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不穏なインテルメッツォ

 最初の部屋を出た俺は、通路の向こうを恐る恐る覗き込んだ。


 この屋敷の通路は真っ直ぐじゃなかった。弓なりに曲がっている。

 それが何を意味するのか。向こうから奴らに俺の姿が見つからない、そして俺が向こうの奴らに気づくことができない。

 とりあえず、今の俺が見える範囲には誰も居ないた。。ほっと息を吐いた。


「…………」


 息をのんで、耳を澄ませる。足音は聞こえなかった。

 まだ2階には降りてない。俺の元に来るまでにはラグがあるらしい。


 今のうちに部屋で見つけた地図を見てみた。

 虫食い、焼けた跡、黄ばんだ模様で汚れて見えにくいけど確かにここの地図。

 1階、2階、3階、の部屋の配置は昨日に探索した館と同じ。1階に厨房があって、2回の端に俺は居た部屋があって、3階にゆのねぇの大部屋。

 そして、それだけじゃない。別の場所と、それに続いた通路が書かれていた。


 つまり別館がある。しかも、それに続く通路が2階にあった。

 もしもそこに逃げられれば、アイツラに捕まる可能性も低くなるはず。

 ……誰も来ていないよな? こっそり場所に向かうと、確かに通路があった。


 館の通路と比べて、別館に続くこの道は一段と暗かった。

 通路の途中の扉に差し掛かる。すぐに、かつ慎重に扉に手をかけた。


 ――がちゃ、がちゃがちゃ


 か、鍵がかかっている? 鍵穴はないのに?

 不思議に思ったけど、何度繰り返しても同じ反応で。ちっ、ダメかよ。

 期待が裏切られたことにがっかりし、ポケットから装置を取り出した。


 モニターが付けられたそれは、ぎりぎりポケットに入るくらいの大きさ。

 これを操作すれば、なぜか置いてある各部屋の監視カメラから部屋の状況が分かる。要するにアイツラの行動を調べられるんだ。

 だけど、このモニターはバッテリー式だった。つまり充電が切れたら使えない。あの部屋に戻って充電しないといけなくなる。

 目減りするバッテリーの表示を見た限り、画面を開いた状態で2時間くらいかな。気を付けて、使わないと。

 通路を出てすぐの部屋に入って、安全を確保した後にそれを眺めた。


『よーし、今日こそ焼いて、燃やして、道也を笑顔にしてあげるからねー!』


 初めに照。アイツは1階だ。部屋の中を見てる。

 様子を見る限り、すぐに2階に上がって同じことをしそうだ。

 まあ、あいつに模した怪物らしく大雑把で部屋の中を詳しく調べてなかった。


『がーちゃん、ぬえちゃん、今日もよろしくね。あなただけが信用できる友だち』


 詩織は3階。ぬいぐるみを置く場所を探しているのか。

 こいつも部屋を探索中か。照よりも几帳面で隈なく辺りを見回していた。


『今日こそです。今日こそ道也先輩に……照先輩にも負けない料理を……』


 若菜は1階の厨房で料理中。

 鍋に浮かんだ代物は……考えたくねぇ。気持ちが悪くなるだけだ。


『……あぁ……あぁ……あぁ……あぁ……あぁ……』


 相変わらず鈴はゲーム中。だけど、ちょっと様子がおかしいような。


『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているの。応援してるわ、道也くん』


 カメラ目線で嫌な笑みを浮かべる、ゆのねぇ。これで最後。

 ひとまず、すぐに行動する必要がないことに救われたと一緒に。部屋を出る前に予想したアイツラの行動パターンは合ってたみたいだな。

 

 しかし。これから本当にどうしようかな。

 時間は12時半。どうやら時間の経過は現実よりも早いみたいだ。

 だから6時間丸々逃げ回るわけではない。でも、襲われるかもしれない恐怖と隣り合わせの鬼ごっこ、体感的にはとんでもなく遅いと感じた。

 ……疲れた、休みたい。入口に近い椅子に腰かけ、寄りかかって休憩した。

 手足を動かさないことで余計なことを考えて、首を振って忘れようとする。時間が過ぎ去るのを待ちながら、それを何度か繰り返してた時。


『おーい、道也~。出ておいで~!』


 足音と照の声。……近い、嘘だろ、いつの間に2階に来てたんだ!?

 どうにかしようと部屋を見回した。咄嗟に目に入ったのは……クローゼット。急いで中に入ると、ほんの直後に扉が開いた音がした。

 

『あれ~。この部屋も居ない。他の階に行っちゃったのかな』


 そして、部屋を何歩か歩いた音の後、扉が閉まる音がした。

 ……良かった、照で。もし来たのが几帳面な詩織や匂いが分かる若菜だったら、俺は袋の鼠になってたな。


「……あれ」


 ――それも束の間、俺の視界がチカチカと点滅し始める。

 何が起こったのかを考えるより先に、周りは暗闇に包まれたのだった。

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