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男闘呼組、そして頼成直人

 我道に連れられて入ったのは俺たちの通う校舎に近い、八王子学園市街地内の店。


 この学園に来て、初めて市街地の店に入ったが……いわゆる高級レストランと称して良いレベルの店だったろう。


 不確定にしか言えないのは、とりあえず俺も椿芽も、元々住んでいた里の生活ではそんな店には入ったこともなかったし……。


 というかそもそもそういう店そのものが無かったので、知識でしかものを言うことができない。


 俺も椿芽も、おおよそ生まれて始めて入店するレストランなるものにいたく感動を覚えていたと思うが――。


「ふはー。食った食ったもき~」


「行儀が悪いぞ…………げふっ」


「……お前の方こそな」


 ……その感動はおおよそ10分、料理が運ばれ始めてくるまでの時間にすっかり飽きていた。


 あとはもう俺も含めて目の前の皿を綺麗にすることしか眼中になかった。


「……遠慮すんなって言ったのは俺だが、本当に遠慮しねーのな、お前ら……」


 うず高く積み上げられたカラの皿の向こうで、我道が流石に呆れた顔をしていた。


「好意は素直に受け取る性格でな」


「俺は鳳凰院にのみ言ったつもりだったんだがな。つーか……そこの報道部のちんまい生き物っ! お前は自分のポイントがあんだろーよ!」


「天道組はメンバー一蓮托生もき」


「あ、あの……やっぱり私までご一緒したのはご迷惑だったでしょうか……」


 折角だから、とわざわざ呼び出して誘った羽多野が、ちょっと困ったような顔をする。


「いやいや。羽多野……勇だったっけか? 女性は別だ。なんならもっと食ったっていいんだぜ?」


「は、はぁ……ありがとうございます。でも……私はこれで満腹です」


「……本当にわかりやすく、男女で反応が違うものだな」


「そりゃまぁ、当然だ。この世の女はいずれ全て俺のモノになる予定だからな」


 我道は耳打ちするように言ってきた。


「そりゃ……大層な野望だな」


「だろう?」


「なにをこそこそ話している?」


「いや、こいつがな……」


「いやいや、なんでもねーって。ちょっとした男同士の話し! な、天道くーん!」


 いきなりガシッと肩を組むようにしてみせる。というか肩より頚椎を軽く締められてる感はあるが。


「……だ、そうだ」


「ふむ……?」


 唐突に妙に仲良しになった(ように見える)俺たち二人の様子に、それはそれで怪訝そうな顔をする椿芽だが。


「それより……さっきの続きだ」


 我道はわざとらしく咳払いをして、続ける。


「今やこの学園は、台頭した4つの派閥があまりに拮抗しちまって、膠着状態ってコトは理解したな?」


「そこだ。私はそこが少々気になっていた。先刻ののパンクラスと怒黒組……」


「そして我道、あんたの率いる男闘呼組。これで現状、3つだ」


「ああ。それに弐年の頼成直人らんじょう なおとの率いる、頼成組……通称・乱獣。それを加えて4つだ」


「頼成……?」


「わたし……あの人、嫌いです……」


 頼成の名前を聞いた羽多野が、露骨に嫌な顔をする。


「羽多野は頼成直人を知っているのか?」


「………………ええ」


「まぁなぁ。特に女子はおしなべてアイツの事が苦手だろうな」


「どういうことだ?」


