と呼ばれている。
話してくれたのだが、コウとひかりは中学校が同じで、同一のバンドに所属していたらしい。つまり、楽器経験が全くないのはショウだけだ。ただ、3か月の間一生懸命練習していたおかげなのか、もう遜色ないレベルにはなっていた。
今、部活の休憩時間中だ。私たちは、4人でちょっとした話をしていた。
「俺はギター、なっちがギター&ボーカル、ショウがベース、ひかりがドラムって、みんなの楽器の志望、全くかぶってなかったね」
「確かに、こうやって今は揉めることなくできてるのも、そのおかげだよね。この4人を集めてくれた神様に感謝しなきゃ」
ひかりは笑いながら言う。私たちも、3人で笑い合った。
来月末、8月28日日曜日には、私たちのバンド「RIVAGE」の初ライヴがある。バンド名は、フランス語で海岸(英語だとReef)を意味する単語が由来となっていると説明されるが、実際は私のほんの思いつき(Mirageをもじったもの)からとられた名前である。
「そろそろ休憩終わらせて続きやろうぜ」
バンドリーダーであるコウの言葉に従って、私たちは練習を再開した。
私が昔徳島でローカルアイドルをやっていたことを知っているのは、今のところショウだけのようだ。少なくとも私は周りには話していないし、ショウも(定期的にラインを見せてもらっているが)誰にも言っていないようだ。誰かがたまたま「ラストラベンダー」で名前を知ってしまったらわからないが、現状はまだ知られていないようだ。
私にとっては、アイドル時代に舞台で立ったという経験は、バンドの活動で活きていると感じる。もし歌って踊る経験がなければ、私の性格的にかなり緊張してしまっているだろう。
Rivageオリジナル曲の作詞・作曲は私が行っている。最初のライヴで歌うことになったオリ曲は「始まりの街」だ。ここ横浜と、私が活動していた市(徳島県A市)に共通していること、それは海があることだ。私は、子供の頃から海に強い憧れを抱いていた。
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