対面
お気に入りが五人になってました、モチベーションが上がって更新が捗ります!ありがとうございます! (遅れて申し訳ないです)
――――え、何だこれは?
球状のコックピット内部、その360度全周囲に付いているモニターが外部映像を出力する。
その映像からは開いたコックピットハッチに立つ紛うことなき"人間"が映っている。
綺麗に描かれたポリゴンの集合体でもインクの集合体でも無い、タンパク質の塊の人間だ。
全身を隈無く見ると随分とスタイルの良い引き締まった軍人然とした体型をしている、身長がそこまで大きくは無いように見えるのは目の前の鎧武者の機体が比較対象としては大きすぎるからだろうか。
胸元が自己主張しているように感じないのもきっとそのせいだろう、きっと。
「……?そろそろコックピットから出てきては貰えないか、まさか今更私を殺すという訳でもあるまい?」
お前はそういう事をしない。
と、腰に手を当て先ほどの音声による挑発と同じ様に語る姿は随分と様になっていた。
「すまない、少しだけ待ってもらえるか?コックピットの解放に時間が掛かるんだ」
「ふむ、見たことも無い機体。機密保持の為にも、コックピット一つ開けるのに時間が掛かるのは致し方ないか。良かろう」
こちらの都合が良いように解釈してくれたけど、俺にはそんな事よりも思考をフル回転させる事にリソースを振り分けていてまともに返事を聞いていなかった。
それでも先ほどまでの時間に、更に時間を掛けるのはどう考えても不味いだろう。
予想としては現実では有り得ない現象が自分の身に起きたのでは無いかと思っている。
だけど、本当に?何でだ?どうして?
様々な疑問が頭の中で繰り返される中、父さんや母さんの説明にも無かったボタンが大量に増えていたり、機体自体もゲーム用に作れられていた物では無い事に今更気付いた。
恐らくこれはどういう事なんだろう、腹をくくるしか無い。
このハッチが開いた時に出てくる景色は見知ったゲーム開発の現場では無いことを。
――――レリーシア様が対峙なさっている謎の機体が、今まで以上に警戒しろとばかりに可笑しな空気を纏っている。
この私オルヴェント・ラ・リーチェ、デバッカルの搭乗者として実戦の場に立つこと早四年、そしてレリーシア様の教育と教練をする事六年。
下層貴族として生まれながら戦場と社交界、その他の様々な経験を王族の方と同じだけしてきたと自負している私には、戦場に立つ者のモノとも、交渉や謀略のやりとりを交わす、そのどれとも違う異質な空気に私は何時でもガン・アサルトを構えられるように手に握る操作レバーを硬く握りしめていた。
それは生き残った部下と警備兵も同じだろう。
思わず息を潜めるように浅く呼吸と繰り返す事少し、しびれを切らしたレリーシア様が問いかけた数秒後ようやくコックピットのハッチが開き、謎の機体の搭乗者が姿を現した。
(鬼が出るか蛇が出るか……)
歩兵用の火器を用意していたとも限らない、機体のカメラを最大までズームして相手のコックピットハッチを見る。
果たして、そのコックピットから姿を現したのはどこからどう見ても少し変わった身なりをした一般人だった。
それも、とびっきりの呆けたアホ面をしたというオマケ付きの。
次の次くらいで話がさくさく進むようになるかも知れません、今は引っ張りすぎてる感じがしますね。習作なので色々試行錯誤中です、もう少しだけ無駄描写にお付き合いください。