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【2話】衝撃の事実を尽きられたが、あまり動じていない



「あれ? 知らなかった?」

 遥も驚いた顔をした。私がその事実を知っていると思っていたようだ。

「何も聞いていない」

「そうだったんだ。零ちゃん、共学だと思っていたの?」

「あぁ、両親が通っていたと言われたから」

「あー、昔は共学だったらしいけど、今は男子校だよ。全寮制で所謂お坊ちゃま学校」

 私は眉を顰めた。『お坊ちゃま学校』――私はその言葉が大嫌いだ。

偏見かもしれないが、そんな学校に通う奴は我儘で屁理屈、俺様で周りの事を考えない馬鹿な奴だと思っている。

「都心から片道3時間もかかるから、こっちに戻ってくるのも儘ならないからね。

 あ、零ちゃんが考えているようなお坊ちゃま学校とは違うと思うよ。

 一応、零ちゃんの両親が通っていたんだから、由緒正しい学校だよ」

「昔はそうでも今は違うかもだろう。まぁ、もう全ての手続きが終わっているのだから、私はグダグダ言わないよ」

「零ちゃんって昔から変にずれているよね。男と同じ部屋で生活するとかそこら辺は無頓着だし」

「ほとんど男装しているからな」

 私は周りから見下されたくないと言う理由だけで男装している。

女性だからと言って、私の意見を聞かない者がいる。今はほとんどいないが、数年前は多かった。

まぁ、私の恐ろしさを知った後はあまり言わなくなったがな。

いまだに男装しているのはバラすと面倒だからと言う理由である。

男装している為か、普通の女性より男性に接する機会が多く、あまり警戒心がない。

襲われそうになっても、護身術で抑えられるしな。

そこら辺の男より強いからな。

一応、黒帯を持っているし。


「危ないと思うけど、まぁ、零ちゃんだから、大丈夫か。

 どちらかと言うと、相手の方も心配をした方がいいかな。

 あ、何かやったら、うちの病院に連絡してね。揉み消すから」

「そうならないようにする」

 遥は時々怖い事を言う。これが所謂『腹黒』だろうか。

私にとっては慣れた事なので、無視するが。

「あーあ、零ちゃんのセーラー服を見てみたかったなー」

「寝言は私のいない所で言え」

「本心だけど……着いたよ」

 他愛もない話をしている間に自宅に着いたようだ。

まぁ、元々祖父の家から自宅までそんなには慣れていないからな。

「ありがとう、遥」

「どういたしまして。学園生活、楽しんできてね」

 遥は笑顔で私を見送る。私は遥の笑顔が好きだ。

だが、作った笑顔が多いから本当の遥の笑顔を私はあまり見た事がない。

どす黒い世界で生きているからこその処世術ではあるが、昔のような笑顔が見たいと時折思う。


 自宅は電気がついていた。

中にいる人物が誰だか分かる。

玄関を開ける。

「おかえり、零」

 私が言葉を言う前に中にいた人物が私に声をかけた。

藍色に近い黒髪につり眼気味の黒い瞳。私より背が高く、すらっとしている。

和輝である。

「ただいま、和輝」

「夕食作ってあるが、食べるか?」

「あぁ」

 和輝の料理は上手い。私もできるが、どうしても凝るのを作ろうとするから、よく止められる事が多い。

食べるのなら凝ったものがいいだろうと思っているのが駄目なのだろうか……。


 今日の夕食は一般的な家庭料理だった。

ご飯、みそ汁、肉じゃが、サバの煮物にほうれん草の胡麻和えとツナサラダ。

 いつもと違うのは用意されているのが1人前ではなく、2人前と言う事だった。

「和輝も食べるのか?」

「あぁ、食べる暇がなくてな。どこかのお方が予定より早く動いた為にな」

 祖父のせいか。和輝が悪態をつく所は初めて見たな。いつも私の見ない所でやっていたのか?

今まで知らない所を見るのは嬉しいと思う。だけど、顔には出さない。

「すまんな、うちのくそ爺のせいで」

「いや、あの人も零の事を考えての事だから。

 零は年齢の割に大人びすぎている。後、口調も女性らしくない」

「仕方ないだろう。今までの生活からしてみれば」

「そうだが、もう少し女性らしくなって欲しい」

「男子校に行くのに女性らしくは無理だろう?」

「……誰から聞いた」

 なぜここで怒る。私は何も変な事は言っていないぞ。

「遥から聞いた」

「遥さんか……あの人も忙しいのにこういう時に現れる」

 和輝は遥の事をさん付けで呼ぶ。なぜ、さん付けなのか聞いたら、「年上だから」と言う回答だった。

確かに私達の中では一番の年上であるが、昔から一緒にいる為、みんな、呼び捨てで呼ぶ事が多い。

だが、和輝だけは遥をさん付けで呼ぶ。和輝らしいと言えば、和輝らしいが、少し余所余所しいとも思ってしまう。

「……男子校と聞いて、あまり驚いていないな」

「聞いた時は驚いた」

「それでも、行くのか?」

「行くのは決まっている事だしな。私はグダグダ何も言わないよ」

「全く……零らしいと言えば、零らしいが、少しは考えろ」

「これぐらいの事で頭を使いたくない。別に男装して、過ごせばいいだけだろ」

 頭の使うのは会社経営や組の事だけでいい。高校の勉強もどうせ今まで習った事の復習にすぎない。

「本当にこういう事に関しては無頓着だな」

「遥にも言われたが、私のどこが無頓着なんだ?」

「……自覚するまで言わない」

 自覚するまでって……秘密と一緒じゃないか。




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