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【11話】料理をすることは日常

11話内容変更しました。




 部屋は予想していたよりも広かった。

個人部屋の方はまだ見ていないが、この分だと、広いんだろう。

黒屋は扉の前に立っている。多分、あそこは黒屋個人の部屋だろう。

 私はその隣にある扉の前に立つ。念の為、黒屋に聞いておくか。

後、口調は素ではなく、仮面かぶっておこう。

「私の部屋はここで合っていますか?」

「あぁ」

 不機嫌そうではあるが、いつもこうなのだろう。

私は自室となる個人部屋の扉を開けた。

 中は予想通り広かった。

元々、ここに通う生徒の事を考えてのことだろう。金持ちは個室でも広いからな。

私としてはもう少し狭くてもいい。広いのは無駄なだけだ。

他の部屋も少し狭くすれば、この階にもう一室部屋が作れるだろう。

 部屋にはベッド、学習用と思われる机と椅子、46インチと思われる液晶テレビが配置されていた。

確か共同スペースにも液晶テレビがあったよな……。テレビなんて、1つあれば、十分だろう……。

 毬の言う通り、織原に預けた荷物が置いてあった。

他に2個の段ボールもある。

和輝が先に送っておいた荷物だろう。私物があまりない私にとって、段ボール2個の荷物は多い方だろう。

 私は右腕にしている腕時計を見た。

時計の針は6時半頃を指している。

夕食をとってから、荷物の整理をするか……そういえば、食堂の営業時間を聞いていなかったな。

あまり使わないだろうが、明日、毬に聞こう。


 私は自室から出て、キッチンに向かった。

目的は冷蔵庫の中身。何も入っていなければ、食堂で食べるしか選択肢がないが、何かしらあれば、作ろうと考えた。

私は料理が好きだ。元々、毒が盛られている事が多く、仕方なく自分で料理をするようになった。

やり始めてから、料理の奥深さを知った。それからはよく時間があれば、自炊をするようになった。

 ここ最近は忙しくて、時間がとれなかったが、ここにいる間は毎日料理をするように心がけよう。

 冷蔵庫には食材が入っていた。しかも、2,3日は買い物に行かなくてもいい量が。野菜室や冷凍庫も冷蔵庫と同じような感じであった。

何も入っていないと予想していたが、何でもあるな。

まぁ、毬と親しいようだから、毬が見に来るのだろう。

もしくは私が来るから、用意してくれたんだろう。

後で礼を言っておかないとだな。

 私は冷蔵庫から食材を取り出していると、黒屋が私の元に来た。

「……何している」

 かなり睨んでいる。私は何か変な事しているか?

「料理をする所ですが」

「……できるのか?」

「まぁ、一通りは」

 なんだかんだでプロの料理人から教わった事もあるからな。

「……れ」

「はい?」

「俺の分も作れ」

 なんで黒屋の分も作らないといけないんだ?

まだこの時間なら、食堂がやっているだろう。

「……食堂の方が早く出来ますよ」

「食堂の飯には飽きた」

 飽きたの一言で終わらす事か。

「早く作れ」

「……」

 これは何を言っても聞かないタイプだな。仕方がない。ここは私が折れるか……。

「分かりました。……アレルギーはないですよね?」

 最近の若者は軟弱なせいか、アレルギー持ちが多い。私の知り合いにはそう言う奴はいないが、気をつけなくてはいけない事だ。

「ない。嫌いな物は」

「好き嫌いは受け付けません」

 誰が嫌いな物を言えと言った。アレルギーが出ないのなら、何でも食べれるだろう。

全く、最近の若者はこう言う所が駄目なんだ……。

……こういう事を言っているから、朱熹に「年寄りくさい」と言われるのか。

あいつ、外見や言葉遣いに凄く五月蝿いからな……。


 黒屋は私に何か言いたそうだったが、私が聞く耳を持たないと分かると、共同スペースにあるソファに座り、テレビを見始めた。

暇なのであろう。まぁ、そんな黒屋を無視して、私は料理にかかる。

調味料も調理器具も一通りある。

黒屋は料理しないように見えるから、毬が私の為に用意したんだろう。

いや、ケルヴィンかもしれない。なんだかんだであいつは私の事を知っているからな。

まぁ、そんな事よりも料理をしよう。

黒屋の分も作るとなると、あまり凝らない方がいいだろう。

凝ると時間がかかるからな……



 数十分後、黒屋が共同スペースとキッチンとの間にあるテーブルの上に並んでいる食事を見て、驚いていた。

驚く事でもないような気がするが……。

テーブルの上にはペスカトーレ、シーザーサラダ、オニオンスープが置いてある。

「どうかしました?」

「……これ、全部作ったのか?」

「あまり時間がなかったので、簡単なものですけど」

 時間があれば、もう少し凝ったが、空腹であろう相手を待たせるのは忍びないからな。

「これが簡単なもの……?」

「はい」

「……お前は主夫か……」

 初めて「しゅふ」と言われたな。

まぁ、そう言われても、仕方ないか。普通の男子高生はここまで料理ができる奴もいないんだろう。

 そんな会話をした後、私と黒屋は席について、食事をした。

ちょっと塩が強いな……もう少し、薄味にしよう。

「おい」

 突然、黒屋が話しかけてきた。食事の時ぐらい静かに食べてさせてくれないのか……。

「何ですか?」

「それ、やめろ」

「それ?」

「敬語」

 ……なにか変な所でもあったか? それとも、黒屋は敬語が嫌いなのか?

「なぜですか?」

「水之達の会話を聞いてた」

 確かに貴弌と百衣の会話では敬語使っていないな。しかし、そんな会話を聞いている黒屋もおかしい。

「よく聞いていますね」

「敬語使うな」

 ……本当にこいつは人のいう事を聞かないタイプだな。

「……なんで貴弌達の会話を聞いてたんだ?」

「好きで聞いた訳じゃない。他の奴らが喋らないのが悪い」

 敬語やめた途端、素直に答えた。これは俗に言う『デレ』と言う奴か?

しかし、教室で誰も喋っていなかったとは気付かなかったな。席が廊下側で廊下の喧騒を教室のものと思っていたかもしれないな。

 黒屋との会話はそこで途切れた。

私が考え事を始めたせいだが……。黒屋も他に話す事がないのか、黙ってしまったので、私だけが原因でもない、はずだ。

 食事を終え、私は食器を片付ける。黒屋も食事のお礼か、食器を流しまで運んでくれた。

「おい」

「何」

「朝も昼も作るのか?」

「朝は作るが、昼は考えている」

 寮生活の一般男子が昼食は弁当と言うのは少し乙女過ぎるかと考えている。

まぁ、しばらく学校の食堂には足を踏み入れないとなると、弁当も選択肢に入るが。

「なら、昼も作れ」

「なんでだ」

「俺も食べる」

「……は?」

 黒屋はこんなに人に懐く奴なのか?

いや、そんなはずないだろう。だが、今私に話しかけている奴はそうとしか思えない発言をしている。

「なんで私が黒屋の分も作らないといけないんだ?」

「俺がお前の料理が好きだからだ」

 そんな告白いらない。

「どうせ一人分も二人分もあまり変わらないだろ」

 いや、作る量が多くなるだろ。変わらないとか言うのは限られた人だけだろ。

どうせ人の事なんて考えない奴だから、意見を変える事はないな。面倒だが、やるしかないか。

黒屋に対して、妥協する事が多いな……。

「……分かった」


 部屋の荷物の整理の前に明日の準備をしないとだな……。

弁当箱があればいいが……。




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