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君を愛することはないからの桃太郎(隠喩)

作者: 杜守 幻鬼
掲載日:2026/07/17

※シモ方面です。お下品です。苦手な方は回れ右です。


「君を愛することはない」

「はい! 『君を愛することはない』いただきましたッ! ありがとうございますッッッ!!」


 ここは寝室。今は初夜。幻の存在かと思われた台詞を実際に耳にできて、わたくし、思わず直角に頭を下げてしまいました。……なぜかしら。旦那様が固まっておいでです。


「……」

「……?」

「……え?」

「はい?」

「いやいやいや、なにか、こう、もっと言うことは」

「誠にありがとうございますッッッ!!」


 それ以外になにを言えとおっしゃるのでしょうか? あ、そうですわ!


「質問をよろしいでしょうか」

「あ、ああ」

「愛するwww ことはwww ないwww とはwww んっふwww んふふふふwww」

「笑うな!」

「失礼www ……愛することはない、とは、所謂白い結婚をお望みということですか? それとも義務として夜伽はするおつもりですか?」

「……君に触れるつもりはない」

「ではわたくしたちは……白いめおと、でございますね? 閃きました、領地銘菓にできそうですわ!」

「せんでいい!」

「残念です。では次の質問です」

「ああ」

「そのうち離縁でございますか? それとも養子などを迎えて形ばかりの夫婦を継続でございますか?」

「離縁だ」

「好きな人はいらっしゃる?」

「……いない」

「でも離縁?」

「他人と暮らすのは息が詰まりそうだ」

「でも本当は?」

「幼馴染の……いやちょっと待て!?」

「チッ」


 正気に戻られてしまいましたわね。このハル・ネイターの質問攻めはいろいろと真実をさらけ出すともっぱらの評判でしたのに。家族に。あ、婚姻したのでネイターではなくネクタルになったのでしたわ。うっかりうっかり。


「旦那様。隠さなくてもよいのですよ? 社交界でも噂ですもの。叶わぬ恋をしてらっしゃるのではないか、と」

「そんなことは……!」

「これは隠れ蓑としての婚姻でございましょう?」

「……」

「お相手は同い年?」

「ひとつ上だ……」

「金髪?」

「いや、茶色の……」


 ふふふ、また質問ターンに持ち込めましたわ。

 あれこれお聞きして……


「わかりましたわ。あなたの思い浮かべているお相手は……ミネルヴァ子爵夫人ですわね!」

「!! な、なぜそれを…!?」

「ふふ。わたくしにはお見通しですわ!」


 ああ、すっきり! この瞬間が楽しみなのでございましてよ。


「……この気持ちは墓場まで持っていくつもりだ。本人にも言っていない。君も他言は無用に願う」

「なんて純愛でございましょう! それで操を立ててわたくしにも触れず、離縁する、と。美しい……」

「……はは。軽蔑しないのか? 子を成すことが責務の伯爵が、このような……」

「子は授かりものと申します。子を望む夫婦でも授からないことなど、ままあることなのですよ?」

「そうか……」

「ですが。わたくしとしては、きちんと貴族の妻の務めを果たしたという事実が欲しいわけですの」

「しかし……」

「大丈夫でございます。旦那様に触れろとは申しません」


 わたくしは旦那様ににじり寄りました。


「わたくしが、触れます」

「え……いや、おい」


 えいやっ、と旦那様をベッドに押し倒しました。美しいお顔が不安げでございますわ。正直興奮しますわ。


「大丈夫、こどもができることはしませんので。夜伽をした、という事実を作るだけです」

「しかし」

「お任せください。これでも……数々のものの本で知識はございますの。さあ、わたくしに身を委ねて……」

「あ……アッーーーーー!!!!!?????」





 おはようございます。小鳥のさえずりがかわいらしい朝でございます。

 旦那様? お隣でお眠りです。昨晩は大変たのしみました。旦那様はよい声でお啼きになられました。ふふっ、かわいい。

 

 わたくしはそれから毎晩、旦那様との「夜伽」を続けました。どうやらわたくしには才能があったようでございます。「開発」の。開発といえば領地銘菓、開発したかったですわね……絶対売れると思いますのよ、白いめおと。


 そして気のせいでございましょうか。旦那様がわたくしに優しいと申しますか、熱っぽい……恋する乙女のような瞳でこちらをご覧になるのです。ふとしたはずみで手が触れ合えば「きゃっ」などとかわいらしいお声を出されるのでございます。例の子爵夫人のこともお忘れになっているかのよう。ふむ……最初、君をwww愛するwwwことはwwwないwwwとおっしゃっていたのに、これはもしや。


「尻から生まれる恋もある、ということでございましょうか」

「排泄物みたいな言い方はやめろ」

「……旦那様のお尻はとても桃のようでかわいらしいので、桃から生まれる恋、ということでしょうか」

「ちょ、ちょっと、やめろ……」

「うふふ、照れてらっしゃるお顔もかわいらしい。そして閃きましたわ! 桃の形の桃のお菓子を開発しましょう! ハート型ですので恋のお菓子として売り込むのですわ! この領地は桃が名産ですものね!」

「……いや、それだと私の尻が売られるような気分に……」

「本物の旦那様のお尻を味わえるのは、わたくしだけですけれどね!」

「もうホントやめて……!!」


 真っ赤になったお顔を両手で隠されてしまいましたわ。かわいらしい……


 その後、商品開発も旦那様の「開発」もノリにノって進みまして、領地は潤いわたくしの心も潤いました。

 そんなこんなでわたくしたち、こどもはおりませんけれど、社交界でも評判の仲睦まじい夫婦として評判になりましたのよ。よく聞かれますの。夫婦仲の秘訣は? って……秘訣ってwww お下品な言い方の「秘められし臀部」みたいですわねwww

 ……んん! そんなときはこうお答えしますの。


「じっくり焦らず、相手のヨイトコロを探すことです」


 と。……嘘は吐いておりませんでしょう?


(END)


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