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13.仮面ヒーラー・アミラ

「アミラさん。女神様は心配です」

 治療後すぐ引きこもった私に対して女神様よりこのお言葉。

「はあ、何に対してでしょうか?」

「治療するなんて人に対して積極的になったなと思ってたのに……。今の態度はなんですか?」

「いや、回復したら襲ってくるかもしれないじゃないですか」

「それでも治療した人がその後どうなるかくらい気になるでしょ」

「私は学んだんです。この世界の男は信用できん、危険だ、と。わずかな危険性でもつぶしておくのが賢いやり方ですよ」

 それっぽい言い訳をしてみるものの、本音は怖いからなんだけどねー。今思うと背を向けて速攻で逃げたのは危機対応的にはマズい行動だった。千里眼で監視しながら逃げるべきだったね。反省反省。

「わからないでもないけど……。ならどうして治療したの?」

「ぶっちゃけ人には興味ないんです。患者に興味あるだけなんです。経験に飢えてる研修医と同じなんです。危険性と天秤にかけて今回は大丈夫と判断しました。あのマスクで安心感もありましたしね」

「そうなんだ……。ますます心配になってきたわ……」

「まあ今開発中の力場の魔法が使えるようになれば安心感は段違いですから、それで男とも対応できるようになると思いますよ」

「それでもねえ……」

 この後女神様のお説教タイムとなりましたが、トラウマはお説教では解消できないのですよ、女神様。確か心理療法のテキストで見た。まだまともに読んでないけど。怖いものは怖いんですよう。時間くださいよう。


「そうだアミラ。あの仮面つけてれば人と会っても大丈夫なのよね?」

「そうですね。弱ってる人ならおそらく」

「だったら弱ってる人がいたらでいいから同じように治療しましょう。少しずつ慣れていけばいいわ」

 うーん、やはり怖い。認知療法的には「男は怖くないよ」と誘導するんだろうけど、ここは修羅の世界。ほんとに怖いんだよー。けど弱ってて死んでもかまわない患者が治療できるというのは魅力がデカイ。今回は襲われなかったしな。油断は禁物だが。よし、某デュークの心得で当たろう。

「わかりました。私の判断で拒否できるならやってみます」

「それでいいわ。最初は実力つくまで待つつもりだったし」


 こうしてお説教タイムが終了。やはり多少は気になっていた患者の様子を千里眼で確認しようとしたところ、すでに居なかった。助かったのならいいけど魔物に連行された可能性もあるからなー。お説教中は索敵してなかったし。



「仮面治癒師だ! 負傷者以外は両手を挙げ20ヤード以上下がって1カ所に集まれ! そのあと手を頭の後ろで組んで待機しろ! 従わないときは私は逃げる!」

 負傷者の心配をしながらも指示通りパーティーメンバーが離れていく。生体感知でも視界のメンバー以外に反応はなし。お、手を組んだな。よし、治療に入るか。


 最初の患者を治療してから3ヶ月。今では町に近い領域まで足を運ぶようになり、積極的に治療を行っている。トラウマは残っているので油断はしないが、行動が制限される事は少なくなった。6名以上が固まっている時に避ける程度。冒険者パーティーは5名以下が多いのでほぼ対処可能だ。まあ基本見つからないように行動してますが。

 始めた頃は単独でいる負傷者のみを狙っていたが、魔力、身体能力共に成長が進み、さらには力場の魔法が実用的に使えるようになったので負傷者を抱えながら退却中のパーティーなど複数人がいるときでも治療を行なえるようになった。

 治療を続けているうちにいつの間にか『まだら鎧の仮面治癒師』と呼ばれるようになっていたので、名乗るときも『仮面治癒師』で通すことにした。無論あの防毒マスクが『仮面』。今じゃ自信もついてきたから外しても男と対応できると思うけど、何となく外すタイミングがつかめない。あるよね、そういうことって。


 ちなみに現地の長さの単位はヤードが基本。現地語では『腕の長さ』という意味の単語だが、成人男性の体の中心から伸ばした指先まで、とヤードと同じ概念なので私の中では便宜的にヤードと訳しながら使っている。人によって長短の感覚が1割くらいばらけているものの平均90cm程度でメートルから1割減と換算しやすく助かる。他の単位も体の部位(指の長さなど)や1日に食べる麦の重量など生活に即した単位系。なお、重さは現地語で「一日の重さ」。ポンドと訳している。およそ500g。


 治療自体は経験も重なってきたので大抵の傷は対応可能だ(無論助からないときもあるが)。ただ、破傷風対策はしていない。抗生物質の点滴に6時間くらいかかるし、その後の投薬や経過観察が必要になるからだ。傷塞ぐんだからそのあと死んでも文句言うなよー。今ここで病院建てるわけにもいかないからあきらめて。


 大変なのは治療時の安全確保。負傷者の大半はパーティー行動中なので、負傷者以外のメンバーが邪魔。負傷者も回復すれば危ない。ということで某デュークの行動パターンを参考に、徹底した安全確保を心がけている。負傷パーティーへの指示や私の対応はこんな感じ。


・負傷者以外は20ヤード(18m)以上離し、手を自由にさせない

 武器の使用はもちろん、魔術も手で陣を描く必要があるので手の拘束さえできればおおむね安全は確保できる。武器を持って突撃されても距離があれば対処できるし、遠距離魔術も10秒以上の長い呪文が必要なので逃げたり攻撃する時間はある。監視しやすいように1カ所に集めることも忘れない。


・負傷者も担架に拘束する

 回復後の襲撃を避けるため。拘束は治療して現場を離れた後パーティーメンバーに解いてもらう。単独の場合は1時間や2時間程度で召喚した担架に拘束し、自壊を待って拘束を解く。その間の魔物警戒はサービスで私がやる。無論、拘束の拒否や抵抗を受けた場合は見捨てて逃げる。


・非常時には力場の魔法を展開する

 開発に成功した力場の魔法は優秀で、おそらく槍で突かれた場合でもアザですむ程度にまで軽減できる。成功のきっかけは身体強化魔法にダメージ軽減効果があるのに気付いたこと。どうも筋肉や皮膚に同じようなフィールドを魔力で展開しているようで、そのフィールドを増強し体外に拡張するイメージで魔法をかけている。身体強化とリンクしているので、持続時間は約50分。魔力の消費は少し多く1回の強化で最大量の約2割持って行かれるが許容できる範囲だ。



 とまあ、こんな感じで治療を続け、大抵の場合で感謝の言葉を受けて気分良く分かれられるんだけど、1回だけ治療中に襲われた事がありました。もちろん返り討ちにしましたが。

 なんでも「治癒できる女なら力も弱そうだしパーティーで飼っておけば役に立つと思った。ダークエルフなら他から文句も出ない」だそうです。クズだねー。

 最初は「心配しすぎじゃない?」と言ってた女神様もこれには「なんかゴメン」とのお言葉。やはり私は間違ってなかったんや!


 あ、襲撃犯は手足の腱を切ったあと肉人形にしました。全身麻酔で意識と痛覚なくしてからやったから前より人道的だね。いや、反射反応とか検証したかった現象があった、ってのもあるけどね。

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