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27.かわいいニンファさん

 レドラの町近くの草原、中をくり抜いた岩で階段入口を偽装した地下室から外に出る。すでに身支度は整えてるので後は歩くだけだ。

 軽量化したとはいえ身体強化しないと岩を持ち上げられないのがちと面倒。でも壁内に直接転移は転移陣センター以外禁じられてるからな。用地確保もアテがない。

 町まで距離もあるし、冒険者互助会が持ってる壁沿いの転移小屋が使えれば楽なんだけど。うーん、気まずいけど交渉してみようか?

 あ、そういや森にも待避小屋建ててるって事は大工道具を持ってるってことだよね。鍛冶屋に伝手もないし、まずはギルド関係者に聞いてみるかな。気まずいけど。


 そんな考えを巡らせながら歩を進める。今回も怪訝な顔をされながら門を抜け、ニンファさんお勤めの治癒院に向かう。

 こちらは組織の拠点がある地区と違って賑わっており、たまに人と人がぶつかっている。私の場合、一歩間違えばジェノサイドだ。が、そこは対策済み。力場の魔法の展開範囲を体表面3cm程度に圧縮するアレンジで、直接接触を避けつつ自然な振る舞いを実現したのだ!


 と、ちょっと怖じ気ついている自分に言い聞かせながら通りを行く。フードを深く下げているので大多数の人にダークエルフとは気づかれておらず、みな遠慮がない。

 遠慮しあう日本の雑踏の経験は通じないから男とも一度肩がぶつかってしまったが、ワンテンポ遅れたふわっとした反動があっただけで接触されたという実感はなく、精神的にも問題はなし。

 出発前、一時的に命令を解いたわん太達で実験した甲斐があったな。奴らは訳わからない感じだったが、フフフ、まさかあれが生命の危機だったとは思うまい。


 ともあれ、無事治癒院に到着。黒い板葺き屋根に柱や梁か見える白漆喰壁の木造、明治の診療所って雰囲気だね。いや、実際に見たことはないけど。

 中を覗くと5人ほど待合室で治癒を待っているようだけど、誰が職員かはわからないな。人の出入りも無いし、ちょっと入り口で観察しようか。


 しばらく見ていると奥から人がやってきて患者を案内している。彼が職員みたいだな、頃合いを見計らって声掛けるか。と、思っているところでこちらに気付いたようだ。近寄りながら声をかけられる。


「何か用かね? 治癒希望かい?」

「いえ、こちらにお勤めのニンファさんに会いに来ました。お手空きの時にアミラが来たとお伝え願えますか?」

「アミラ……。もしかして君はダークエルフかね?」

「ええ、そうですが」

 フードを軽く上げる。


「おお、よく来てくれた! ニンファは治癒の最中だから奥の部屋で待つといい、案内しよう」

 と、私の手を取ろうと腕を伸ばす。おう、不意打ち。だが学習した私に隙はない、バックステップで回避し、ビミョーな表情を浮かべる男に述べる。

「申し訳ありません。私、男性が怖いのでお手を拝借するのはご遠慮いたします」

「それはすまなかった。ではついて来たまえ」

 気にする様子はないみたいだね。良かった良かった。


 部屋に通された後、男も「仕事に戻る」と退席する。何だったんだろうな、あの反応。

 ローブを脱いでしばらく待つと、パタパタと駆ける様な足音がしてニンファさんが姿を現した。

「アミラさん、お久しぶりです!」

「はい、お久しぶりです。お仕事中にお邪魔してすいません」

「今日の患者さんはアルベリク先生が看てくれる事になったので構いませんよ、今待っている方で終わりですからそれほど時間もかかりません」

 おっと、シフトを変えてしまったか。悪いことしたな。



 気まずい再会を想像していたが、ニンファさんは再会を喜んでくれた。別れた後のことをお互いに報告する。


 伝えた治療法は役に立っている様だ。麻酔の製造がまだ安定しないので生死に関わる大けがの治療にしか使われていないのだが、用具で的確な処置がしやすくなって生存率が格段に上がったそうだ。


 シフトを交代したアルベリク先生というのはここの院長で、ニンファさんたちの師匠でもあるそうだ。実はさっき会ったのが当人だった。

 治癒法や用具を伝えたのが『アミラというダークエルフ』と聞いており、さらに報酬分の治癒費の寄贈を受け、感謝とともに興味を持っているとのこと。さっきの反応はそれか。ありがたいけどちょっとウザかったな。


