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【3話】詳細設定はもう少し考えてくれ



「分かった。じゃあ、明日から行く事になっている紫原学園についてと『神前零』の設定を教えてくれ」

 『神前零』は自分の事であるが、入院して、留年している設定があるから、本来の『私』とは違うはずだ。

「紫原学園は小等部から大学部まである私立の学園で零が転入する高等部が都心から片道3時間かかる田舎にある。

 ほとんどの学生は小等部からエスカレーター式で進級している。数人は外部の中学から進学している者もいる。

 高等部は全校生徒300人。1学年100人で。S・A・B・C・Dクラスの5クラス編成。

 Sクラスは10人でC・Dクラスは25人。他のクラスは20人編成となっている。

 クラスは成績順になっている。零はSクラスに転入が決まっている」

「まぁ、Sでも飛びぬけるだろうな」

 私の成績は。一応、大卒だから。

「その辺は周りを見て、手加減してくれ。

 学園側に出してある『神前零』の資料は小学生の頃、事故に遭い、入院。

 1年程、病院暮らしをして、退院してからはリハビリの一環で道場に通いながら、家庭教師に勉強を教えてもらった。

 中学時代は親の仕事の関係で海外の学校に通っていた。高校時代は世話になった叔父が倒れ、面倒をみる為に前の高校を休学した。

 その後、祖父の薦めで復学と同時に紫原学園に転入。となっている」

 素晴らしいシナリオ。と言うべきなのか。まぁ、今の私の背中にある傷と護身術の理由は出来ている。

背中の傷は和輝が言った事よりももっと古い傷だ。事故でついた傷ではあるが、詳細の時期を言うと、私の正体がばれる。

この傷については色々と噂が流れているからな。

聞いた設定なら、性格は素のままで大丈夫か。

「身体測定とかは大丈夫なのか?」

「その辺は遥が行くように手配してある。

 プールの授業時は見学できるようにもしてある」

「どういう理由で?」

「『胴体部分の皮膚が人よりも薄く、炎症を起こしやすい為、プール等の肌をさらす必要がある授業に関しては参加させられない』」

「……少し無理やり感があるな」

 いや、少しでもないな。しかし、それで了承する学園側も学園側だな。

もしかして、金を注ぎこんだか。もったいない。そんな金は他の事で使ってくれ。

「それは考えた本人に言ってくれ」

「誰が考えたんだ?」

「遥さん」

「……遥らしくないな」

「確かに……まぁ、気持ちは分かるが」

「?」

「気にするな。もう片付けに入ってもいいか?」

「あ、あぁ」

 そういえば、夕食時であった。食事自体はもう食べ終わっていたから、後は片付けである。

「片付けは私がやるから、和輝は明日必要な荷物をまとめてくれないか?」

「……普通俺が片付けで自分でまとめるものだろう」

「下着は自分でやる。制服や筆記用具とかはもう用意しているだろ?」

 和輝の事だ。全て新品を揃えているだろう。制服に関しても、私のサイズは全て把握しているから、ぴったりのものを用意してくれている。

「……分かった。食器、割らないように気をつけろよ」

 和輝はそう言って、明日の準備に取り掛かった。なぜかいつも私を心配するような言葉をかける。

これでも、18歳で立派な大人であるのに。4つ年上だからと言って、こうも子供扱いされるのは嫌だな。

仕事では絶対子供扱いしないのが唯一の救いか。



 食器の片付けも終わり、明日の準備も終わり、私は会社の書類に目を通していた。

さすがに2年も会社をあけるなんて、考えていなかったから、早急に自分の仕事を終わらせる。

「トラブルは全部そっちでなんとかできる?」

「あぁ、元々零が表に出なかったおかげで社長は俺だと思っている人もいるからな。

 外部は俺で何とかできるが、身内に関しては零が必要になるかもしれない」

 私は社交界とかそういうのがすごく嫌いなので、外に出ない。代わりに和輝や遥達が出席してくれるので、対外的には良好だ。

「身内に関しては仕方ない。何か不正とかあったら、すぐに呼んでくれ。野放しにすると、後が大変だ」

「分かった」

「そう言えば、朱熹しゅきりょうは?」

 朱熹と梁は和輝や遥と同じく私の部下であり、婚約者候補の事だ。

 朱熹は和輝と同い年でグループ企業の篠良木ささらぎ芸能プロダクションの社長にして、看板モデル。

映画やドラマの出演オファーもあるらしいが、全部蹴っているらしい。

そんなのに出ていたら、社長の仕事ができないとこの間言っていた。

 梁は私の2歳年上でグループ企業の苑汰そのだ警備会社の若き副社長。

数年すれば社長になるが、事務作業が大の苦手である梁が社長になるのはまだまだ先であろうと私は予想している。

 言っていなかったが、和輝はグループ企業の錫羽良すずはらホールディングの社長でもある。

まぁ、私が彼らが経営している会社の元締めである上東グループの跡取り(今は引き継いで社長)だから、婚約者候補になっただけである。

「2人は仕事が忙しくて、明日も来れないと言っていた」

「そう。まぁ、2人には早く仕事覚えてもらいたいからな」

「確かに。いつまでも零にやってもらう訳にもいかないからな」

 朱熹と梁は和輝と遥に比べて、仕事が出来ない方である。まぁ、普通の人に比べれば、処理速度は倍だけど、和輝は遥はそれ以上の処理速度だ。

間に合わない部分はいつも私が処理していたが、これからはそうはいかない。

2人にはこれから頑張ってもらわないとな。


「さて、明日からの仕事を頑張るか」

「……学園生活を『仕事』と言うのは零ぐらいだな」

 私にとって、『社長』も『高校生』も職業であるんだ。それなら、『学園生活』を仕事と言ってもおかしくないだろう。

まぁ、そんな事を言った時には和輝は盛大なため息をつくんだろう。

ここまで和輝が表情を出すのは幼少時以来で楽しいが、これから迷惑をかけるだろうから、この辺にしておこう。


 明日からの学園生活、普通ではないのは目に見えているから、普通になるように一応は努力するか。




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