「あいつの女癖の悪さは、学園じゃ有名だ」


「……あんたが言うか、それを」


「冗談じゃねぇ。あんなのと一緒にすんな」


 我道は今までとは一転、本気の嫌悪感を露にして、吐き捨てる。


「俺はあくまで純粋に女が好きなだけだ。あの野郎のように、女を道具かコレクションかなんかのように見てるヤツとは違う」


「ふむ……」


 女好き、というくくりの中で、そこにそれ程の違いがあるのか……という揶揄はできなくもないが、この我道の表情から察すれば、確実に明確な線引があるのだろう。


 だから俺は野暮なツッコミは――。


「で、でも……。わたしたち一般生徒の間では……我道さんも……その……」


「似たような評価、か。そうだな。私にも聞いた限りでは区別がつかん」


「て、手厳しいなぁオイ……」


 ……野暮は避けたつもりだったのだが、女性陣が忌憚なくツッコんでしまっていた。


「そ、そりゃまぁ……心当たりがねーってまで言うつもりはねーが……」


「や、やっぱり……!」


「ちょ、ちょっと待て! 早まるな。俺はあくまで……相手と合意があればこそだ! 無理やりよからぬことをした覚えはねーんだって!」


「……やはり下種ではないか」


「ぐ、ぐぅ……。キツいねぇ……でもまぁ、そういう所も悪かねぇが……」


「その頼成と言うのは――」


 俺が聞き返そうとしたところで……。


「へぇ……俺の噂か?」


 俺たちのテーブルに歩み寄ってきた男が、ニヤつきながら口を挟んでくる。


 見た感じでは、体格は俺と同じか少し大きいくらいか。


 過不足なくついた筋肉はそれなりのものだが……なぜか全体の印象が細く見えてしまう。


 おそらくは身長の割に妙に長い手足の印象でそう見えているだけなのかもしれない。


「頼成……てめぇ……!」


 こいつが……その、頼成?


 身体的には先の印象の通り、可もなく不可もないという風にも見えるが……。


 全身にまとった不敵な……独特な雰囲気は、決して舐めてかかってはいけないという本能的な警告を俺に与えてきている。


「男闘呼組も相当、ジリ貧か? 新顔をボス自らが勧誘とはねぇ……」


「ジリ貧じゃねぇ。勧誘でもねぇ」


「そうかい?」


 頼成は、我道を無視して椿芽や羽多野の方に歩み寄った。


「さすが我道が目をつけるだけはある。いい牝だ」


 二人に顔を寄せるようにして品定めをするようにねめつける。


「…………!」


「ひっ……!」


 椿芽の鍔が、何時になく激しく鳴り、羽多野は怯えて身を強張らせた。


「どうだい? 我道ンとこなんざより、俺の乱獣に来ねぇか? クク……いい目を見せてやるぜ? どっちも垢抜けちゃあいないが、磨きゃ、うちのハーレムでも上位に来れそうだ」


 刹那――。


「お断りだ」


 目にも留まらぬ速さで抜き放たれた椿芽の愛刀・小豆長光あずきながまさの切っ先が、頼成の喉元に突きつけられていた。


「ほう……」


 頼成はそれを気に留めることもなく、相変わらず粘ついた視線を投げつけ続けている。


「……………………」


 切っ先が皮膚につぷり、と刺さり頼成の首元に血が一筋、零れた。


「なるほどねぇ……。こっちの牝はまだまだ調教が必要なようだな」


「………………!」


 頼成の右腕が僅かに動いた。


 それはあまりに僅かな挙動であったものの、俺の全身を粟立たせるほどの『何か』を感じさせていた。


(椿芽……!)


