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30.1ヶ月

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「ああ、あの嬢ちゃんか。俺の管轄人員じゃないから確約はできんが、おそらくいけるだろう」

 マレンコフは支部長だから連絡員をどうこうする権限はないのか。でもそれでは納得できませんよ。

「おそらくではダメです。彼女以外なら拒否します」

「その旨も報告に上げて押しておく。ただ連絡員は各地を飛び回るのが仕事だからな、いつになるかわからんし、いつも同じ人を遣れるとは約束できん」

 そういやそうだな。それにニノンは各地に恋愛を抱えてるから一ヶ所に縛るのも考え物だ。うーん、妥協点を探るか。


「そうですね……。では、最初は必ずニノンでお願いします。組織が私の要求を飲んでくれるのかを計る意味で。それ以降はレドラで面談して信頼できる女性であれば。あなたはまあいいとして、男との同行は御免こうむります」

「わかった、鋭意検討しよう。男嫌いの点は特に。次はいつレドラに来るんだ?」

「一月後の予定です。換金はその時にお願いしますね」

「それだけ時間があれば換金はできる。嬢ちゃんも居所ぐらいはつかめると思うぞ」

「では、よしなに」

 面倒を呼び込んでしまったが、ニノンに会えるきっかけが出来たと思えばいい。うん、楽しみだな。



「とまあ、こんなことになってしまった訳です。一応事後報告でした」

 マレンコフをレドラ郊外の草原に戻し、帰ってきてからのお話しタイムで女神様に経過の報告をする。

「ふーん。まあアミラがそれでいいと判断したんならいいんじゃない?」

 あら、あっさり。ちょっと迂闊が過ぎると反省してた所なんですが。


「いいんですかね? 組織とこんなに絡むのはまだ時期が早いと思いますが」

「大丈夫でしょ。今のアミラに対抗できる勢力はちょっと思いつかないわ。国レベルで動員かけられるとわからないけど、暗殺はあの力場で防げるだろうし、組織の人なら一度に動員出来るのは100名位が最大だし、それくらいなら力技で追い返せるんじゃない。ほら、木を刈る時に使ってる風刃ふうじんの魔法でイチコロよ」

 イチコロって……あなた女神様ですよね? まあ一薙ひとなぎで木が数十本刈れるからね。近所の魔物も一発で行動不能にしてるし、威力になら自信はありますよ。


「直接対峙する事態については私もさほど心配はしてません。でも、下手にこじらせるとジェノサイドですよ。ダークエルフの人たちは基本手出ししたくないんですが」

「うーん、そうねぇ。……そうだ、いっそ組織を乗っ取ってしまいなさい。そうすれば解決よ」

 また直截ちょくせつ的な。そりゃやってやれないことはないと思うけど、正直自信ないですよ。

「それ、ジェノサイドの可能性はむしろ増えますよ。仮にミナゴロシにして乗っ取ったとしても私の運営で維持できるかどうか」

「そう? 盗賊もうまく使ってるみたいだし、アミラなら殺さなくてもうまくやれると思うけど。まあ、やり方や時期はまかせるわ」

「組織からの連絡員で最初に来るのはニノンですから。彼女ならよろしくやっていけると思います」

「肉体的にも?」

 ……この女神様は。

「ええ。楽しみですね」

「ふふふ、ヘタレなのに良い反応するじゃない」

 女神様、たまに私で遊びますよね。まあいいけど。



 翌日以降、とりあえず組織との付き合いのことは忘れて建築作業に励む。

 タブレット情報を元にアタッチメントに改良を加え、鉄パイプで組んだレールを使うことで格段に効率が上げた製材作業を再開。じゃんじゃんできる角材を元に、木骨コンクリ造での建築を目指す。ふむ、これならタール製造に人員回した方がいいな。

 ツーバイフォーは構造用合板や規格金物の用意が困難なことに気付いたので、土蔵的な伝統工法の設計図を元にCADデータを木工機械に入力。あとはお気軽にできあがりを待つ――という訳にもいかず、多少の苦労はある。


「アミラ、なんで一本一本持ち出してるの?」

 扉から資材搬出をしていると女神様から声がかかる。

「え? だって出入り口ここしか無いじゃないですか」

 ハウスの工場内の資材移動はハンドリフト、工場空間から搬出路たる扉まではフォークリフトで楽々移動だが、そこからは肉体労働。ここがボトルネックになってるけど、家数軒程度の資材ならまあいいかと気にしてなかった。


