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牙鳴姉妹

「そ、それでは失礼いたします。…………ほら、お前も頭を下げろっ!」


 聖徒会室を出る直前、椿芽に頭を押さえつけられ、強引に礼をさせられる。


「何故だ? 主犯格はお前だろ」


「しゅ、主犯とか言うなぁっ!」


 部屋の奥で、今度は明確に呆れた顔を見せつつ、遙が手を払うように振る。


 とっとと行け、ということだろう。


「失礼いたしました……」


 でかい割にやたら静かな音で聖徒会室の扉が閉まる。


 廊下にぽつねんと立ち尽くすのは、中途半端に礼をしたままのカタチな俺と椿芽の二人。


「……お前というヤツはっ……!」


「なんで怒る」


「そもそもアレはお前を助けに入ったからだろうがっ! それを自分はまるで関係ないような顔をして……」


「……下手に庇えば、それはそれで怒るだろ、お前は」


「何も言わないよりはマシだっ!」


 実際のところ聖徒会副会長の取調べ、などというものは聞こえこそ大仰にも感じられるが……。


 実際のところ、行われたのは本当に事情聴取というだけのことだった。


 時間にして小一時間。とりあえず初日から授業を全部潰してしまう、などということにはならないで済みそうだ。


 ただ――。


「どのみち賠償責任とやらは、俺にも平等に架せられたんだ。結果的には同じだ」


「……軽く言うがな、お前……」


 椿芽は頭を抱える。


 まぁ……そういうこと、だ。


 きっちり責任も取らされつつなのだから、そう厳しい拘束を受けても割りに合わない。


「あらあら。今度は廊下で痴話喧嘩?」


 声に振り返れば、目の前には、スーツを着た妙齢の女性が俺たちを呆れたような笑みで見ていた。


「あんまり授業をすっぽかされると……今度は私がお小言を言わなくてはならないのだけど?」


「あんたは?」


「ら、乱世……っ!」


 椿芽が俺をいさめるように言う。


 少なくとも生徒、という年齢には見えない以上、俺にも目の前の人がどういう立場であるかくらいは判るものだが……。


沖野晴海おきの はるみ……一応、あなたたち二人の配置されるクラスの担任ということになるのだけど?」


 まぁ……そういう事だ。


「聖徒会から連絡を受けて、一応あなたたちを迎えに来たのよ? 迷子になられても困るでしょう? ここ、広いから……」


 確かに。


 事実、今も聴取とは言いつつも拘束されていた時間は校門からここまでの移動時間に大半が費やされたくらいだ。


「そ、それは……わざわざすみません、先生」


 椿芽が恐縮して頭を下げる。


「確かにそれは在り難いな、椿芽。タダでも俺たちはここから今通った道をたどって校門まで戻れるかすらも怪しい」


「一緒にするな。方向音痴はお前だけだ、ばかもん」


「それは認める」


「認めるのか……」


「しかしお前だって、流石に今の道程を辿るのには自信ないだろう」


「う……。そ、それは……」


「ふふ……。まぁ続きは歩きながらにしましょう? 本当に午前の授業が終わってしまうわ?」


「は、はい……っ」


 俺と椿芽は晴海先生の後に続いて配属される教室に向かっていった。


※        ※        ※


 二人の去った生徒会室――。


 ゆらり……と個人に充てがわれた私室から現れる牙鳴円。



「……如何いかがなさいましたか……? お姉様」


「………………」


 小さく、わずかに遥を見る。それだけで見られた遥はびくっ、と滑稽なまでに背筋を震わせた。


「し……失礼いたしましたっ! 公務中は会長とお呼びせねばならないところを……お、お許しを……御君よ……」


「……………い」


「はいっ……! ご寛容なお言葉……感激の極みに……」


うん…………其依それよりも……」


「な、なにか……?」


「…………………天道てんどぉ……乱世らんせぇ……?」


「は……? 先刻のあの男が……何か……?」


「………………い……♪」


「あの……男が……? しかし……!」


「……………………ん?」


「い、いえ……」


 円が小さく眉を寄せただけの事で、遥はまるで今にも処刑を待つ囚人のような顔になる。


「………………善きに……計らえ……」


「は……はいっ……!」


「すぐに……調査をするよう、命じておきます故に……」


「………………ん♪」



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