 椿芽は己の優位を過信したか、それとも頭に血が上っているのか……その挙動に気付いていない。


 俺が動こうとしたとき……。


「やめろ。クソ頼成」


「………………」


 我道の声に……頼成は敏感に動きを止める。


「この連中は少なくとも今は俺の客人だ。イミ、判るよな?」


「ああ……」


 頼成は……ゆらり、と我道に向き直る。


 その間も、椿芽はまだ抜刀したまま警戒を解いてはいない。


「つまり……この場で、てめぇをぶちのめして……お持ち帰りしろ、ってコトだろ?」



「できるかい? コソコソ逃げ隠れしてる、お前なんかが」


「できるかもなぁ? 今のこの……お前とサシの状況ならな」


 対峙する二人。


 周囲もその空気を察したのか……先ほどまでの喧騒を忘れたかのように、貼り詰めたような静寂が広がっている。


 そこに――。


:「ガドー!」


 レストランの入り口から一直線に俺たちのテーブルへと駆け込んでくる一団がある。



「頼成、てめぇ……ウチのボスにナニ、ガンくれてやがる、あァ?」


「返答次第じゃ容赦しないよッ!」


 そのまま入ってきた4人の男女は、我道を守るように頼成の前にたちはだかった。


「やれやれ……一人で行動なされるからこんなことになるんじゃ」


「いつも言ってんだろ、あんま群れるのは苦手なんだよ」


「……………………」


「……睨むなよ、ジャド……」


 察するに我道の配下……男闘呼組の幹部か何かか。


「ちっ……」


 流石に不利と見たか頼成は憎憎しげに舌打ちすると、それまで纏っていた殺気を飲み込んだ。


「相変わらず……馴れ合いがお好きなようだな、我道」


「……不本意ながら、な」


「アタシたちとガドーは、信頼と愛情で繋がってんだよ! あんたみたいなはぐれモンとは違うのさ」


「信頼か愛情だかは知らねーけど、少なくとも仲間意識ってのはあるってこった」


「そういうことじゃのう。少なくとも、ワシらの頭越しでの挑戦は避けてもらいたいもんじゃな」


「………………」


 4人は数の威勢で言っているとも思えない。ともすれば一人でも頼成に向かっていきそうな剣幕がある。


「ふん……」


 頼成は我道らを、そして俺立ちを一瞥するようにしてから……。


「まぁ……気が向いたら、ウチにきな」


 もう一度、椿芽と羽多野をねめつけて、そう言った。


「冗談は、その笑えない顔だけにしておけ」


「ふン、望んで来るほうが、まだしも幸せだと思うがな……」


 言って……踵を返し、レストランから出て行った。


「椿芽……」


「ああ。大事ない。確かにアレは……我道などとは比較にならない下種だ」


「………………」


 やはり椿芽はあの、頼成の殺気に気付いていなかったか……。


 当面、こいつの課題はこの頭に血の昇りやすい性格だな。


「悪ぃな、話の途中でよ」


 我道は改めて座りなおし、例の4人はそれに付き従うように立っている。


「先に紹介するべきだな。こいつらがウチの……まぁ、いわゆる四天王ってヤツだ」


「ほう……」


 確かに彼らの事も十分に興味がある。


「まずはこいつが……」


 我道が傍らでくっつくようにしている女を示そうとする前に……。


「アタシ、シェリス! ガドーの愛人、第一号♪」


 椿芽や羽多野と同年代と思しき、金髪をショートにまとめた女が我道の首元に抱きつくようにしながら言ってのける。


「あ、愛……!?」


「………………」


 椿芽が絶句し、羽多野が赤面した。


「……俺が紹介する前に喋んなって……」


「やん♪ アタシとガドーの仲じゃない。そんな拗ねないでよぉ」


「それから……お前はいつから、俺の愛人第一号とやらになった」


「えー? 違うの? もしかして……アタシの知らない、第一号が居るの!? そんなヤツいたら、あたし――」


 そこまで言ったところで、彼女の表情が変わった。


「――そいつ、ぶっ殺しちゃうかもよ?」


 まるで肉食獣のような凶悪な笑みに。


(なるほど)


