変態が2匹
教室のドアを開けると全員の目が僕に向いた。
「おい!相変わらずスカした顔してんなぁ!」
「ほんと、男のくせに、女みたいな顔してさ」
「気持ち悪いんだよ」
教室に入った瞬間、皆に罵倒された。
いつもの事だが心に響く。
僕はこの女みたいなルックスをバカにされていた。
そんなに弱くは無いんだけどな。
いや、弱いか。
魔物相手だとガンガン行けるんだけど、対人の戦闘だと体が萎縮してしまい、上手に立ち回る事が出来なくなってしまう。
先生にも悪い癖だと言われていた。
席に座ると授業の準備をする。
机の上に鉛筆と消ゴム、そしてノートをだした。
俺は人より記憶力が良いらしく、授業の内容は一度聞けば全て暗記することが出来た。
だから本当はこんな物要らないのだけど、記憶力の話になった時にこの事を話したらクラスの皆に気持ち悪いと言われて、それから用意するようにした。
「おい、貧乏人!何処から盗んできたんだ?」
フェンが言った。
フェンは大きな貴族の息子でヒキガエルみたいな顔をしている。
黙っていればかなり愛嬌のある顔だ。
黙ってる所なんて見た事無いけれど。
「黙ってんじゃあねぇよ!貧乏人!」
『ガン!』
フェンが俺の机を蹴った。
と、その時教室に先生が入ってくる。
「フェン!」
と、それを見た先生は怒ってくれるが、フェンは大きな貴族の息子だ。
強くは先生にも言えない。
それでも一応先生の目を気にしたのか、フェンは舌打ちをしながら自分の机に戻った。
僕は、それから始まった授業を一生懸命真面目に聞いてる振りをしながら聞いた。
何故こんなこと教えられなければ皆は分からないのだろう。
何故こんなことを先生は教えるのだろう。
まったく理解出来なかった。
こんな事は教科書を一度読めば分かることだ。
そして僕は図書館でこの学校での6年間で学ぶ内容全てに目を通したしまったのだ。
だから授業が暇で暇で仕方なかった。
「レオンハルト君、ここは分かるかい?」
レオンハルトは俺の正式な名前だ。
家族は『レオ』と呼ぶ。クラスメイトは主に俺の事は『貧乏人』と呼ぶけどね。
「はい」
僕は立ってそう返事をすると、歩いて黒板の前に立って、その答えを書く。
「はい、良くできたな。皆もしっかり予習してこいよ!」
先生がそう言った。
でも予習すると授業がつまらなくなるんだけどね。
そして、フェンがつまらなそうな顔をしている。
『チッ、貧乏人のくせに!』
とか、考えてるんだろうな。
自分の席に戻って座ると、
「調子に乗るんじゃねえぞ」
と後ろの席に座るマーニャが言った。
マーニャも大きな貴族の娘で、成績はこのクラスの中では上の方だ。
でも、僕には三歩ほど及ばない。
当人は頑張って勉強してるらしく、僕の事が許せないらしい。
どうしたら良いのだろう。
わざと間違えれば良いのだろうか?
でもそれは、無理をして学校に入れてくれたお父さんとお母さんに申し訳ない。
もう、6年間の授業の内容は頭に入っているし、これ以上学校に居ても得るものも無いし。
学校なんて辞めてしまいたいのだが、そんな事は両親には言えなかった。
・
レオ君は今日も完璧だった。
凄い!本当にカッコいい!
私なんて一生懸命勉強してもレオ君の足下止まりで、それ以上の成績にはなかなか成れないのに。
大好きで、尊敬してるのに、
レオ君が席に戻ると、
「調子に乗るんじゃねえぞ!」
と言ってしまった。
本当に自分の事が嫌いになる。
でも、こうしておかないと女子の仲間達に虐められるのだ。
前に、レオ君に告白しようとした女の子がクラスの中の女の子達に虐められて不登校になってしまった事があるのだ。
女子のクラスメイトに対して、
『私はレオ君の事が嫌いです』
ってアピールをしていないと苛められてしまう。
抜け駆け厳禁!
これがこのクラスのルールだ。
でも、この席は特等席だ。
後ろからレオ君を好きなだけ見ていられる。
黒板を見ている振りをして大好きなレオ君の後ろ姿を見つめる。
本当は正面から見たいんだけどな。
正面からレオ君と見つめ合って、、、!
キャー!
ダメだ!恥ずかしくてそんな事出来ない!!
レオ君の顔はとてもカッコ良くって。
恥ずかしすぎるよ。
私はレオ君のお家が貧しいなんて気にしない。
私のお父さんにお願いすれば、レオ君をこの国の重要なポストに付けるなんて簡単だし。
なんだったら、お婿に来て貰えば良い。
ちょっとお金を出せばレオ君のお父さんとお母さんも納得してくれるでしょ。
それでもダメだって言うのなら。
ちょっと、最悪だけど、レオ君のお父さんの仕事を奪えばいい。
レオ君のお父さんは、国から委託されて仕事をしてるんだけど、私のお父さんなら簡単にその仕事の委託先を代える事が出来る。
そうなれば、レオ君のお父さんは、私とレオ君との関係を認めるしかない、
はずだ。
でも、問題は今のレオ君との関係だよ。
どうしよ、このままじゃレオ君に嫌われちゃう。
もっとレオ君と仲良くなりたいのに!
回りが、クラスメイトがそれを許してくれない。
私の家はお金持ちだし、絶対にレオ君も私の事を悪く思わないはずなのに、、、。
たくさん色々買ってあげるのに。
どうしよ。
抜け駆けして告白しようとすれば、クラスメイトから苛められ。
だからといって、このままじゃあレオ君に嫌われる。
じゃあ、全てのクラスメイトを黙らせて、私とレオ君の事を認めさせる事が出来るかと言えば、
それは難しい。
このクラスだけなら何とかなるかもしれないが、他のクラスや、他の学年にもレオ君は人気があるのだ。
あぁ、どうしよ。
レオ君と、レオ君と、、、。
ずっと一緒に居たいのに、ずっとずっと一緒に居たいのに、、、。
クラスメイトが邪魔をする。
他の女共が邪魔をしやがる。
クソ女共め。
そうだ。
何が悪いか分かった、
この環境が悪いんだ。
この学校が悪いんだ。
ちょっと可哀想だけど、レオ君をもっと苛めて、学校を辞めて貰えば良い。
そうしたら私が手を差し伸べて上げれば良い。
家族もバラバラにして、誰も味方が居ない時に手を差しのべれば。
きっとレオ君は喜んで私の手を受け取るに違いない。






