11 カラオケ 1
「家の近くにカラオケとかショッピングモールがあるのっていいよね。私が住んでいたところ、田舎だから何もなかったんだよね」
私はショウの家がだいたいどの辺にあるのか知っている(具体的な場所は知らない)が、あの辺も十分田舎だ。C北まわりは建物が多く施設が充実しており田舎ではない(決して都会とも言い難い)のだが、私たちの最寄り駅であるH駅の周辺は、言ってしまえば昔私のいたところと変わらないくらいの田舎だ。私たちは2人で、カラオケのある駅前の建物「p-ヨコハマ」まで歩いて行った。
「このビル、カラオケあったんだ」
「ずっとここに住んでるって言ってたのに、知らなかったの?」
ショウは、p-ヨコハマにはあまり入らないため、どんな店が中にあるのかあまり知らないようだった。2階に激安のディスカウントストアが昔あったらしいが、撤去されたらしいという話はしてくれた。
カラオケは6階にあると聞いている。私はショウについて行くことにした。エレベータを降りてすぐのところに、プリクラの機械数台とファミリーレストランがある。そこを左に曲がれば、すぐカラオケに着く。私たちは学生証を出して、受付に並んだ。
「お部屋は7番になります。学割でドリンクバーが無料となっております。そちらにございますのでご利用ください」
私は、コーヒーをコップに注いで部屋へと向かっていった。
「ヘリアンサスガールズの歌、どれ知ってる?」
私は、ショウが知っている歌を歌おうとしている。知らない歌はあまり面白くないだろう。
「えーっと、確か、4月に買ったCDの『希望の花言葉』シングル内に入っているやつと、あとはiTunesで『大冒険時代』『次の時代へ』『続く』あたりならわかる。『2つ目の希望』は2期生の歌だよね? あれなっち歌ってる?」
「っていうかそもそも入ってるの?」
2つ目の希望という歌はヘリアンサスガールズの2期生のために作られた歌であり、1期生は歌っていない。私はそのことをショウに話す。
「2つ目の希望は歌ってない! ラストラベンダーの『タイムマシン』が入れられた時に、他の曲も一緒に入ったと思う。とりあえず『希望の花言葉』歌ってみるね」
私は端末を操作し、カラオケに希望の花言葉を入れた。四国でのアイドル時代の活動を思い出してしまい、イントロが流れた瞬間少し涙が流れ始めてしまった。