プロローグ 恋人はアイドル
★登場人物★
■加賀 杏菜 (30)
職業: ライブグッズ企画会社〈ゲンキライブ企画〉 チーフデザイナー
バツイチのアラサー。仕事に情熱を注ぐプロフェッショナル。正義感が強い姉御肌タイプ。
ヘビースモーカーで、空手の有段者というタフな一面も持つ。
元夫の浮気で離婚したばかり。
■ケイタ (23)
職業: 人気アイドルグループ dulcis〈ドゥルキス〉の末っ子メンバー
甘いベビーフェイスで人気を博す、キラキラアイドル。明るく元気な天然キャラで、バラエティー番組でも活躍中。
ライブやMVなどで時折見せる大人の表情、こそギャップ萌えするファン多い。小悪魔系アイドル。
幼少期に杏菜と知り合い、一途に想うあまり過激な行動に出ることも……。
■和泉 (42)
杏菜の上司でクリエイティブディレクター。仕事のパートナーであり、私生活でも杏菜の良き理解者。
バツイチ、子供がひとりいるが親権は元旦那。杏菜以上の仕事人間。
■葉山 (42)
dulcis〈ドゥルキス〉が所属する、MICOプロダクションの社員でマネージャー。ケイタをスカウトし、見守る姉のような存在。秘密の恋を黙認する。
■小山 (23)
杏菜の後輩。入社2年目、営業部のルーキー。杏菜に惚れている。
■田中 祐介 (31)
杏菜の元夫。大手企業勤務、高学歴、高身長の持ち主だったが、浮気が発覚し杏菜に別れを告げられる。
■ dulcis〈ドゥルキス〉とは?
主人公・杏菜の恋人であるケイタが所属する、日本トップクラスの人気を誇るアイドルグループ。20代の男性5人組。
春のドームツアーでは約19万人を動員し、その生配信の視聴者数は日本記録を更新。
最新アルバムは発売日にミリオンセラーを達成するなど、その人気は社会現象となっている。
「帰っちゃやだ」
年下の甘えん坊な彼は、小悪魔のように甘い言葉をささやく。
「ねぇ、いいでしょ?」
ゆるふわな金髪、白く透明感のある肌。
まるでギリシャ彫刻のような裸体で、彼はベッドに寝そべっている。
人に見られることに慣れきった、自分への絶対的な自信。
それゆえの無防備な羞恥心のなさが、かえって色っぽさを際立たせていた。
「朝まで一緒にいてよ」
自分の欲求を、遮るものなく素直に言葉にする。
「ケイタ、今日が何曜日か知ってる?」
日曜日の23時。
明日のためにも早く帰らないと、朝が辛いだけだ。
満員電車に揺られて出社し、大量のメールから必要なものだけをピックアップして返信。これだけで午前が終わる。
月曜日の朝を想像するだけで、どんなに好きな職種でも、やっぱり憂鬱な気分になる。
「忘れちゃいなよ、そんなこと」
「あのねぇ」
「忘れさせてあげようか?」
会社勤めをしたことのないアイドルには、分からない感覚なのだろう。土日も平日も関係ない世界で生きているから。
――そう、彼はアイドル。
人気アイドルグループ、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだ。
春のドームツアーでは約19万人を動員し、生配信の視聴者数は日本記録を更新した。ツアータイトルにもなっている、最新アルバムは発売日にミリオン突破。
23歳、最年少のメンバー。甘いベビーフェイス、あどけない笑顔を振りまいているのに、不意に見せる大人の色気から「小悪魔アイドル」なんて言われている。
「今夜は帰るよ。明日は大事な会議があるの」
床に散らばった下着を拾い、手早く身に付ける。
「杏ちゃん」
「なに?」
振り返ると、彼がベッドから身を起こし、真っ直ぐに私を見ていた。
その瞳は、ステージで輝く「みんなのケイちゃん」とは違う。
「帰したくない」
「だめ」
「ボクのこと嫌いになったの?」
「どうしてそうなるのよ」
叱られた仔犬のような大きな黒目が、こちらを上目遣いに見つめてくる。
私は下着姿のままベッドに腰かけ、ケイタの髪にそっと触れた。
「さっき、杏ちゃんが『いや』って言うこと、ずっと、何度もボクがしたから。怒ってるのかと思って」
「そ、それは……」
なんと返せばいいか分からず、数分前までの出来事を思い返し耳まで熱くなる。
「いやだったわけじゃ、ないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「気持ちよかった?」
「う、うん……」
「もう一回したいくらい?」
「うん……。え、コラ!」
不意に後ろから抱き締められた。
せっかく付けたばかりのブラジャーのホックを、ケイタは器用に口で外す。
なんて躾のなっていない犬なのだろう。
「ね。しようよ、もっと。朝まで」
そのままベッドへと引きずり込まれた。
「だめ!今出ないと、もう終電に間に合わないから」
「タクシーで帰ればいいじゃん。なんで電車にこだわるかな」
その答えは『給料日前』だから。なんて、口には出さないが、この金銭感覚の違いは切実で悩ましい。
年上のプライドもあり、彼にタクシー代を頼るなんて情けない。
人気アイドルと一般人の差を考えるだけ、無駄かもしれないけれど。
「明日の朝、ここから会社に行くのどう?」
「着替えも化粧品も、仕事用の鞄もないから無理」
「だから一緒に住もうって、何度も言ってるのに」
悪戯な指が巧みに私の弱点へ触れ、だんだんと思考回路を奪っていく。
「ちょっと、ケイタ……!」
「また濡れてるよ」
「ん、やっ、やだ……」
「やだ?本当の本当?ねぇ、どっちの『やだ』なの?」
身体はなんて正直なのだろう。
枯れかけていた心と身体が、ケイタに愛され満たされるたび、泉のように彼を欲しがってしまう。
「杏ちゃん、お願い。帰らないで……」
私の鼻に自分の鼻を擦り寄せる。本当に、大型犬のようだ。
「杏菜」
不意に真面目なトーンに変わる。
普段は子供っぽいくせに、こういう時だけ。
ケイタの指が私の唇に触れ、答えを急かすように舌先でなぞられた。
「もう……わかった。朝まで一緒にいよう」
本当は、私だって帰りたくなどないのだ。
安堵したのか、それとも征服欲が満たされたのか。
ケイタが私の奥へと辿り着く。
「あ……っ!」
「杏ちゃんのその顔、すごい可愛い」
アラサーでバツイチの私の、一体どこがいいのか。
「大好きだよ」
数ヶ月前までは、人気アイドルのケイタと、こんなに蜜月の関係になるなんて、夢にも思わなかった。
これは、彼と私の、秘められた恋の物語。
始まりは、あの日の「再会」からだった――。
ご覧いただきありがとうございます!
年下のイケメンアイドルの危険な誘惑。杏菜との恋はこれから加速していきます…。
アルファポリスでは先行して連載をしておりますので、先読みを希望される方はぜひお越しください。
※なろうでも順次掲載していきます
先読み↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/408954279
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