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【9話】知り合いの遭遇率が高すぎ


 あれから数時間、私はテストを受けた。

私には簡単な問題ばかりであった。もう少し捻った問題を出題して欲しかったな。

テストが終わったら、今日の授業は終了。

部活がある者は部活に、そうでない者は寮へと帰っていく。


「神前、寮まで案内する」

「貴弌は生徒会はないの~」

「転校生を案内するなら、来なくていいと会長に言われている」

「へ~」

 そういえば、まだ生徒会長には会っていないな。

まぁ、頭がよくて、美系なのは目に見えているが。

「寮内は寮監が案内してくれる。

 俺はここから寮までの道案内だけだ」

「分かった」

「オレも行く~」

「百衣は部活があるだろう」

 ほう、百衣は部活をやっているのか。こういう奴だから、やっていないと思ったぞ。

「百衣は何部なんだ?」

「科学部だよ~」

 似合わない。

なぜ、科学部なんだ。

「こいつ、白衣が着たいからという理由だけで科学部に入ったんだよ」

「ちょっ!? 貴弌言うなよ!!

 あ、他にも色々理由はあるよ」

「媚薬を作る為だったかな?」

「貴弌!!」

 ……まぁ、百衣の事だから、理由は変な事だと言う事は分かっていたよ……。

私は小さくため息をついた。

「……貴弌、寮に行こう」

「あぁ、百衣に関わっていると、いい事はないからな」

「ちょっ、2人とも待ってよ~!」

 百衣、本当にうざいな……。


 校舎から寮までは徒歩10分ぐらいであった。

両方とも学園内の敷地にある。敷地広いな……。維持費がかなりの金額だろうな。

 水之に案内された寮は8階建てだった。外見は洗礼されているな。どこの会社が建てたか気になるな。

「入口はカードキー提示が必要となっている。

 今回はいらないけど、次回からは必要だからな。

 入口入って、左側が寮監の部屋だ」


コンコン

 水之が寮監の部屋のドアをたたく。

「はーい。

 あ、副会長君じゃない、どうしたの?」

 中から出てきたのは茶髪の可愛らしい女性であった。

髪はクルクルと巻かれており、目も大きく、声も可愛らしい。

だが、どこかで見た顔である。雰囲気もどこかで感じた事がある。

だが、この雰囲気を纏っていたのは確か男性だったはずだ――。

嵩霧かさぎりさん、転校生を連れてきました」

「あら、そうなの。

 ありがとね、副会長君。

 後は私の方でやるわ」

「分かりました。

 じゃあな、神前」

「あぁ、ありがとう、貴弌」

 水之は少し微笑んで、その場から去っていった。

「じゃあ、神前君。説明するから、中に入って頂戴」

「はい」

 私は寮監に言われ、部屋の中に入った。部屋は至ってシンプルな作りになっていた。

置かれている物は機能的であり、デザインもいいものであった。

「いい部屋ですね」

「そうだろう。全部うちのブランドで揃えたからな」

 先程までの可愛らしい声はどこかへ消え、低い男性の声がした。

この声は聞き覚えがある。私の会社と取引がある会社の社長――

『ケルヴィン、なぜ、お前がここにいる』

『おや、フランス語で返してくれるのか?

 せっかく俺の流暢な日本語を披露しようと思ったのに』

『なぜいる』

『そう怒るなよ、愛しのレイ』

『……まりに言いつけるぞ』

『君を口説こうとしたってかい?

 そんな事を言っても、彼女は怒らないよ。

 俺の恋愛対象にレイはいない事を知っているから』

『……嵩霧は毬の旧姓で目はカラコンか?』

『さすがレイだね。大正解だよ』

 目の前にいる女性にしか見えない男性はケルヴィン・ロイヤード。

世界的に有名なデザイナーであり、知り合いの建築デザイナーと共に立ち上げた会社の社長でもある。

上東グループとも何度も仕事をしており、外部の会社で零の事を知る数少ない人物の一人である。

 彼の妻である毬・ロイヤード――旧姓、嵩霧毬かさぎりまりは父方の祖父が表の顔としてやっている道場に通っていた門下生で零とも仲良くしてもらっていた。

毬は上東グループの建築専門のデザイナーとして、勤めていて、2年前に仕事で会ったケルヴィンが一目惚れして、去年やっとの思いで入籍したのを覚えている。

……毬の交際条件が自分に勝つことだったからな……しかも、スポーツ系で。毬は運動神経よかったから、決着つくのに1年もかかったからな……それも手伝って、すぐに結婚となったがな。

『で、なんでいるんだ』

『そりゃ、君のお爺様に頼まれたからだよ』

 やはりあのくそ爺が関わっていたか。

『あ、いつもはマリがいるから。

 今は出かけていないから、オレが代わりをしている』

『そういえば、ケルヴィンと毬は同じ身長だったな。

 しかし、毬は今、そんな髪型をしているのか?

 あの子には似合わない髪型だが』

 私の知っている毬は黒髪で肩にかかるぐらいのセミロングだった。雰囲気もケルヴィンと違い、親しみやすいモノだ。

『髪の色は一緒にしてもらってるよ。

 長さはこれぐらいだね。

 毬は何でも似合うから、困るよね。

 こんな猛獣の中にいるのに気付かないんだから』

 毬は元々鈍感だからな。視線とか気にしないからな。自分がどれだけモテルか分かっていない。

まぁ、告白されても、「私に勝てたら、つきあってあげる」で返り討にされていて、告白する男子もいなくなったらしいからな。

ケルヴィン程、頑張れる奴も珍しいが。

『まぁ、他人の事は言えないけどね』

『何がだ?』

『いや、何でもない。

 プライベートはここまでにして、仕事をする。

 はい、レイの部屋のカードキー。

 部屋は2人部屋になっていて、共同スペースとキッチンと浴室、各個人の部屋がある。

 1階は食堂とコンビニがあって、地下に大浴場、最上階にスポーツジムが入っている。

 希望すれば、部屋の掃除も学園側で人を手配する』

『……寮じゃないな』

 お坊ちゃま学校と聞いていたから、予想していたが、予想以上だった。一般的に言われている寮ではなく、ホテルに近いな。

『確かにな。ここまでのはそうそうない』

 ケルヴィンはクスクスと笑いながら言う。私の事を知るこの男は私がどう思っているのか、分かっているんだろう。

『まぁ、頑張れよ。「神前零サン」』


 ……私はケルヴィンが少し苦手である。私の嫌な事ばかりこの男は考えるからだ。

 私はその日一番大きな溜息をついた。




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