 私の現状は、大河が渡れず先に進めなかったこと、開拓を進めていること、を簡単に伝えた。小首をかしげて開拓の必要性に疑問を感じてるようだがツッコミはない。


 私からはバルトロの話題を意識して出さないようにしている。ニンファさんも同様のようだ。さて、来訪の目的を告げるか。


「それでですね、家建てるのに大ノコが必要なんですよ。他にも大工用具とか、衣類とかも欲しいですね。ギルドで鍛冶屋に伝手がありませんか?」

「服や大工用具なら私でも扱ってるお店はわかりますが、大ノコを打てる鍛冶屋さんは聞いてみないと。でもギルドでも大ノコは持ってないと思いますよ?」

「え? じゃあ森の待避小屋ってどうやって建てたんですか?」

「詳しいことはわかりませんが、木で骨組み組んでから、土を盛って魔法か魔術で固めたんじゃないかと」

 あー、そういや木造じゃ無かったな。でも木骨はどうやって組んだんだろ? 扉も木製だったし、作業台は丸太の皮が残った一枚板だったぞ。

「その骨組みはどうやって組んだんですかね?」

「……さあ?」

 うん、答えは期待してませんでした。小首をかしげる様がかわいいですよ、ニンファさん。



 とりあえず、大ノコを打ってくれる鍛冶屋のアテを聞くべくニンファさんが席を外す。その間に女神様に木骨魔法コンクリ造の建築方法を聞いてみる。


『で、森の待避小屋がそういう造りらしいんですが、どうやって木骨組んでるのかわかります?』

『ああ、そういうのもあるわね。あんまり一般的じゃないから伝え忘れてたわ。えーと、丸太の必要な部分だけ削ってほぞ組や縄、釘で組んでるわね』

 ログハウスみたいなもんか。なんだよー、最初からその建築方法でやればよかったな。とはいえ径の揃った材を探すのが面倒そうだし、加工の道具もよく知らないから召喚できないな。それに一枚板の作業台の謎は残る。


『ちなみに大ノコ使わずに丸太から一枚板を挽く方法ってあります?』

『普通のノコギリで根気よく挽くしか方法はないけど、それ以外だと斧の切り口に楔を入れて割り開いていけば結構簡単にできるわよ。厚みの調節が難しいし、割った後の表面加工が面倒だけど』


 ふむ、謎はすべて解けた。なるほど、大ノコ使わなくても家は建てられるな。あれば便利だけど、最悪なくてもいいか。となると大工道具はいろいろ仕入れないといけないな。


 ちなみに、女神様情報ではレドラでは大ノコを打つ鍛冶屋はないようだ。この町は角材を外部から持ってきて大工はその加工をするだけなんだって。

 一番近いのは馬で2日ほどの距離にある林業が盛んな村の鍛冶屋だそうだ。需要あるところに供給あり、ってやつですか。確認しなかった私も悪いけど、そういうことはあらかじめ教えてください、女神様。


 馬で2日となると飼ってる犬猫の世話に支障が出る。大ノコはあきらめるかな、などと思っているところにニンファさんが帰ってきた。


「お待たせしました、鍛冶屋さん見つかりましたよ。ただ、かなり高いし、期間も1ヶ月欲しいそうなのでアミラさんの都合によりますけど……」

 ほう、それは僥倖。予算は無限みたいなものですから大丈夫です。今日も砂金5kgほど持ってますとも。

「ちなみにおいくらですか?」

「金貨7枚だそうです」

 えーと、350万円か! ノコギリでそれは高いな。でも払えますよ、砂金の換金ができれば。


「お金の心配はいりませんよ、南大陸で砂金の出る場所を見つけたんです。ほら」

 と、背嚢から砂金を入れた袋を取り出して見せる。

「わ、凄い!」

「秘密ですよ? でも安全に換金できる所のアテがなくて。ギルドで換金してもらえませんか?」

 宝飾品店での不毛な交渉は避けたいんです。額もアレなので噂が広がるのも避けたいし。


「ギルドじゃ無理ですよー。私も換金できるところは知りませんし……」

 デスヨネー。ま、実はアテがあるんでそっちにします。できれば避けたかったので嘘つきましたが。

「そうですか。では必要分だけ宝飾品店で換金することにします」

「あ、なるほど。それがいいと思います」



 話し終えた頃にはすでに日も傾いており、鍛冶屋や店の案内は翌日となった。午前中に付き合ってくれるそうだ。ついでに宿の紹介もされた(行かないけど)。

「早くしないと宝飾品店が閉まりますよ」と急かされて治癒院を後にした。

 しかし私が向かったのは宝飾品店ではない。この時間に行っても交渉成立しそうにないしね。


 人通りの少ない地区に移動。裏路地でハウスに入り、日が沈むのを待つ。人が途絶えた所を見計らって目的地へ向かった。


 独特のリズムで扉をノックし、のぞき窓からの視線に告げる。

「こんばんわ、アミラと申します。マレンコフ支部長と面会できますか?」

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