⑤
……午後8時…レストランジョア……
「何だって?!京都に行く?!」
縁の驚きの声がレストラン内に響いた。
他の客が縁と桃子の席を、不機嫌そうな表情で見ている。
他の客の反応に我に帰った縁は、恥ずかしそうに小声で桃子に言った。
「何しに行くの?…まさか…」
桃子は縁の表情を見て言った。
「もちろん取材だ…。次回作の…」
縁は頭を抱えた。
「やっぱり…」
桃子は食事をしながら淡々と言った。
「縁…お前、どうせ夏休みは暇だろ…」
「勝手に決めつけるなっ!…。そうか、俺を京都に連れて行くためにディナーを…」
縁が状況を察した様子を見て、桃子はニヤリとした。
「ふふふ、お前…けっこうな量を食べたな…」
縁は激昂した。
「きたねぇぞっ!食いもんで俺を釣るなんて…」
縁の言葉に、またもや他の客が視線を集める。
桃子は淡々と言った。
「縁…他の客に迷惑だぞ、あまり騒ぐな…」
「あんたが俺を騒がしてんのっ!くそっ!また飯に釣られちまった…」
桃子はニヤニヤしてる。
「お前、頭は良いんだが…何処か抜けてるな…」
「あんただけには言われたくねぇよ…」
桃子は言った。
「まぁいいじゃないか…私のような美人と京都に旅行へ行けるんだぞ…。喜ばれはしても、怒られる理由がわからん」
縁は頭を抱えた。
「どの口が言ってんだ…」
「まぁ、観光のつもりでいい…、今回は神社仏閣の雰囲気を感じ取れればそれでいいんだ」
「だったら一人で行けよ…」
桃子は少し寂しそうに言った。
「縁…そう言わないでくれ…。私はお前と京都に行きたいんだ。一人だと寂しいだろ…」
縁がごねたら、桃子が寂しそうにする。これもいつもの光景だ。
縁は観念した。
「わかったよ…。行くよ、もう飯も食っちまったから…」
縁の返事に桃子の表情は一気に明るくなった。
「そうか…行ってくれるか…。お前が一緒だと私も安心だ」
「俺は、あんたと一緒だから不安だ…」
こうして、この奇妙な二人組の京都旅行が決定した。
しかし、この二人組の行く先々では…必ず何かが起こる…。
もちろん、今回も例外では無かった。
この度は『天才・新井場縁の災難』を御閲覧ありがとうございます。
こちらのサイト、小説家になろう様ではPCユーザー様の割合が多いようなので、今作は行を開けずに詰めてみました。
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choiceシリーズに続きこの作品も、展開が遅いかも知れませんが、最後までお付き合い頂ければ、幸いです。
陽芹 孝介。




