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ジャガンナンド~強くあるために必要な、ほんのいくつかのこと~  作者: 神堂 劾
強くあるために必要な、ほんのいくつかのこと
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男闘呼組の激闘

 かつて天道乱世と興猫が闘った地下闘技場――。


「ちぃっ……!」


 我道が乱獣配下、黒服の攻撃をどうにか凌ぎ切る。


 ここ地下闘技場は男闘呼組配下が立てこもる拠点となっていた。


 闘技場の運営は本来は頼成配下、チーム乱獣によるものだったが……。


 ここで数多の激闘を見せ、観客を沸かせてきた闘士たち……興猫、そして我道をはじめ男闘呼組のメンバー。彼らの戦いにチームの垣根を超えて心酔した者たちの手引もあり、我道らはここに身を隠し、反撃の準備を整えることができたのだ。


 当初は頼成もまさか自らの運営する施設に我道らが隠れているとは夢にも思わなかったようだが……。


「苦戦してるな、我道の旦那ッ!」


「ああ、ブラッド。お前もな」


 我道に尚も仕掛けてこようとする黒服を牽制し、その背後を守るように立つブラッド。


 こうして頼成に気づかれた今、闘技場には無数の『黒服』が押し寄せてきていた。


「ヘッ。この程度の傷、ダメージとも思っちゃないけどな」


「ああ。むしろたまには傷でも受けておかんと、皮膚がなまるな」


「違いねぇッ!」


 ブラッドの豪腕が黒服二人をまとめて薙ぎ払う。


「しかし部下の被害は馬鹿にならんな……」


「ああ。入り口を守ってた奴らは、もう引かせた。残りの手勢……ジャドと幽玄のじいさんの私兵を合わせても、これじゃギリギリだ」


「どっちこっち、ここに潜んでるのがバレた以上どっかに逃げ出すって目はねぇんだ。気合で押し返すぞ」


「だよなぁ……。さすがに山か森かに引っ込むのは性に合わねぇ」


 そのとき――。


「……どのみち……それは不可能だ……」


 二人のすぐ側にジャドが突然に姿を現す。


「おお、どうだった?」


「……各施設には……既に頼成の手が。加えて……各エリアに続く関所も……頼成配下で一杯だ……」


「ちっ。抜け目ねぇなぁ、オイ」


「現状……我々の拠点は……こことパンクラス所有の秘密地下練習場……。あとは……少数単位が潜伏できる場所のみ……」


「なるほどねぇ……文字通り、最後の砦、ってか」


「そういうことだ。もっとも、篭城というのも、それはそれで帝王としちゃ、いただけねぇが」


「ヘヘッ。なぁに、男闘呼組旗揚げの時に比べりゃ、こんな劣勢――」


 言いかけた所で、地下への入り口からは更に大量の黒服が押し寄せてくる。


「……まだ増えやがるか」


「ブラッド……こんな劣勢……なんだ……?」


「ジャド、お前も相変わらず可愛くねぇな」


「愚痴ってるヒマはくれねぇみたいだぜ……」


 黒服は他の男闘呼組無名生徒には目もくれず、まっすぐに我道らを狙ってきていた。


「ちっ! 来るか!」


 ブラッドが身構えたその刹那――。


「…………!?」


 無数の爆発が黒服たちを吹き飛ばす。


「な、なんだッ!?」


「来たか……!」


 我道が立ち込める爆煙の向こうに目を向けると……。


「……!!」


 爆発の余波で混乱している黒服の体が、次々と鋭利な刃物で切り裂かれていく。


 その白刃の煌めきが黒煙の中をくぐり、我道らの側までたどり着いてみれば……。


「生きてるかいッ! あんたらッ!」


「おお、来たか、興猫の嬢ちゃんッ!」


「遅れて悪かったね」


「あのちびすけはどうした?」


「ああ、茂姫なら晴海センセーのトコにね」


「真島の方はどうだったい、嬢ちゃん」


「とりあえず練習場は破棄! おっつけこっちと合流するわ」


「そうかい。さすが嬢ちゃんの手引きだな。これで……」


「ああ、うまくすりゃ、連中を挟撃できる」


「……それまで……こちらが持てば……という前提だが……」


「嫌なこと言いやがる」


「もたせるよ、任せてッ!」


 興猫が爆発の衝撃を乗り切った黒服たちが迫ってくる前に立つ。


「伊達に……隠してあったパーツを取りにいってきたんじゃないんだ! 悪いけど……当たると痛いじゃ済まないよッ!!」


 興猫の上腕、下腕、そして脚部のそこかしこに設置されたハッチが展開し、無数の小型弾頭が姿を現す。


「お、おいっ!?」


「伏せてッ!」


 ドドド……と、爆音を上げて一斉に放たれる小型ミサイル。


「お、おわっ……!」


「……!」


 発射のバックファイアに焼かれそうになり、ブラッドとジャドが慌てて後退する。


「まだかッ……!」


 ミサイルが放たれ、次々と黒服たちを吹き飛ばしていくその瞬間には、既に興猫の視線は入り口に押し寄せる更なる増援の姿を捉えていた。


「コイツは……オマケだよッ!」


 腹部が展開し、一回り大型の弾頭が姿を現す。


「頼成ンとこまで、吹っ飛んで帰りなッ!」


 射出された弾頭は空中で展開し、黒服が大挙する入り口近辺に着弾した。


 ドワッ! ひときわ激しい爆発の後、入り口は半ば崩壊し、それ以上の侵入を結果的に阻んだ。


「げほっ……! げほっ……! ちょ……とんでもねぇな、相変わらず……嬢は……」


「あ、ああ……。加減ってモンがねぇな」


「言ってる場合? あたしはアンタたちみたいに、マトモに闘いとかする主義じゃないのッ! なまじじゃないんだ、なまじじゃッ!」


「ま、まぁ……状況が状況だがなぁ……」


「……しかし、これで……」


 とりあえずの侵入は阻めたようには見える。すぐに崩れた入り口の向こうで動きが見えないのも、今ので黒服もひとまず尽きたのでは、と考えるのが普通だ。


 しばらく休息が取れるか……と思うのも無理はない。


「ううん……!」


 しかし、興猫は一向に緊張の色を崩さない。


「なに?」


「問題はこのあと……! ここに来る直前、増援を振り切ってきたんだ。だから、ちょっと遅れたのよね……」


「まさか……!」


「うん……」


 ガガッ! と、掘り返すのも大変そうに見えた入り口のガレキが一撃のもとに吹き飛ばされる。


「……来た……!」


「ちっ……。そういうコト、か……。ついに、俺たちにぶつけてきやがる……!」


 そして、その向こうから現れたのは……たった二人の人影。


「……………………」


「……………………」


「シェリス……!」


「それに……竜崎志摩、か……!」


「そういうこと……!」


「……どうする、大将……!」


「我道……」


「……決まってる。さっきも興猫が言ったろう。加減のできる状況じゃねぇ……!」


「で、でもよ……」


「やるしか……やるしか、ねぇ……!」


 言う、我道も苦渋の表情を隠せない。


「……来る……!」


 シェリス、龍崎……二人が同時に動いた。


「やるしか……ねぇ!」


 覚悟を決めた我道がその身の内で爆発的な『気』を練った――。


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