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【1話】祖父の話はいつも突然である


「明日から紫原しのはら学園に行ってくれないか?」



 久し振りに父方の祖父に呼び出しがあった。

私は母方が経営している会社の社長で、下から来る書類をすべて見て、サインや朱印を押す毎日。

最近は、変な事がなくて、楽な仕事ばかりである。それもこれも周りのおかげであろう。

数年前は本当に酷かった。こんな事さえ、考える暇もなかったんだ。

そんな時の祖父からの呼び出し。何か面倒な事でなければいいがと思った。

 父方の祖父も母方の祖父も厄介事しか持ってこない。

母方の祖父は今、私や会社に口を出せない所に監視付きでいるから、何事もない。

父方の祖父は母方の祖父程、変な事は持ってこないが、時々思いついたような事を言って、私を悩ませる。

そこがなければ、いい祖父なのだが。


 父方の実家に着き、祖父と簡単に挨拶をした。

祖父が挨拶の次に発した言葉は先程の言葉だった。

「……急ですね」

「仕事も減ってきたようだし、そろそろかと思ってな」

「一応、大学卒業しているのですが……」

 しかも、有名なアメリカの大学だ。国内の大学よりも上の大学ではあるんだ。

「知っておる。誰が学費を出したんじゃ」

「お爺様です。なら、なぜ、今頃、私に高校に行けと言うのですか?」

「お前の両親が通った高校に通わせたいからじゃ」

 そんな事で高校に行けと言うのはどうかと思う。私は一応会社の社長なんですが。

「ちゃんとお前の部下には許可をとった。2年ぐらいいなくても大丈夫だとな」

 私の心を読んだか。いや、これぐらいは普通に分かる事か。

「……外堀を埋めてきましたか。まぁ、貴方がそう言うのなら、通いましょう。

 でも、1年です」

「2年じゃ」

「……私は18歳ですから、普通は高校3年に転入だと思いますが?」

 それ以外だと、年齢詐称になる。年齢詐称で警視庁の上層部にいる叔父に迷惑はかけたくない。

「留年している事になっとる。

 だから、2年に転入しても、年齢詐称にはなんないぞ」

 ここまで頭が回るのであれば、私を使うのをやめてほしいと思ったが、黙っておこう。

「……分かりました。では、2年通います。

 紫原学園についての資料は……」

「全て和輝かずき君が用意してくれてる」

 和輝は私の部下の1人であり、婚約者候補の1人である。

頼んだ事は早急に片してくれるので、私も祖父も頼りにしている。

「分かりました。呼び出しは以上ですか?」

「そうじゃが……もう少し年相応の言葉遣いをしてくれんか、れい

「それは無理です。これが私ですから」

「それは『上東零』(じょうとうれい)としてじゃろ。あぁ、言い忘れていた。

 学校には『神前零』(かんざきれい)で書類を出しているから、間違えるなよ」

 重要な事を言い忘れないでほしい。苗字はなんだかんだで捉えられ方が違うのだから。

『上東』を出した時には何が起こるか分からない

「分かりました。他に言う事はありますか?」

「幸運を祈っとるぞ」

「別に祈らなくていいです」



 祖父の家から出ると、黒い車が止まっていた。

今回は和輝かな。状況的に。

「零ちゃん、話は終わったの?」

 運転席から出てきたのは焦げ茶色の髪に眼鏡をかけた男性。

はるかか」

「僕じゃ不都合?」

「いや、状況的に和輝だと予想していただけだ。

 遥こそ、ここにいていいのか?」

 遥は私の部下であるが、グループ企業である科野しなの病院の若き院長でもある。

私の部下の中でも私の次がそれ以上に多忙である。

「うん、今日はオフなんだ」

「オフなのに私の迎えに来たのか?」

「だって、今日、零ちゃんに会わなきゃ、またしばらくは会えないでしょ。

 それに一応、婚約者だから、対外的にね?」

 そう、遥も私の婚約者候補である。婚約者候補と言っても、私も遥も結婚する気はない。

他の婚約者候補もそうだ。近い存在ではあったが、結婚しようと言う気持ちはない。

それはみんな知っている。だが、他の奴らはそうは思っていない。

「全く、面倒だな、お前の親戚は」

「まぁね。でも、優秀な人が多いから、切り捨てる訳にもいかないからね。

 ここで長話もなんだから、車に乗って」

「あぁ」

 私は助手席に乗る。

一応会社の社長で命を狙われたりするが、そんなのは数年前に全て叩いて、壊滅させた。

まぁ、対外的には後部座席がいいが、今の時間はプライベートであるから、何にも言われない。

まして、運転席に婚約者候補がいて、助手席に乗れば、対外的には仲がいいと思われて、良い方向に向くだろう。


「そういえば、紫原学園に行くんだってね」

 運転しながら、遥が聞いてきた。和輝あたりにでも聞いたのだろう。

「あぁ」

「あ、了承したんだ。僕、断ると思っていたんだけど」

 まぁ、普段の私であれば、何も言わずNOと突き出すだろう。

「外堀を埋められたからな。まぁ、私がいなくなった場合の想定が出来て、彼らにはいい経験になるだろう」

「そうだったんだ。でも、よく男子校に行く気になったね」

「……は?」

 男子校だと……?




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