表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

12.今日も一日

「装備てんけーん」

「ヘルメットよーし、防弾チョッキよーし、拳銃よーし、マガジンポーチよーし」

「それでは今日も一日ご安全にー!」

「ご安全にー!」

 朝礼の挨拶を終え、生体・魔物感知で周辺確認。安全を確かめて今日も魔物退治に出発する。


 到着から1ヶ月半が経過して、成長も順調で魔力量は近くの町にいる冒険者どもの3倍程度までいっている。スライムとは段違いの効率である。といっても身体能力はまだ劣るし、魔力量も手強い魔物の生息地に居るベテラン冒険者と同程度。冒険者が転移陣で移動することを考えるとここにも来る可能性があるわけで、まだ圧倒できるとは言い難い。


 朝礼は女神様とマンション建設中の話をしている時に女神様のツボに入ったようで、以後毎朝の恒例となった。日本じゃ装備点検は2人組でやってたけど、女神様は現場に居ないので1人で点検(ただ女神様も見てる、との言)。まあ安全意識を高めるのに悪くない手法だ。油断大敵心傷(トラウマ)一生、ですよ。


 最近では魔力量も増えたので毎朝自衛隊装備を召喚して装備中。草原に紛れるのにちょうどいい迷彩だし。といっても拳銃を使うことはなく護身用。魔物によって魔法を使ったり召喚した銃器を使ったりしている。

 例えば対空なら対物ライフルのバレットM82A2だ。重機関銃と同じ大威力の12.7mm弾を発射できるのでハネを狙えばワイバーンでも落とせるそうだが、このあたりには大鷲がいる程度。とはいえ小銃では上空にいる魔物には届かず、魔法は届くが燃費が悪い。結果バレットとなっている。


 ニートの楽園と違って体を動かさなくては魔物に遭遇できないので働いている。休みは基本週休2日。ただし内1日はも身体強化トレーニングのみ行い、残る1日が完全休養日。インターバルは2時間半程度になったので効率は上がったが、強化時間も30分と増えているので拘束時間は多くなった。ちなみに平日は魔物退治で動きながら強化している。私の安全に関わることだからね。休めなくてもしょうがないね。


 平日は夜明けと共に起き装備と朝食の準備。朝食後に朝礼して魔物退治。昼は軽めに食べて休憩。夕方には切り上げて、夕食を取って女神様とのお話しタイムだ。

 正直お話しするのが楽しい。内容はこの世界のこと、日本のこと、今日あったことなどなど、その時の気分次第でころころ変わる。思ったことをそのまま言葉にしているだけでいろいろ発散できる。掲示板に書き込むような感覚かな? ちと違う気もするが。

 その後は風呂に入って学習タイム。日が落ちてからは2時間で切れる光球の魔法で照明を確保し、それが切れたら就寝。ま、千里眼使えば暗くてもよく見えるんですけどね。


 大体こんな生活を送っているが、イレギュラーも起きる。冒険者の襲来だ。生体感知に人が引っかかるとすぐにハウスに引きこもる。だって冒険者って基本男なんだもの。おとここわいです。

 情けないけど相手にする気が起こらない。不意打ち食らうよりヒキコモリの方がマシ。ノーモア不意打ち、イエス、ヒキコモリ! この屈辱をバネにしてがんばるぞ。ふふふ。女の敵には相応の報いを受けさせてやるから覚悟しとけ。


 と、トラウマが直らないので男を寄せ付けないために魔法の創造を試みてます。目標はフォースフィールドというか力場というか、そんな感じの魔法だ。女神様とも相談しながら進めてるが、言葉ではイメージが伝わらないようで結局ほぼ自力で開発中。

 現在力場の発生は可能だが、持続時間が5秒。ちと使えない。検証した効果は立った状態から倒れ込んでも地面と接触せずわずかに浮く、という感じ。体重と加速度考えれば殴られてもはじき返せるくないかな。問題は持続時間なんだよね。魔力から力場への変換したあと維持できず拡散する印象。うーん、どうすっかなぁ。



 今日も魔物退治の移動中に冒険者らしき人を感知したので引きこったが、どうも様子がおかしい。動きがないのだ。千里眼で様子を探ると男がケガで血まみれであった。が、まだ息はある。なお感知範囲に他に人の反応はない。


「女神様、冒険者って普通パーティー組んで行動しますよね、単独で大怪我ってどうしたんでしょね?」

「見捨てられたか、パーティーが壊滅したかどっちかでしょうね」

「あらあらまあまあ、それは大変」


 正直助けたいが、私はまだトラウマの克服ができてないのだ。そんな微妙な気持ちをオバチャン口調で誤魔化してみたが、とりあえず千里眼で症状を診てみよう。うーん、出血が多いな。輸血用血液は献血だったから召喚できないんだよなぁ。生理食塩水かリンゲル液の輸液で持つか? 患部は大腸か。はみ出してるもんな。回復魔法でここまでのダメージ回復したことないから助かるかは分からないけど、戻して塞ぐことはできそうだ。というかやってみたくなってきた。ダメージでかいみたいだし担架に拘束しとけば襲われないだろ。


「ちょっと治療してみます。助かるかはわかりませんが」

「そう。頑張って」

 必要機材を召喚し、治療の準備。そこに女神様よりお声がかかる。

「ってその仮面どうしたの?」

「いや私も素でやるとトラウマ出そうなので。あとダークエルフだと警戒されるでしょ」

 私は自衛隊装備に防毒マスクを追加し頭を覆うことで男との接触を避けられると思いこむことにしたのである。

「その仮面の方が警戒されると思うけど、好きにしなさい」


 ハウスから機材を持って男に近づく。しばらくして男が気付き、ギョッとした顔でこちらを見るが動けないようだ。麻酔かけて意識落としたいけど、下手に落とすとそのまま逝きそうだから今回は自重。多少の抵抗を受けたが担架に拘束し、生食水パックを腕にぶっ刺す。その後患部も生食水で洗って裂けた部分を繋ぎ直すよう意識しながら回復魔法で腸の修復。腹圧に負けそうになりながら腸を押し込み、筋肉、皮膚まで回復魔法で治療した。後は野となれ山となれ。


 最初は抵抗した男も腸の治療あたりからおとなしくなった。輸液が終わったので針を抜いて片付ける。次いで担架の拘束も解く。最後の拘束帯を解いた瞬間、私は逃げた。ダッシュで。草に隠れて即ハウスに引きこもりましたとも。


 なお、男がこの後どうなったかは知りません。手頃な患者が居たので訓練がてら治療したかっただけです。

※フラグじゃないです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