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【4話】初日から変な奴に絡まれた



 翌朝、私は用意されていた制服に袖を通した。

予想通り、サイズはぴったり。

 朝食は和輝が用意してくれた。

ご飯・みそ汁・焼き魚に昨日の残りの胡麻和え。

もちろん、味はおいしい。家事ができない女性には優良物件であるが、和輝に集まってくる女性のほとんどは和輝の資産目当てだから、和輝は見向きもしない。

そういう女性が寄りつかないように私の婚約者候補も取り下げる事はない。

 他の婚約者候補たちも同じ理由である。早くちゃんとした彼女を作ってもらいたいと私は思う。


 朝食も済み、学園に行く準備をする。

準備をすると言っても、ほとんど昨日の内に終わらせたから、あまりやる事がない。

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫だ。零は心配し過ぎだ」

 そうは言われても、私の会社であるのだから、心配の1つや2つある。

私がいつ死んでも大丈夫のようにいつも準備していたが、こんな形で一時期だが会社から離れるとは思っていなかったから、自分の気持ちの整理が出来ていないようだ。

「零、会社の心配するぐらいなら、少しは自分の心配をしろ」

「なんで自分の心配をしなきゃいけないんだ?

 会社は私の下に何百人の社員がいる。彼らを動かし、迷惑をかけないようにするのは当たり前だろう」

「……分かったよ。学園まで送るから、荷物を車にいれてくれ」

「あぁ、分かった」

 何か憐みの目で和輝が私を見ていたが、私は変な事は言っていないはずだぞ。



 私と和輝は車に乗り、3時間かけて、目的地である紫原学園に着いた。

なぜこんな辺鄙な所に学校等造ったんだと思ったが、心の中にしまっておく。

車から降り、和輝から荷物を受け取る。

「ここからは一人だが、大丈夫か?」

「大丈夫だ。いつまでも子供扱いするな」

 少なくとも、ここに通っている奴らよりはましだと思う。

「週末には会いに来るから」

「その時は溜まった書類を必ず持ってこい」

「……分かったよ」

 和輝は諦め顔でため息をついた。ここの生活も大事だが、仕事も大事だからな。

「じゃ、頑張れよ」

「あぁ」

 和輝はそれだけ言うと、車に乗り、来た道を帰っていった。

さて、私も行くか。荷物はキャリーバック1つと学校指定の鞄1つだけ。

他の荷物に関しては全て宅配だ。まぁ、私はあまり物に執着しないから、必要最低限の物以外は私物はないから、他の奴らよりは少ないだろう。


 しかし、正門から校舎まで続いているこの道は何の意味があるのだろう。

長いだけで何も生産性がない。正門にあった来訪者用のインターホンは人件費削減に大いに役立っているが、セキュリティはどうなっているだろう。

さすがに放電はしていないだろうし、24時間監視モニターか? どこの警備会社を使っているか、知りたいな。

「あっれー? 見かけない顔だね? 転校生~?」

 どうやらここに来て初めての生徒遭遇のようだ。

第一印象

『チャラい』

 髪は染めている金髪。目は黒い。身長は私より高いが、梁と同じぐらいだから、175ぐらいだろうか。

制服は乱れに乱れている。ワイシャツは第2ボタンまで開いており、学校指定のネクタイはちゃんと縛っていない。

 私の苦手な人種だ。まぁ、稀に『チャラいが、根はしっかりしている』奴もいるが、そんなの絶滅危惧種並みだ。

最初から印象を最悪にさせる訳に行かないから、無難に挨拶した方がいいな。

「はい、今日からこちらでお世話になる神前です」

 作り笑顔も完璧、のはずだ。なんせこの笑顔の師匠は遥だからな。そうそうバレない。

「かんざきちゃんか~。下の名前はなんて言うの~?」

 誰が教えるか。

「すみません。初対面の人に名前は教えるなと義兄に言われているので……」

 嘘だがな。家庭情報では両親は健在だが、海外にいるので、身元引受人は祖父となっている。

まぁ、バレた時は従兄を兄と慕っていると言えばいい。

「ふ~ん、過保護なお兄さんだね~。これから学校に行くの?」

「はい」

「荷物持ってあげようか?」

 遠慮する。もう関わるな。

「大丈夫です。これぐらい自分で持てます」

「ふ~ん、かんざきちゃんって警戒心強いんだね~。いじめたくなっちゃう」

 返り討にしてやる。まぁ、そんな事は言えないので、笑って濁す。



百衣ももい、そこで何をしている」

 第2の生徒遭遇。

第一印象

『優等生』

 最初に会った生徒とは正反対できちっと制服を着ており、黒髪黒眼。身長は180ぐらいだろうか。

 チャラい生徒は百衣と言う名前か。百衣は確かファミレス等のチェーンレストラン経営の大手企業だったな。

「あ、貴弌きいち~。おはよ~」

「もうすぐホームルームが始まるぞ。……隣にいるのは誰だ」

「彼は転校生のかんざきちゃんだよ~」

 そろそろそのちゃん付けはやめてほしい。鳥肌が立つ。

「あぁ、君が神前君か。俺は生徒会副会長の水之貴弌みなのきいち

 君と同じ高校2年で同じクラスだ」

「神前です。宜しくお願いします」

 生徒会副会長か。私と同じクラスと言う事はSクラス。それなりに頭がいいと言うことか。

水之は確か情報システム系の会社だったな。情報システム系は全て和輝に丸投げだけど、私も少しは勉強しといた方がいいな。

「後、6分ほどでホームルームが始まる。その前に職員室に寄らないといけないから、早く行った方がいい。職員室の場所は分かるか?」

「はい、こちらに来る間に校舎の地図は覚えました」

 3時間も暇だったからな。

「そうか。だが、念の為、俺が一緒に行こう」

 まぁ、副会長だから、転校生の案内とか任されているんだろうな。

「オレも一緒に行こうか~?」

 断固拒否する。お前の顔などもう見たくもない。

「水之さんがいるので、大丈夫です」

「だと。お前は早く教室に行け」

「ちぇっ。ま、これからだよね。また後でね、かんざきちゃん♪」

 百衣は手を振りながら、去っていった。

私は振り返す気もなかった。大嫌いな人種に手を振る事などしない。

「俺達も行こうか」

「はい」

 朝から色々ありすぎた。やはり普通に過ごす事は無理そうだな。

それにしても、なんでこう絡まれるんだ?

私は普通に接しているだけなんだが……



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