4.ニート、ダークエルフになる
「ダークエルフといえばエロ可愛い感じの女の子がいいですね。見た目ヒューマンで言うところの10代後半から20代前半くらいで」
清々しい感じでゲスな希望を述べる俺。だがダークエルフはこうでなくてはいけないのだ。
「え? 女の子がいいの?」
「はい。肉感溢れるワガママボディで健康的な褐色肌眩しい女の子しか認めません。なお、巨乳でお願いします」
女神様は何を言っているのだ? ダークエルフに他の選択肢はないでしょ。
「まあ公平の希望なら張り切ってエロ可愛い感じのワガママボディ創るわよー」
東屋から近くにあった祭壇のような場所に移動し、女神様が両手を上げて瞑想しはじめる。
すると祭壇上に光が集まり、うっすらと人型が形作られていく。
体感時間で約10秒程、光が収まると祭壇上に褐色の眩しい仰向けの女の子が現れた。裸で。
「うぉう!」
思わず変な声を上げ、慌てて後ろを向く俺。ちょ、不意打ちは勘弁だぜ。ちらっと見た感じでは確かに健康的褐色ワガママボディだった。破壊力高いぜ。
しかし死んだからか不思議とリビドー関係の感情は湧いてこないな。でもエロは正義だ。
「なんでそっぽ向いてるの? 外から体を見られる機会なんてこれが最初で最後なんだからちゃんと見とけば?」
何か引っかかる物言いだが、正直詮索する余裕がないテンパり具合だ。だが一応問おう。
「裸ですけどいいんですか?」
「いいんじゃない、自分で希望した体でしょ?」
「では遠慮なく」
振り向いて視線を向けるとそこに天使がいた。いや厳密には天使じゃ無いけど天使だ。何を言っているのかわからねーが何を言いたいかはわかってもらえるだろ?
まず目に付くのは形よく、容量豊富な胸。推定F。詳しく描写するのは避けるが、美しいと言っておこう。
次に顔。目を閉じているので瞳は見えないが、薄いながらもキリッとした印象を与える眉、長く伸びる睫毛、高すぎ左右の幅も絶妙バランスを保った鼻。小さいが上下に少し厚めの唇。
形は少し面長で少女をようやく脱したオトナの女という印象を受ける。
肩を隠す程度まで伸びている髪。色素が薄く、白にも見える灰青色の髪は磁器の輝きの様だ。
身長は女性にしては高い175cm程度か。足が長く、付くべき所に肉があるのにスマートさが感じられる。
くびれから腰にかけてのラインも美しい。今は見えないが後ろ姿もさぞ魅力溢れるものなことが容易に想像できる。
「どうかしら? 感想は?」
「大変素晴らしゅうございます。感服いたしました。彼女に統治される世界は幸せにつつまれるでしょう」
「ん? まあいいか……。とにかく気に入ってもらえて良かったわ。あとは魔法と魔術の知識刷り込んでおくから、そっちの東屋で待ってて」
ふう。これで俺もお役御免だろう。これからまた地球で生まれ変わるのかな。まあ多少関わったこの世界の行く末も多少気になるが、地球の紛争地域以上に修羅の国っぽいし、これ以上関わるのはNo Thank youだ。女神様も満足してるっぽいし生まれ変わるときは多少の特典は期待したいものだ。
などとこれからの事を考えていると、女神様からお声がかかる。
「お待たせ。準備できたから行きましょうか」
「はあ。どこに行くんですか?」
「あのダークエルフの体だけど?」
「俺の役目もうないですよね?」
「なに言ってるの、これからが本番でしょ」
どうも話が噛み合わない。認識の齟齬がある。
「確認ですが、俺ってこれからどうなるんですか?」
「え? あのダークエルフに転生してディストピアを築くんだよ」
……えーと。理解が追いつかないな。ナニソレお断りしたい。すごくお断りしたい気持ちでいっぱいです。
エロ可愛い女の子は愛でるものであって自分がなるものじゃないよね。どいうこと?
「すいません。そんな話聞いてないですよ」
「あれ? ……そういえばそうね。でも公平の話しぶりだと行く前提で話してたように聞こえたわよ。特に安全対策について熱心だったから」
「女の子の安全を心配するのは当たり前じゃないですか!」
「さっきまでは男の体を創るつもりだったのに女の体を希望したのは公平でしょ」
「ダークエルフが女の子なのは当たり前じゃないですか!」
「どうしてそうなるの……。とにかく、もう体に魔法知識の刷り込みしたから早く転生しましょう」
あかん。これはあかん。よし、とりあえず希望を伝えよう。
「地球で生まれ変わることを希望します」
「先方とはすでにトレード成立してるから無理。知識欲や思索に光るところはあるけど、社会に発信しなくて影響皆無だからそちらでどうぞ、だって」
くそ。言い返せない。次だ次。
「今から男の体を創ってもらえませんかね」
「天使並みの最終ポテンシャルがある体をそうポンポンと創れるわけないでしょ。最短で5年後よ」
「その間待ちますから」
「あー、公平自身をこの狭間に留められるのはあと3日ね。無理に留めると分裂して自我を保てなくなるよ」
それは修羅の国に落ちるより恐ろしい。
「ちなみに常世で待つことは」
「普通ならそうするけど、常世から転生する時に記憶がまっさらになるのよね。さっき読み取った公平の記憶は私の中で理解出来ないから役立たないし、今の公平しかディストピアとか科学の概念を知らないんだから却下」
まっさらな状態で修羅の国を行くのも怖い。
「と、とにかく考える時間くれませんか?」
「もう諦めなさい。ほら、行くわよ」
女神様の右手が俺に向かう。次の瞬間、体の感覚がなくなった。言葉を発することも出来ず、視覚が白一色に包まれる。音も聞こえず、重力すら感じない。
時間感覚すらあいまいで、長いのか短いのかわからない時間を過ごしていると、突然体の感覚が戻った。
瞼を開くと、青い空。体に違和感を感じる。まず胸が重い。下を向く。そこにはそびえる褐色の双丘。寝ていた体を起こすと肩からさらさらと流れ落ちる豊かな髪。うん。理解した。
俺、ダークエルフ(女)に転生しました。
書きたいことの7割書いたので以降不定期更新です




