表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/76

恋の心得其の一、ターゲットの胃袋を掴むべし!①




 うららは昼休みを告げるチャイムが鳴るなり、勢い良く廊下に飛び出す。そして、3階にある国語準備室目掛けて一直線に走り出した。

 途中、何故かうららを目の敵にしている数学の斉藤先生に注意を受けるが、そんな事はお構いなしに階段を駆け上がる。

 50分間という短い昼休み、一分一秒たりとも無駄にする訳にはいかないのだ。


 国語準備室の前でブレザーのポケットからコンパクトミラーを取り出し、乱れたピンクの前髪を念入りに直してから扉をノックする。


「至センセー! 今日も来ちゃった♡」

「⋯⋯どうぞ」


 昨日よりも幾分か早く部屋の中から至の声が返ってくる。



「失礼しまーす!」

「今日も君が来るんじゃないかと思っていました」

「それなら話は早いねっ! お昼一緒に食べよっ」

「⋯⋯⋯⋯目的が変わっているように思えるのですが⋯⋯常春さんは僕に勉強を教わりたいのでしょう?」

「あっ⋯⋯あーーーー! そうだった!! べんきょう、勉強ねっ! 勉強のついでのご飯だから! 勘違いしないでよねっ!?」


 ついつい本音が漏れてしまったうららは慌てて取り繕う。取り乱すあまり、ツンデレのテンプレートのような台詞を口走ってしまった。


「それなら良いでしょう。⋯⋯それでは、早く食べてしまいましょうか」

「⋯⋯うんっ!!」


(昨日は今回だけって言ってたのに、今日も一緒に食べてくれるんだ⋯⋯やっぱり至センセーって優しい!)


 うららは長椅子に腰掛け、今日も変わらずビニール袋からおにぎりを2個(梅と鮭)と豆腐とわかめのインスタント味噌汁、500mlのペットボトル緑茶を取り出す至を見つめる。


「どうしたんです? 食べないのですか?」


 うららの視線に気が付いた至は手を止めて顔を上げた。


「あ、あのね、センセー。コレ⋯⋯作って来ちゃった」


 うららはそう言って巾着に入った弁当箱を掲げて見せる。


(受け取ってくれるかな⋯⋯。ううん、何としても受け取らせる!!)


 うららは心の内の不安を悟られないようにニッと笑ってみせた。


「ぶ、分量を見誤ってね、作り過ぎちゃったの。⋯⋯でね、仕方なくあたしの幼なじみ⋯⋯呉羽くれはにあげようと思ったんだけど、要らないって言われちゃってこのままじゃ捨てなきゃいけなくて⋯⋯だからね、勿体ないしセンセーが貰ってくれない?」


 困ったような顔をする至に、うららの心臓はバクンバクンと早鐘を打つ。激しい心臓の鼓動に比例して、否定の言葉を聴きたくないうららはどんどん早口になっていく。


「で、でもねでもねっ⋯⋯ご飯は入ってないから! おかずだけだから、センセーでも食べれると思う⋯⋯!」

「⋯⋯⋯⋯昨日、分かったと言ってくれたじゃないですか」


 至は小さくため息を吐いて言った。



「分かったけど、やらないとは言ってない」


 うららは真顔でそう言い放つ。そんな今のうららには何を言っても引かないと悟ったのだろう、至はやれやれと首を振った。


「⋯⋯仕方ないですね。今回だけありがたくいただきます」

「やった!!」


(センセーを困らせてるのは分かってる⋯⋯でも⋯⋯それでも、あたしにだって譲れないものがあるっ!!)







貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

ブックマークや評価、感想などいただけましたら、やる気が出ます(^^)

よろしければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