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プロローグ
豊津ヶ中倭ノ国 の 神話
国のはじまりは、海と霧とが果てもなく広がる時代にあっ
男神イザナギと女神イザナミ、二柱の神は天の命を受け、島々を生み、山河を形づくり、豊かな国土を築いた
やがて、火の神を産んだ折にイザナミは命を落とし、黄泉の国へと去る
深く愛した妻を慕い、イザナギは禁を犯してその地を訪ねた
けれど闇の底にあったのは、もはや生者の容を失い果てた姿
恐れと悲嘆に駆られたイザナギは逃げ帰る。その背に、イザナミの声が響いた
「恥をかかせたな、イザナギ。そなたの国より、毎日千の命を奪おう」
イザナギは歯を食いしばり、応じた
「ならば我は、一日に千五百の命を生まん」
その言葉は、女神の心にさらに深き火を灯した
「もう今後、お主のような男は決して増えはせぬ。精々子らを大事にするが良いわ」
その声と共に、大地を覆う目に見えぬ穢れが広がった
山は裂け、川は濁り、いくつもの里が静かに衰えていった
女神は争いを望んだわけではなかった。されど、彼女の呪詛は血の流れを歪め、男は希なる存在となり、やがて国の形までも変えてしまった
こうして千年が過ぎた
呪いは今も、静かに豊津ヶ中倭ノ国を蝕んでいる・・・




