変態が4匹
「アアアァァァ!!!」
俺が奇声を発すると皆が俺を見た。
しかし、思い出した。
全てを思い出したのだ。
エリーのパンツのおかげだ。
俺にとって命より大切な事を。
「何だてめぇ!」
降り下ろされる拳を掴んで捻り上げる。
『ゴキ!』
と音がしてそいつの腕が『ぷらん』とぶら下がる。
「痛って~!!」
大声を出すので、そいつの顎を拳の小指側で弾くと、
顎も『ぷらん』とぶら下がって黙った。
エリーの方へと歩く。
エリーのパンツは可愛い白のカボチャパンツだ。
もう一人俺に向かって襲い掛かってくるが、ヒョイと避けて足を引っ掛けてから、みぞおちに拳を叩き込む。
胃にまで拳がめり込むと、
『グボォ』
と、ゲロを吐いて倒れた。
改めてエリーの方へと歩くと、
「お前は、何なんだよ!!」
と最初に俺を殴った奴が言った。
そう言われると、『変態だ』と答えるのが俺の流儀(ネット上限定)だが。今は妹も居る、止めておこう。
そいつの手には剣が握られていた。
俺も右手の触媒に魔力を込めて、異空間から剣を出す。
そいつが剣を持っていない手を持ち上げて俺に向けようとする時、
一気に肉薄して、持ち上げた手にある触媒を指ごと切り落とす!
『ギャ!』
と、悲鳴が上がる。
振り下ろした剣を再び振り上げて、
まだ剣を握っている手を切り落とそうとするが、
そいつの手から剣がポロリと落ちたのを見て、
一応剣の軌道を変える。
「チッ!」
もう少しで両手の指を切り落としてやったのにな。
剣を再び異空間に仕舞って、エリーへと近付いた。
「エリー?!大丈夫か?」
エリーへと手を伸ばす。
「お兄ちゃん!」
エリーは俺の腕に飛び込んで来た。
俺はエリーを抱き締める。
さりげなくエリーのパンツも触った。
そして、俺は呆然とするクラスメイトを無視して自分の家に向かって歩く。
頭の傷みもすっかり無くなっていた。
今はスッキリしている。
スッキリというか、むしろ、ムッツリというか。
ずっと足りないと思っていた物の正体が分かった。
俺は変態だったのだ。
パンツを被って喜ぶ変態だったのだ。
今の俺は完全に前世での記憶を取り戻していた。
そうだ、
俺は前世で女性用下着を頭に被っている所を母親に見られて自殺したのだ。
そして、神と名乗る存在に出逢い、
スッゲーむかつく思いをしてから転生したのだ。
神は転生する前に次はイケメンで天才にしてやると言っていたが無事にイケメンで天才に転生できたらしい。
クラスメイトにはバカにされているが、かなり良いルックスだと思う。
頭も良いしな。
しかし、あの駄神はいつか殴ってやらなきゃな。
そして、前世での記憶を取り戻した俺は次に取るべき行動が分かっていた。
家に戻るとお母さんが酷く驚いた。
そりゃそうだ、エリーはスカートを履いて無いし、俺は殴られて蹴られてボロボロだからな。
「ど!どうしたの?!」
「俺のクラスメイトにやられた」
「な?!なんで!なんでそんな事を!!」
「平民の俺が学校に通うのが気にくわないんだよ」
「そ、そんな、、、」
お母さんは目に涙を貯めている。
「実は今までもずっと苛められていた、けどもうこれ以上我慢はしない」
「いいわ、学校は辞めなさい!ごめんね、気付いてあげれなくて」
そう言ってお母さんは泣き出した。
「いや、一応飛び級で卒業出来ないか校長先生に相談してみるよ」
「そ、そんな事出来るの?」
「この学校で得る知識はもう全て入ってるからね」
俺は自分の頭を『トントン』と叩きながら言った。
「レオの頭が良いのは分かってはあるけど、、、。大丈夫なの?」
お母さんがそう言って、心配そうに俺の顔を見てくる。
「レオンハルトの言うことが本当なら大丈夫だ」
入り口を見るとフェンが立っていた。
あっ。
お前の事忘れてたよ。
「それに、今回の事を誰かに説明する時は、その内容を俺が全面的に支持するよ。リンチにあったのはレオンハルト。
お前だとな」
フェンも顔がボコボコになっている。
「あなたまで!大丈夫なの?」
お母さんがフェンの心配をした。
「フェンは、僕を庇って殴られたんだよ」
「え!そうなの!!ありがと!」
お母さんはフェンの手を握って言った。
「い、いえ!」
フェンは驚いて、後退りしている。
「ごめんね!ありがとね!」
お母さんはフェンを抱き締めた。
フェンは慌てている、お母さんは美人だからな。
俺も自分の母親じゃあ無ければパンツの臭いを嗅いでる所だ。
翌日学校に行って校長先生に事情を説明した。
フェンも一緒に居てくれたせいか、校長先生はあっさりと了承した。
そして、必要な試験を全て受けて晴れて俺は学校を卒業した。
ちなみにその卒業に掛かったお金だけど、全部フェンのお父さんが出してくれた。
フェンのお父さんは、フェンが今まで俺を苛めていたのをフェンと一緒に謝ってくれて、俺のお父さんに新しい仕事を紹介してくれた。
フェンはヘイトコントロールをしようとしたようだ。
フェンは皆が俺を苛めようとするのを感じると、誰より先に俺を苛める事で、皆が俺を苛めない様に気を使っていたのだろう。
フェンが俺の机をよく蹴ったが、俺は痛くなんて無かったし、
机を蹴ったフェンの方が痛かったんじゃないか?
そんな事を思った。
それを謝りに来た二人に言うと、
フェンは泣きながら謝った。
『他に良い方法が思い付かなかった』
そうだ。
確かにな、
苛められっ子を庇って、今度は自分が苛められるなんて良く聞く話だ。
それをやれとは俺は言えない。
それから、学校を卒業した俺は働くことにした。
家計を助けなければ。
お父さんの新しい仕事は前の仕事より少し収入が下がるらしい。
しかし、少しだけど退職金制度が有るらしくお父さんとお母さんは狂喜乱舞していた。
本当にフェン様々だ。
でも、早く働いて、剣術の道場にも通いたい。
強くなって迷宮に潜るんだ!
迷宮には古代文明の残した『触媒』が眠ってる。
たくさんの『触媒』をコレクションしたい。
それに、あれもコレクションしなくっちゃな。
アレだよアレ!
転生する時に神は『変態にはなるなよ』と言ったが、神よ!残念だったな!!
ハッハッハ!