「扉を広げてフォークリフトで外に出れば? 別に大きな出入り口つくってもいいわね」

「そんなことできるんですか?」

「できるわよ。前も追加で緊急避難の付与したじゃない。あと通気口も作ったわよね、それと同じよ」

 あー、発電機用に通気口作ったな。その時も女神様に確認してたっけ。

「でも人の出入りもできるとなると、セキュリティ上問題なんじゃ?」

 避難所の意味をなさないならやりたくないですよ。

「人の出入りは障壁を付与して制限すればいいわ。あとはアミラだけの専用空間を作るとか。できるでしょ?」

 魔法知識を当たってみると確かにできる。うむ、知識と応用は違うんだな、と思いました(小学生並の感想)。


 ――ボトルネックも解消し、建設作業は順調。ベッドなどの家具も作成し、わんにゃんズの生活環境も多少改善した(シーツはないので干し草だが)。収容所内に建てる最初の棟は奴らにあてがうと伝えてあるので士気も高い。あの問題もポータブルDVDで解消してると思われる。

 ふむ、大ノコ注文してるけどいらなかったな。まあ言い訳用のダミーと考えておくか。お金の心配もないしね。



「それでは今日も一日、ご安全にー!」

「ゴアンゼンニー!」

「では、私はまた町に行ってきます。特に命令はしませんが、適時仕事をこなしてください」

「おう、まかせろ。敷布とかも買ってきてくれ」

 わん太ハンチョーが応える。へいへい、わかってますよ。


 一月後、朝礼を終えてからレドラに。家は1棟目の骨組みがほぼ完成。タールで防水した屋根板を葺くのが今日の作業だ。目に見える成果が得られるのがうれしいのか、奴らの仕事ぶりもいたって真面目。今のところ心配はないな。そんなことを思いつつ旅立った。


 さて、やってきましたレドラの町。まずは金貨を受け取るべく拠点に向かう。朝だけどマレンコフは普通に出迎えてくれた。そういやいつ来ても応対するな、過労死とか大丈夫なのか?


「待ってたぞ。金貨は用意してある。お前も砂金持ってきたか?」

 一月前の別れ際に約束した追加の砂金を引き渡す。うーん、今はまだいいけど、今後額が増えると現金取引は面倒かも。

「手形でもあれば楽なんですけどね」

「金持ち商会が使ってるヤツか? 奴らが我々にそんなもの発行するわけ無いだろ」

 なんとはなしにつぶやいた言葉に反応がある。へー、手形あるんだ。いや、現地語でつぶやいたからあることは知ってたけど。

 となると闇銀行でも運営すれば闇経済でヒューマン陣営に打撃与えられるんじゃね? 私は素人だからちょっと無理っぽいが、商人とかで良い人材とお近づきになれれば検討したい課題だね。


 興味がわいて組織の運営資金の流れを女神様に聞いたところ、基本支部・地域ごとの独立採算制で、本部や連絡員などを運営するために上納金の拠出義務があるそうだ。なんつーか、前世の反社会勢力を思い出す。

 ちなみに、ダークエルフ以外の闇組織は芽が出る前に潰して回ってるそうな。そう考えると権力の手先で自制的なダークエルフ組織は町の治安維持に役立ってるとも言える。ヤクザとチェーカーを足して割ったみたいなもんと理解しよう。


「それで、ニノンはどこにいるかわかりましたか?」

 金に関するやりとりを終え、次の課題に話を進める。

「ああ、先の連絡員の便りではランドエに居たそうだ。そこでレドラへ向かうように指令変更してるから5日程度で到着すると思う」

 思ってたより早いね。こちらの希望も聞いてくれるみたいだし、組織ともよろしくやっていけるみたいだ。

 家の建設も目処がついてるからそろそろ村民の募集についても考えないと。うーん、バルトロのギルドから退役冒険者を募るか。ニンファさん経由になるから時間かかるだろうなー。


「わかりました。私もそろそろ開拓者を集めようと思いますが、かまいませんね?」

 一応、組織にも伝えておこう。

「いや、連絡員の受け入れを確認してからにしてほしい。あかしを立ててからってことだ。しかしダークエルフのお前が冒険者集めなんてできるのか?」

 ふむ。まあ急ぐわけでもないからいいか。

「了解です。募集の件は正直できるかどうかわかりません。でも冒険者のギルドにはある程度ツテがあるので当たってみますよ」

「アルベリク絡みだと『疾風』か。どうしてツテがあるのか聞かせてもらえるか?」

 んー、それくらいならいいか。

「バルトロってご存じですか? 彼をたまたま治癒したので」

「それは初耳だな。そういや『疾風』は最近負傷率が低いと評判になってるから冒険者も結構移籍してるみたいだぞ」

 へー、私が教えたことが役立ってるようでよかったよ。分母が増えてるなら募集も多少楽になるかも。でも組織の信頼を得てからになるからしばらく先の話だな。


 次回はニノン来訪予定から多少余裕を見た7日後として拠点を後にする。二人きりになりたいので集合場所は別れた建物の前にしてもらった。

 大ノコの受け取りやシーツなどの買い物を済ませ、町を出る。今回はニンファさんとの接触はなし。微妙な時期だからね、大丈夫だとは思うけど組織から疑念持たれるのは避けたいんです。

次回はニノン出しますん(予定)

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