 今の殺気のみで分かったことではないが……この女も一流のファイターである事は知れた。


 スタイルは現状では分からない。無駄な肉がないのを見れば、何らか拳法の類か……。合気や柔術ではなさそうに見える。


「……物騒なコト、言ってんじゃねぇ。そりゃまぁ確かに、お前は俺がこの学園に来ての最初のオンナかもしんねーけど……」


「でしょでしょ? わぁーい、そしたらやっぱりアタシが一号ー♪」


「くっつくな、ハナシが進まねぇ! ええと……そんで、こいつが幽玄ゆうげん。本名は知らねぇ。実年齢も知らねぇ」


「ほっほっほ。よろしくのう」


「は、はぁ……」


 椿芽が絶句するのも無理はない。


 長く蓄えた白髪と髭。顔の大部分はそれに隠され表情さえ見えない。少し腰も曲がってるように見えるが……。


「……教員とか講師とかではないのか」


「……こう見えて、このジジィはれっきとした学園の生徒だよ」


「そ、そうなのか……」


「ほっほっほ。ついつい居心地が良くてこの歳まで居ついてしまってのう」


「まぁ……この学園は外と違って、トシで進級するモンでもねーからな」


「ああ。そのようだな」


 この学園では、あくまで成績――ポイントのみが全てだ。


 学年は外の基準に合わせて3学年が設定されているものの……それはあくまで強さの階級に近しい。


 一年を通して通算し、進級条件を満たしていれば『進級ができる』。


 成績が伸び悩めば落第することもあるが……。


 同時に自己判断でまだ実力が満ちていないとするなら、望んで同じ学年に留まることもできるという。


 しかし……。


「ほっほっほ」


 流石にこの、完全に老人にしか見えない者まで『生徒』などと言われるとなぁ……。


(しかし……)


