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血で汚れたダアクイラ

血の誓約

プロローグ:影の帝王


1911年、ニューヨークの闇に生きる男がいた。サルヴァトーレ・ダアクイラ。イタリア移民としてアメリカに渡った彼は、持ち前の頭脳と冷酷な手腕で組織を拡大し、労働組合を牛耳るまでになった。彼の影響力は街のあらゆる産業に及び、対抗する者は次々と消えていった。


だが、彼の力はあまりに強大だった。やがて同じイタリア系マフィアの間で、不満と恐怖が渦巻き始める。特に、新興勢力のジョー・マッセイラは、ダアクイラの権力を危険視し、密かに反撃の機会を狙っていた。そして、労働組合の背後にいる者たちもまた、ダアクイラを利用し尽くした後の始末を考え始めていた。


1920年、ニューヨーク・リトルイタリー。


「ダアクイラは力を持ちすぎた」


ジョー・マッセイラは、暗いバーの奥で静かに言った。向かいには、ヴィンセント・マンガーノ、トミー・ルケーゼ、ガエタノ・レイナらが座っていた。彼らはそれぞれマフィアの一角を担う者たちだった。


「だが、奴を潰すのは容易じゃない」マンガーノがウイスキーのグラスを揺らしながら言う。


「そこだよ。だが、今回はいい話がある」マッセイラが低く笑う。「労働組合の連中が、俺たちに話を持ちかけてきた」


「ほう?」レイナが眉を上げる。「ダアクイラは奴らとべったりじゃなかったのか?」


「そうだったさ。でもな、連中もダアクイラがデカくなりすぎたことに気づいたのさ。最初は都合のいい道具だったが、今は逆に支配される側になりつつある。だから、ダアクイラを消せば、俺たちに協力すると言ってきた」


「面白いな」ルケーゼが笑った。「つまり、労働組合のバックアップがあるってことか」


マッセイラは頷いた。「しかも、奴の腹心だった連中の何人かがこちらに寝返る準備をしている」


マンガーノが慎重に尋ねる。「だが、ダアクイラは警戒しているはずだ。どうやって近づく?」


「そこも話がついてる。ダアクイラのボディガードが一人、こちらに寝返る約束をした。奴の動きを事前に掴むことができる」


「なら、計画を詰めるとしよう」マッセイラが手を叩いた。「ダアクイラは終わりだ」


数日後、マンハッタンの静かな通り。サルヴァトーレ・ダアクイラは、自信に満ちた表情で歩いていた。彼の後ろには、数人のボディガードがいたが、そのうちの一人が密かにマッセイラ側と通じていた。


その日、ダアクイラは何の疑いも持たず、いつものように車に乗り込んだ。だが、走り出して数ブロック進んだとき、車の前に突如として別の車が割り込んだ。


「何だ?」ダアクイラが眉をひそめると同時に、銃声が響いた。


パン!パン!パン!


ボディガードたちは反撃しようとしたが、裏切り者が中にいたため、対応が遅れた。その隙に、別の車から数人の男たちが降り、一斉にダアクイラの車に向けて発砲した。


ダアクイラは必死に銃を抜こうとしたが、その瞬間、額を一発撃ち抜かれた。


その夜、マッセイラたちは密かに祝杯をあげていた。


「これで、ニューヨークの秩序は俺たちのものだ」マッセイラが満足げに言う。


「だが、これで終わりじゃないな」マンガーノが慎重に言った。「次は、お前がトップに立つ番だ」


「そうだな」マッセイラがグラスを掲げる。「だが、俺はダアクイラとは違う。慎重に、確実に、勢力を拡大するさ」


彼らは知らなかった。ダアクイラを消したことで、新たな争いの火種が生まれようとしていることを――。

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