表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小悪魔アイドルは、バツイチの私を甘い罠にはめたい~再会した年下トップアイドルに執着されて困ってます~  作者: はなたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/14

#11 ケイタの告白

※語り手:ケイタ


杏ちゃんと会えなくなって、世界から色がなくなった。


中学を卒業したあと、高校には行かなかった。定職にも就かず、フラフラするだけの日々。


でも、お金には困らなかった。助けてくれる女性は常にいたから。


「夜の相手もこなす、かわいいペットでいるのは簡単だったな」


「なによ、それ」


杏ちゃんは眉をひそめた。


「さっきの彩華は、その頃の知り合いだよ。飼い主っていうのかな」


実際に犬の首輪を買ってくるような、イカれた女だ。



転機は18歳のとき。渋谷で葉山さんに声をかけられた。アイドルにならないか、って。


その瞬間、思い出した。


――アイドルになって、杏ちゃんと結婚する。


目標ができたら、少しはがんばれる。元々、器用で運動神経はいいからね。


気づいたらdulcis〈ドゥルキス〉のメンバーになってた。


あっという間だったな。

生活は激変した。でも、だからといって、満たされることはない。



「つまらない毎日でも、夕焼けを見ると杏ちゃんを思い出した。それだけで、少しだけ気持ちが温かくなったんだ」



――会いたい。



そう思ったのは、不思議なことじゃない。


数年前には想像もできなかったほど、お金を手にした。



「人の情報は、お金で買えるって知ってた?」


「どういうこと?」


「杏ちゃんのことは、なんでも知ってるよ」



カクテルを飲む杏ちゃんの手が、ピタリと止まった。


琥珀色のライトがゆらゆらと反射している。


今夜は全て話す。そう決めていた。

隠し事をしたまま、綺麗な杏ちゃんには触れられないから。


杏ちゃんがバッグから電子タバコを取り出す。


「吸っていい?」


「うん」


杏ちゃんが愛煙家なのも知っている。

好んでいる銘柄も、少し前まで禁煙していたことも。


目の前で吸う姿を見るのは初めてだけど。


「調べたの?」


「うん」


「どこまで?」


「田中祐介さんと結婚して、離婚したところまで――かな」


「最新情報じゃない」


ふわりと吐き出された白い煙が、杏ちゃんの顔を霞ませる。その隙間に見える瞳は、ひどく穏やかだった。


「まったく、ずいぶん悪い子になったわね」


――違うよ。

ボクは最初からいい子なんかじゃなかった。杏ちゃんが知らなかっただけだ。


「杏ちゃんが離婚したのは、ボクのせいだ」


「え?」


「旦那さんの浮気相手、どんな女だった?」


「――まさか、ケイタ」


驚きで目を見開く杏ちゃん。ボクは視線をグラスに落とした。



飲み会で知り合った女の子が、たまたま杏ちゃんの旦那と同じ会社勤めと知ったとき――悪戯心に火がついた。


うまくいかなくても、それはそれで構わなかった。他にも方法はあるから。



『財務部の田中って男を落とせたら、キミと一度だけ寝てあげるよ――』



結果は驚くほど、簡単でうまくいった。



バーカウンターに重い沈黙が落ちる。氷の溶ける音だけが、やけに大きく耳に障った。


「次に邪魔なのは、アイツだ。小山君だっけ?」


今日も杏ちゃんの隣でデレデレしてた。あんなのが、毎日毎日、杏ちゃんの隣にいるなんて耐え難い。


「杏ちゃんの隣は、もう誰にも渡さないよ」


ボクは杏ちゃんの指先から煙草を掠め取った。

フィルターには、淡いリップが色づいている。


そこへ、そのまま口づける。


杏ちゃんのすべてを飲み込むみたいに、肺の奥まで深く吸い込んだ。


「ごめんね、悪い男で」


たっぷり吐かれた霧の向こうで、杏ちゃんが目を細める。


「本当にね」


そう言って、杏ちゃんは微かに口元を緩め、煙草を奪い返した。


「怒ってる?」


「怒ってないよ」


「ボクのこと、嫌いになった?」


「バカ。いくつになったのよ」


杏ちゃんは淡々と語る。


「私が離婚したのは、ケイタのせいじゃない」


「でも、ボクが――」


「ハニートラップがなくても、遠くない内に終わってた。誰かのせいだとしたら、私と祐介の問題」


それは、怒られたり責められるより痛い。完全な部外者だという拒絶だった。


「そんなことより――」


杏ちゃんが、ゆっくりと電子タバコのスイッチを切る。


「嘘はつかないで、答えてほしいの」


煙が消えた後、射抜くような強い視線がボクを捉えた。


「今回の仕事、ゲンキライブ企画に決まったのも、ケイタの計画なの?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