表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小悪魔アイドルは、バツイチの私を甘い罠にはめたい~再会した年下トップアイドルに執着されて困ってます~  作者: はなたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/14

#12 私に執着する理由

「グラスも空いたところだし、場所を変えようか」



私の質問に答えるより先に、ケイタは私の後方に視線を動かすと、ニコリと笑顔を見せた。

つられて振り向くと、いま入店したばかりのらしい、2人組の男性がカウンター席に座ろうとしていた。



「こんばんは、ご無沙汰しています」



ケイタがテレビで見せる、屈託の無い笑顔で挨拶をする。



「これはこれは、人気アイドルのケイタさん。驚いたなぁ。ちょうど、お会いしたいと思っていたところです。もしよければ、お連れの方もご一緒にどうですか?」



50代くらいの大柄な男性が、テーブル席を指差した。



ケイタとの話に集中していて、まったく気づかなかったけど、いつの間にか店内は人が増えていた。深夜0時の金曜日。こういった店は、これからがコアタイムなのだろうか。



「ありがとうございます。でも、そろそろ帰るところでして」



そう言うと、私に目線だけで立ち上がるよう促した。よく分からないけれど、ケイタにとって『歓迎しない相手』だということだろう。



「ああ、そうだ。初の海外ツアーの件、伺いましたよ。今回はご一緒にお仕事できると思っていたので、とても残念です」


「情報が早いですね。とてもいいデザイナーに出会えたので、今回はそちらにお願いすることにしました」


「ほう、どのような方か気になりますな。ぜひうちにスカウトしたい」


「どうでしょうね。伝えておきますよ」



ん?その話の内容って。



「それじゃあ、行こうか。加賀さん」



ケイタに名字で呼ばれるのは初めてだった。



私も軽く会釈をすると、ケイタは私の肩を抱いたまま、歩きはじめた。


私をエスコートする仕草も、少し見上げる立ち位置も、当たり前だけど、圭太君の面影はない。大人の男だ。



「ねぇ、さっきの人って……」


「その話の続きは、うちでしようか?」



黒服に見送られ店を出ると、タクシーが停まっている。いつの間に呼んだのだろうか。



「帰るなんて言わないよね」



最後まで話を聞かなければ、どうせ今夜は眠れない。



「大事な答えを聞いてないから」


「乗って」


「変なことしたら、顔面に正拳突きするからね」


「わぁ、それは楽しみだな」



ケイタは運転手に行き先を告げると、タクシーは静かに走り出した。




◆◆◆




六本木からタクシーで15分ほど走ると、ケイタの自宅に着いた。



でもそこは、数時間前にいた、dulcis〈ドゥルキス〉の所属事務所、MICOプロダクションのすぐ裏手に位置する、マンションだった。



「悪さをしないようにって、事務所の近くに住まされて、まるで監視されてるようなものだよ」


「それなのに、仕事関係者を部屋に入れちゃっていいの?」


「構うもんか」



ケイタがリビングの扉を開く。



「広い部屋ね」


「物がないから、そう見えるだけだよ」



確かに、リビングの真ん中には、大きなソファーが置かれているだけで、他に目立つ家具は無い。主婦が憧れるアイランドキッチンのカウンターには、なんの調理器も調味料も見当たらない。


整理整頓とか無駄な物が無いということではなく、生活感のまるで無い部屋だった。



「家賃も高そうね」


「低層階の1LDKだから、このマンションでは安い間取りらしいよ」



それでも、私の給与より断然高そうだ。ここに住みたいと思えるかどうかは別の話だけれど。



大理石の床はひんやりして、カーテンも壁紙もモノトーンで統一されているから、お洒落だもは思うけど、暖かみはゼロだ。



「何か飲む?」



ケイタが冷蔵庫を開ける。チラッと覗くと、飲み物くらいか入っていないようだ。



「いらない。長居をするつもりはないなら」


「嫌われるだけのことをした自覚はあるけど、素っ気ない態度はやっぱり悲しいや」



ミネラルウォーターのボトルを開けると、一気に半分を飲み干した。そして、今夜はひとり分のスペースを開けてソファに並んで座った。



「今回のライブグッズの作成に、ゲンキライブ企画を押したのは、ジュンだよ。ボクじゃない」



ジュンはdulcis〈ドゥルキス〉のメインボーカル。

黒髪に切れ長の目、クールビューティと称されるジュンは、K-POPアイドルのような雰囲気で、ファンからは『ジュン様』と呼ばれている。



そんな彼が、なぜ弱小デザイン会社を知っていたのか。



「ジュンが猫好きだってこと知ってる?」


「いいえ。この2週間でグループの情報はたくさん集めたけど、そんなネタは無かったと思う」


「本人、必死で隠してるからね」


「ジュン様の猫好きと、今回の仕事の何が関係するの?」



話の本題がズレている。このまま、誤魔化すつもりだろうか。



「猫のしっぽを知ってるよね」


「猫カフェの経営会社のこと?」


「杏ちゃんの会社、そこの仕事を受けてたよね」



昨年のことだ。

急な作成依頼があった。


はじめて聞く『推しネコ』なんてものに驚いたけど、実際に人気者の猫に会いに行くと、アイドルさながらのオーラがあった。



売上の一部を保護猫活動団体に寄付すると聞いた。



「ジュンが、その猫カフェの常連なんだ」



たくさん猫がいるから、作成する品数が多い割に生産数は少ない、でも単価は上げられない。手間がかかった割に、薄利少売で、ビジネスとしてはいまひとつだった。



でも、たくさんの猫ファンから反響があった。SNSに投稿されたり、会社へ直接メールで声が届いたこともあった。



「アクスタから愛を感じるって、ジュンが熱弁してた」


「ジュン様が私のアクスタを?それは、すごい嬉しいかも」



思わず私の声のトーンが上がる。



「良かったね」



反対に、ケイタは少しだけ拗ねたようにトーンが下がった。



「ゲンキライブ企画が、杏ちゃんの勤め先だって気付いたけど、だからって、仕事のことに私情を挟むほど子供じゃないよ。グッズ担当がボクになったことも含めて、今回のことは、本当に偶然」



小さな案件でも、真面目にやって良かった。



「さっき店にいた人は、コンサート運営会社の偉い人だけど、転職希望するなら、伝えておこうか?あんまりオススメできる人柄じゃないけど」


「パワハラしそうな方よね。遠慮しとくわ」



うちの会社も、時代的にギリギリなところはあるけどね。



「他に質問は?なんでも答えるよ」



あの日、私たちが最後に会った日からのこと。元夫の浮気性相手のこと、仕事が決まったこと。


たくさん話を聞けた。正直、お腹がいっぱいで消化不良なくらい。



「じゃあ、最後にひとつ」



腑に落ちないことは、ひとつある。



「どうして、そんなに私に固執するの?」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