 呆れはした。したが……それでも俺がこの老人を軽く見なかったのは、袖から覗いた節くれた腕……その拳に尋常ではない拳胼胝けんだこを垣間見たせいだ。


「……で、こいつがブラッド。元はパンクラスだったんだがな」


「へへ……我道のダンナの強さに惹かれてね。今はこうして四天王なんて呼ばれちまってる」


 爽やかに手を差し出してくる。


 レスリング畑らしく、イメージは軍馬銃剣に近いものがあるが、ヤツはどちらかと言えば競技としての『レスリング』だ。


 このブラッドという男は、普段からそうしているのか顔の派手なメイクも手伝って『プロレス』的なイメージが強い。


「ああ……よろしく」


 それにしてもこの学園で握手などと……と思いつつも、それを握り返した。


「ほー……」


「なんだ?」


「あんた……そこそこやるねぇ?」


「社交辞令としても……悪い気はしないな」


「なるほど……ウチのボスが欲しがるワケだ。俺はてっきり、そっちのお嬢さんら狙いかと思ってた」


「……我道……貴様もやはり……」


「……………………」


 例のごとく椿芽が睨み、羽多野が引く。


「ち、違うっての! ブラッド、おめぇ……余計なこと言ってんじゃねぇ!」


「へへ……まんざら、ねーってワケでもないだろに」


「そうなの? ガドー……。やーん、アタシってモノがありながらぁっ!」


「だから……違うって言ってんだろ! ハナシが進まねぇっ!」


「……大変だな、なんだか」


「憐れむように見るな。そんで、こいつがジャド。こそこそ動くのが得意でな、試合よりそっち方向で動いてもらったりしてる」


「……………………」


 能面じみたマスクを付けた男は、俺達を一通り見回すようにしてから小さく一礼のようにしてみせた。


「悪ぃな、愛想なくてよ」


「……………………」


 この仮面の男だけは正直、得体が知れなかった。


 実のところ、先刻頼成と対峙していた時も、この男だけは『気』を……殺気を入れていないままだった。


 おそらくは、目の前の頼成という脅威よりも、まだ素性が知れていなかった俺たちに手の内を見せない事を警戒していたせいだろう。


「んでハナシの続き、だ。タイミングいいのか悪いのか、これで頼成ってのがどういうヤツかも、ちったぁ判ったな」


「ああ。大体、な」


「4つの派閥は拮抗して、そうそう大きな変動はありえなくなっちまってる。だから結局、下同士の戦いになっちまって、さっきみたいな面白くもねぇ戦いも起きる」


「そういう状況があっての、つまらん……か」


「ああ。俺としちゃ、やっぱり戦いってぇのは一対一だと思ってる」


「ほう」


「意外そうな顔すんなよ。別にな、正々堂々とかってんじゃなく……一人の相手を一人の圧倒的な力でねじ伏せることが、シンプルと思ってるだけだ」


「それは分からなくもないな」


「そうやって配下に置いたヤツは、そうそう簡単には裏切らねぇ。自分の持つ圧倒的な力こそが、この学園における一番重要なことだって俺は思うワケだ」


「なるほどな……」


 それはやはり、一面で真理なのだろう。


 人を多く集め、個々に役割を与える……組織というものの強さもそれはそれで強固であろうし、何らかの利益で従わせることもそれはそれで正しいとは思う。


 しかし……純粋な『個』の力そのもので屈服させるということは、単なる恐怖政治とは違う結びつきを持たせることもある。


 彼らの中で言えば、ブラッドのように素直に心酔する者も出てくるわけだ。


「もっとも少なくとも俺の男闘呼組じゃ、下克上もアリってことになってる。こいつらの挑戦でも、俺はいつだって受ける気がある」


「ああ。いずれまた挑戦させてもらうぜ、ダンナ」


「ほっほっほ。この老体には、流石にちと難しいことじゃがのう」


「あたしはぁ……ボスとかトップとかそういうのどうでもいいけど……ガドーに勝てたら、なんでも言うこと聞いてくれるってゆーし♪」


「ま、まぁ……そういう約束ではあったな……」


「うふふ♪ いつもは責められてばっかだけどぉ……たまにはアタシが責めるのもいいかなーとか楽しみにしてるのー♪」


「………やはり下種か……」


「……………………」


 ……椿芽が睨み、羽多野が引く。


「や、やめろって……! 思いっきり、引かれてんじゃねーか!」


「ちぇー」


「とはいえ……まぁ、こうも派閥が大きくなっちまったら、そうそう大将だけで戦うってのも容易にはできないってワケだ」


「それはそうなのだろうな」


「実際のところ……ここ半年……いや、一年か? そのくらいの間、俺が面白ぇと思った戦いなんざ、数回あったか無いかだ」


「そこまでの膠着か……」


「この学園にはな、そのバランスを崩す……新しい力ってのが必要なんだ」


「新しい……力、か」


「そこで、だ」


 我道はそこでわざと言葉を切った。


「俺達の手伝いをやってもらえねぇか?」


「勧誘じゃないんじゃなかったのか?」


「勧誘じゃねぇ。あくまで手伝いだ。都合のいいことに、お前さんらは食うにも困ってる有様だったしな」


「好きで困ってるわけではない」


 椿芽が憮然として言う。


「そりゃそうだろ。だから……手伝いだ。褒美は弾むぜ」


「まずはどういった類の仕事か聞かずには答えられないな。どんな手伝い、だ?」


「ちょっとした……モノ探し、だ」


「モノ?」


「ああ、実はな……」


「……我道様。それは……」


 我道が言いかけた所を、例の仮面の男――ジャドが止めた。


「……っと、そうか。悪いがココじゃ話せねぇ。いや、あくまで請けてくれるって約束を得るまでは……ちょっとな」


「ふむ……」


「乱世……」


 椿芽が小さく合図じみた声を送ってくる。


「ああ」


 判っている……。


 どう考えても、危険な匂いがする、ということだろう。


 しかし現在の状況であれば、多少の危険は承知でやっていかなくてはならないのではないだろうか。


 もっともそれに非戦闘員である羽多野や茂姫などを巻き込むことには、抵抗がある。


「……返答はすぐでなくてはダメか?」


「そうさな……」


 我道は再び俺達全員を見回すようにしてから……。


「……いや。その気になったら、俺達の組部屋まで来てくれ」


 我道は苦笑いのように言って……席を立った。


「……いやにあっさり引き下がるな」


「強引が過ぎて、お嬢さんがたに嫌われるのもイヤなんでな」


「……………………」


 我道が再び砕けた調子に戻って言っても、やはり椿芽などは緊張を解かない。


「そんじゃ……気が向いたら、な」


「ああ」


 そう言い残して我道は四天王と共に、食堂を出て行った。



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