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ジャガンナンド~強くあるために必要な、ほんのいくつかのこと~  作者: 神堂 劾
強くあるために必要な、ほんのいくつかのこと
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学園制圧

 同刻、男闘呼組本部教室――。


「ぐ……あぁっ……!」


 ブラッドが胸板を真紅の棘に抉られ、壁の端まで吹き飛ばされる。


「……………………」


 それを冷淡な瞳で見つめるのは――シェリス。


「ぐ……。ま、まさか……頼成の術……ここまでのものとは……」


 ジャドが半分断ち割られた仮面の奥で顔を苦痛に歪め、膝をついた。


 仲間相手に加減をしたブラッドと違い、彼は本気で仕留める威力で技を放った筈だ。


 それをいとも容易く躱され痛恨のカウンターを当てられた衝撃は大きい。


 シェリスは膝をつき倒れる二人にを歯牙にもかけず、そのまま部屋を出ていこうとするが……。


「ま、待て……待つんじゃ、嬢……! その体で……どこへ……!」


 彼女の治療にあたっていた為、不意の初撃を躱すこともままならなかった幽玄がその背に問う。


「……頼成さまの、もとへ……」


「ぐ……う……」


 その言葉を聞いたか聞かないかの段階で、彼もまた意識を失う。


※        ※        ※


 同刻、パンクラス専用練習場――。


「ぐあぁっ!」


 軽々と投げ捨てられた軍馬銃剣の体を真島が受け止める。


「もうよせ……軍馬っ! お前の傷では……」


「だめだ……大将ッ! 俺は……今度こそ……止めなくちゃならねぇっ……!」


「しかし……!」


「好いた女を……二度も守れねぇってな……男が下がるよな……!」


 その前に立ちはだかるは……。


「………………」


 龍崎志摩。


「あの野郎に何をされたかはわからんが……。なぁ……! 志摩よぉっ……!」


 軍馬は走る。


 ピーク時の半分以下の勢いさえ無くなっていながらも、尚……。


※        ※        ※


「な……なんだッ!? なんの爆発……! 何の騒ぎ……ッ!」


 この裏路地さえも揺るがす爆発と、それに伴う大勢の悲鳴……。


 それらは、収まるどころかますます、範囲を大きくしているようだった。


 慌てて聖徒会役員専用の通信機を耳にあてるが、そこからは雑音しか返っては来ない。


「動き出したようだね……」


「まさか……頼成が……!?」


「……彼は彼で自分の役割を果たす。仮に傍目はためからは道化に成り下がろうともね」


「し、しかし……!」


 頼成の決起――。


 即ち、クーデターに関しては、あの政府の鼠に示唆されるまでも、警戒はしていた。


 いたが……。


「こんなにも大規模な……!」


「何事においても一度逃しての二度目の執着は……強いよ。人間というのは、そういうものだろう?」


「………………!」


「きみは――」


「…………!」


 気づいたときには……既に彼の姿は無かった。


『きみは――自分の役割を果たすべきだ――』


 ただ……風の隙間に、彼の声だけが木霊こだましていた。


「わたしの……役割と……!」


 私は僅かに逡巡した後、その面差しを上げた。


 今や聖徒会の副会長、牙鳴遥でしかありえない顔を取り戻しながら。


 しかし、その胸中においては――。


(望むなら――)


(あの人が、望まれるのであれば――)


(私は……望んで、駒になろう……!)



※        ※        ※


 ほぼ同刻、聖徒会執務司令室――。


「……制圧率、4割を超えました」


「男闘呼組およびパンクラスの主要施設……沈黙」


「ただし……我道、真島及び主要PGランカーの確保は未達成」


 既にその場はチーム乱獣配下の生徒に制圧されていた。


 かつて牙鳴遥が鎮座した指揮席に居るのは……頼成直人。


「ああ。とりあえずPGの女は確保、男は……そうだな、どっか適当なとこに閉じ込めとけ」


 学園内に内乱等の危機が発生した際に用いられる、この学園中央執務司令室は皮肉にも今やクーデターを起こした頼成が全てを掌握していた。


「コントロール用のナノマシンにも限りがあるからな……野郎に使うほど、贅沢じゃねぇぜ」


「天道組、Zクラス寮、制圧」


「……どうだ?」


「天道乱世、ほか……メンバーは確認できず」


「だろうな……。あいつのID反応がデコイだってのは、判りきってたが……」


 半ば予想はしていたこと。それでも苛立ちは隠せない。


「ちっ……。こいつは……いくらか長丁場になりかねねぇな……」


 頼成は椅子から立ち上がり、学園のネットワーク及び各設備を操作する配下に指示する。


「一般生徒や教職員には、緘口令かんこうれいを敷け。ここで騒ぎを漏らして政府の介入でもありゃ、面倒だ」


 配下はそれぞれ……完全に準備ができていた様子で手際よく命令を遂行すべく行動を起こしていく。


「少なくとも……残る聖徒会の副会長、そして天道の野郎をはじめ、団体の頭連中は抑えなくちゃなんねぇからな……」


 再び荒々しく椅子に腰掛けながら……。


「命令を繰り返すぞ! いいか、今日は……『何もない至って平穏な一日だった』、だ! ゴミどもに、そう日記につけとくよう、徹底しやがれっ!」

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